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「ジグソーパズル化する世界」 BCGが読む2024年の経営の論点とは

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

いよいよ2023年も終わりに近づきました。明日が仕事納めという方も多いのではないでしょうか。近年では世界的なパンデミックやロシアによるウクライナ侵攻、イスラエルとハマスの戦闘など、これまで予想し得ないような不測の事態が相次ぎました。最近でも紅海での戦闘の影響から、迂回経路をとる商船が増えました。

こうなると当然運賃に跳ね返ることとなり、長引けば結果として末端の価格にも影響が出てくることでしょう。このように、経済安全保障はサプライチェーンと密接に関連しており、経営としてもリスクの見える化やいざというときのための意思決定を仕組み化する必要があります。

ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘。ともに世界で驚きを持って受け止められ重大リスクの予見の難しさを印象づけた。そこで思い出されるのが第2次世界大戦中の日本陸軍で米軍の侵攻パターンを的確に予想した堀栄三氏だ。米国の缶詰や製薬会社の株価をウォッチすることで次の作戦規模や時期を予見した。公開情報から国家の命運に関わるリスクを見通す情報参謀が日本には存在した。

翻って近年、日本企業が対処すべきリスクは複雑かつ多様化している。ESG(環境・社会・企業統治)や経済安全保障の観点から自社のみならずグローバルに広がるサプライチェーンの管理が厳しく求められているためだ。東芝やファーストリテイリングなどがウイグル族を強制労働させている中国の工場と取引していると問われ、対応を迫られた事件は一例といえる。

日経電子版

これ以外にも経営において検討すべき論点は数多くあります。BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)が2018年頃から毎年発刊している「経営の論点」の2024年版が出ましたので紹介したいと思います(ご恵投ありがとうございました!)。

序章 不確実で不連続な時代の指針に
第1部 2024年、注目の経営トレンド
Chapter1 エネルギーシフト――日本企業は“賢い需要家”を目指せ
Chapter2 生成AI――日本の“勝ち筋”と導入の5つのポイント
Chapter3 サーキュラーエコノミー――気候変動の次は生物多様性が問われる
Chapter4 経済安全保障とサプライチェーン――リスクの見える化で意思決定の仕組みづくりを
第2部 2024年、必須の経営能力
Chapter5 事業開発力――新たな成長に向けM&Aをどう活用するか
Chapter6 イノベーション――進化する手法と日本企業復活へのポイント
Chapter7 プライシング――インフレ時代の「値付け」戦略
Chapter8 人材戦略――「人事」を超えた経営課題へ発想の転換を

『BCGが読む経営の論点2024』の目次より

まず、本書は重要な「論点」を提示している点に注意してください。それぞれについて正解らしきものを求めて読むと、おそらく期待外れに終わるでしょう。それは各企業の戦略によって異なりますし、まさに経営陣が自ら策定すべきものです。そうではなく「なぜこの論点が重要なのか」を読み解くために本書を活用するのが良いと思います。

もちろん各章には、日本企業への提案や検討ポイントが例示されています。例えば第2章の生成AIでは、企業が検討すべき5つのポイントとして「戦略」「学習/トライアル」「組織」「トラスト」「技術」が挙げられています。生成AIのような急速に進化しているテクノロジーは、どのタイミングでどこから着手すればよいのか等々、経営者の頭を悩ませる要素が多いものです。そして、初期の過剰期待や後の過小評価に陥りやすく、結局お試しでなんとなくPoCはしてみたものの戦略や組織は整備せず終わってしまうという残念なことになり得ます。そうではなく、最初からこの5つの要諦を押さえた上でスタートを切ることが望ましいでしょう。

企業リーダーの重要な役割の一つに、時代の流れを読み取り、潮流を味方にすることで、自社が競争優位を築けるように舵取りをしていくことがある。

『BCGが読む経営の論点2024』のP5より

もはや正確に予測をすることは不可能な時代においても、潮流の変化を察知することはできます。これをいち早く感じ取り、事業機会を自社に引き寄せることで将来の成功確率を高めていく。そのために本書で挙げられた論点は多くの企業にとって(濃淡はありつつも)すべて関係があるものです。

経営者や管理職の方はもちろん、多くの学生・社会人にとって「良い論点の立て方」を学ぶために一読をおすすめします。


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タイトル画像提供:tadamichi / PIXTA(ピクスタ)

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