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【日経_アジアの未来】少しずつ途上国化している?日本の未来

アジア大洋州地域の各界のリーダーらが、域内のさまざまな問題や世界の中でのアジアの役割などについて率直に意見を交換し合う国際会議、日本経済新聞社主催『アジアの未来』が、2021年5月20日(木)・21日(金)の2日間にわたって開催された。ありがたいことに、参加する機会をいただいたのでそのレポートを書いていきたい。

なお、各講演の要旨をまとめた記事が日本経済新聞に掲載されている。

コロナワクチンの格差問題

昨年から引き続き COVID-19 の感染拡大が止まらない世界情勢で、今回の会議でも主要な話題の1つとして取り上げられていた。COVID-19 の収束のためには、全世界で集団免疫が獲得される必要がある。そのため、ワクチンの確保と接種は、先進国か途上国かを問わず重要な事項となる。

マレーシアのムヒディン首相は、「バイデン米政権のワクチン特許一時放棄の方針を歓迎する」と述べた。ワクチンの開発は、高度な科学技術と研究開発機関を持つ、先進国の大企業に依存しなくてはならない。そのため、どうしても大企業が拠点を持つ先進国からワクチンの供給が始まる。日経新聞の記事にもあるように、ムヒディン氏は「最も豊かな27カ国は人口が世界の10%強にすぎないのに、ワクチンの35%強も握っている」と先進国を批判している。

日本経済新聞が統計データをまとめている『チャートで見るコロナワクチン 世界の接種状況は』を見てみると、「世界の累計接種回数」は増加傾向にあるものの、先進国と新興国・途上国の接種割合を維持した状態で拡大している。新興国・途上国では、先進国がワクチン接種を完了するまで順番待ちしなくてはならないような状態になっている。

国・地域別の100人あたり接種回数を見ても、地理的な格差が明確だ。ワクチンを自前で開発している米国・中国・欧州と近しい関係のある国々(イスラエル、UAE、パラオ、モンゴル等)では、100人当たり30回を超える接種回数である。一方、アフリカ大陸や中央アジア、東南アジアでは、ワクチンの接種が進んでいない。

マレーシア前首相 マハティール・ビン・モハマド氏は、このような世界情勢に対して、『豊かな国がワクチンを独占する状況は変えなければならない。』と述べ、世界の協調と多種多様なデータを世界で共有する仕組みの構築が必要だと語った。

豊かな国が独占しているなら、日本は?

ワクチン問題に関して、アジア各国の首脳陣は「豊かな国による独占」を非難している。その話を聞いたとき、ふと気になったことがある。日本はどうなのか?

連日の報道でもあるように、日本国内のワクチン接種はお世辞にも順調とは言い難い。100人当たりの接種回数も8.9回であり、マレーシア(8.5回)以上インドネシア(9.5回)以下だ。つまり、アジア諸国の標準的な水準にあると言える。

長期的に見ると、日本のワクチン接種に関する施策は悪いものばかりではない。契約ベースの人口カバー率でみると、日本は1.24倍となっており、1倍を下回るマレーシアやフィリピンとは異なる。焦らなければ、ワクチンが摂取できる見通しは立っていることになる。(もっとも、遅くなればなるほど、その間に取りこぼされる人がいる現実問題はある)それでも、カナダの5.2倍、ニュージーランドの3.28倍など、他の主要先進国と比べると低い水準なのは明らかだ。韓国の1.72倍よりも低い。

ここ10年ほど、国際比較の統計データをみると、韓国を少し下回るというのが日本の定位置になっている。今回の、COVID-19 の騒動では、韓国どころかインドネシアのちょっと下、マレーシアやフィリピンよりも少し上というポジションが定着してきつつある。そして、「インドネシア以下、マレーシア以上」という日本のポジションは、このままいくと30年後には定位置となるかもしれない。

PwCの調査レポート「2050年の世界」によると、購買力平価のGDPで日本はこのままいくと2050年には世界第8位にまで落ち込むという。代わりに台頭するのがインドネシアだ。現在の世界第8位がインドネシアであることを鑑みると、まるっとインドネシアと入れ替わることになる。

ハンス・ロスリングのベストセラー『ファクトフルネス』で、われわれは陥りがちな10の思い込みがあると述べられている。そのうちの1つが、「世界が分断されている」という思い込みだ。つい、国際比較で厳しい現実を突きつけられたとき、「調査方法がおかしい」「体感として日本が劣っているとは思えない」という姿勢をとってしまいがちだ。しかし、世界は一続きでつながっており、世の中の栄枯盛衰は世界的な流れと連動している。世界史は、この事実を教えてくれている。

COVID-19 の現状1つをみても、日本の国力の低下が如実に表れているように思われる。私たちは、真綿で首を絞められているかのように途上国化している日本の中で、どのように生き残っていくのかを真剣に考え、個人レベルや企業レベルでもできることを考える必要がある。

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