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少しずつ重点が変わっている政府の副業推進政策の目的

働き方改革以降の副業推進政策の影響もあってか、学生の4割が副業に前向きであるようです。

徐々に「副業はできるものなのだ」という理解も広まっているといえ、このような傾向はこれまで副業・兼業を推進してきた政府の狙いどおりといってよいでしょう。

ところで、副業・兼業の推進は、働き方改革実行計画以降、継続して進められてきた政策ですが、実は少しずつ、その狙いの重点は変わってきているように思われます。

今回は政府の副業推進政策の狙いを振り返ってみたいと思います。

働き方改革実行計画(平成29年3月28日)

まず、働き方改革実行計画を見てみましょう。
働き方改革実行計画では、以下のように述べられています。

https://www.kantei.go.jp/jp/headline/pdf/20170328/01.pdf

副業や兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、そして第2の人生の準備として有効である。

働き方改革実現会議「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日)より

令和元年度成長戦略実行計画(令和元年6月21日)

働き方改革実行計画では、さらっと述べられているだけで、よく狙いとするところが腑に落ちないところもあると思われます。
その後、その狙いをより明確に記しているのが、令和元年度成長戦略実行計画です。

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/ap2019.pdf

本業の企業の付加価値の創出・獲得との関係でみても、… 本業とは異なる業種での副業を行う者が多く、本業の企業にとっては、多様な経験を積む機会となっている…また、副業を行うことにより、9割の副業者が本業への意識が高まった、又は変わらないと回答し、さらに、2割の副業者は本業へのモチベーション等が高まっていると回答している…思考・分析といった高度人材では、副業をしている人が、そうでない人よりも本業での賃金が36%高く…、高度人材の従業員に兼職させることで、本業の価値が高まることを示唆している。また、どの国でも、企業を出て起業を行うことにはリスクが伴うが、このリスクを逓減させるため、海外では、新たな起業を行うとき、過半は兼業で起こしている。
兼業・副業の拡大は、所得の増加に加え、スキルや経験の獲得を通じた、本業へのフィードバックや、人生100年時代の中で将来的に職業上別の選択肢への移行・準備も可能とする。

内閣官房「令和元年度成長戦略実行計画」(令和元年6月21日)

是非原典も見てもらえればと思いますが、ここではいくつかのデータも示しながら、その狙いが述べられています。
大きくまとめると、まず第一に、副業を行うこと本業ではできない経験を得ることで、知見・スキルを獲得し、本業にとってもメリットがあるという点です。特に、高度人材においては、副業実施者の方が賃金が高く出ており、本業先にとっても価値のある人材になっているというデータが紹介されています。
第二に、いきなり会社を辞めて起業するのではなく、まず副業の形で起業することが海外では多く、副業が起業の手段になっているという点です。
第三に、働き手側の目線としても、一社で勤め上げるだけでなく、違う会社も見ておくことで、人生100年時代のなかで働く期間が長期化しても、選択肢を増やすことができるという点です。

この令和元年度成長戦略実行計画では、かなり幅広に副業推進の狙いが述べられています。

令和3年度成長戦略実行計画(令和3年6月18日)

その後、コロナ禍になり、政府の副業推進政策の狙いには少し動きが見られます。
それが少しづつ出始めているのが令和3年度成長戦略実行計画です。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/pdf/ap2021.pdf

多様な働き方や新しい働き方を希望する方のニーズに応え、企業における兼業・ 副業の選択肢を提供するとともに、短時間正社員等の多様な正社員制度の導入を促 進する。産業構造の変化に伴う労働移動の円滑化を図るためにも、フェーズⅡの働 き方改革を推進する。

内閣官房「令和3年度成長戦略実行計画」(令和3年6月18日)

ここでは、円滑な労働移動という狙いが出始めています。
労働移動自体は、これまでの政府が狙いとしたところではありますが、コロナ禍で急激に産業構造が変化する可能性があったことから、この目的がより強く出されています。

その後、岸田政権下で名前が「新しい資本主義の グランドデザイン及び実行計画」と変わりましたが、令和4年度、令和5年度においても、同様に成長分野への円滑な労働移動という狙いが述べられています。

新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版

そして、今年の6月に出されました最新のグランドデザイン・実行計画では、また新たな視点が加わっています。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/ap2024.pdf

大企業の副業・兼業の解禁による、中小・小規模企業・スタートアップへの人材の移動を奨励するため、送り出し企業の 事務手続の簡素化の可能性を追求する。

新しい資本主義実現会議「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」(令和6年6月21日)

ここでは、はっきりと大企業人材を中小、スタートアップ等に送り出すという狙いが出ています。
実は、よーく読めば、令和元年度成長戦略実行計画にもこのような文脈は読み取れたのですが、ここまではっきり書かれたのは、今回が初めてであろうと思われます。

ちなみに、ここでは、労働時間の通算の見直しの可能性も言及されていますが、今回の趣旨とはずれるので詳述は控えます。

政府の狙いも理解したうえでの腹落ち感も大事では

上記のとおり、よくみていくと副業推進の狙いは、ちょっとずつ変遷があり、なかなか面白いなと思います。
法的には副業・兼業を原則として禁止できないという解釈は、昭和の裁判例から一貫した考え方ではあるのですが、副業になかなか積極的ではない企業にとっては、こうした政府の狙いも理解したうえで、腹落ちした状態で副業を認めていくということも大事かもしれません



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