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はしかワクチン不足 知っておくべきことは

はしかの国内での感染者が話題になるなかで、はしかワクチンの供給不足が指摘されています。3月30日、その背景を取材した記事が日経新聞サイトに掲載されました。

記事には下記のような背景が挙げられています。

・新型コロナではしかワクチンの接種者が減る中で、2月にUAEから到着した人のはしか感染が報道され需要が高まったこと
・1月に武田製薬がワクチンの一部ロットの有効性不足を理由とした自主回収を行ったことから、供給が不安定になっていること(4月をめどに再開予定)

はしか、およびはしかワクチンに関するニュースを解釈する際に、知っておくべきことは以下です。

・現状は「大流行」とはいえない

3月21日時点で、国内で確認された麻疹の感染者数は20人です。去年(23年)の28人に比べ7割に達していますが、そもそもこの28人という数は、コロナの影響があった2020年から22年と共に歴史的な低水準です。

2010年~2019年を見ると、だいたい年間200人~500人程度の感染者が出ていることがわかります。それと比べると、2024年の現時点での状況は「流行」とはいいがたいものです。

日本における乳児麻疹の発生状況(2010年1月1日~2019年6月30日: 2019年7月10 日現在)より

・以前の大流行はけた違い、変化を起こしたのはワクチン

今回、20人の感染者がクローズアップされていますが、わずか20年ほど前の2001年には年間で推定286,000人が感染した大流行が起きています。
近年、このような大流行はおこらなくなり、年間でも1000人を切るような小規模な感染に収まるようになりました。

この変化の最大の要因が、ワクチンの普及です。日本は、ワクチン接種の取り組みに多くの国民が協力したことにより、2015年には世界保健機関西太平洋事務局(WPRO)より「はしかの排除国」に認定されるまでになりました。

・ワクチン接種 まず乳幼児を優先 大人は話題が落ち着いたときにぜひ

日本ははしかの排除国、すなわち多くの人がワクチンや自然感染による免疫を持っているので、はしかの大流行のリスクは少ないと言えます。多くの人が免疫を持っている状況では、たとえ海外からウイルスが持ち込まれても、それが持続的に感染を拡げられず、生き延びることが出来ないからです。

紹介した記事でも、川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長の「まずは小児の定期接種を進め、成人で感染によるリスクの高い人は抗体検査などを受けて、必要であれば接種を受けてほしい」というコメントを紹介しています。

ワクチンの供給が安定するまでは、まず、感染による重症化のリスクが高く、かつ免疫がない「乳幼児」への接種を優先すべきです。大人の接種のせいで乳幼児の定期接種用のワクチンが不足するような事態は避けなければいけません。

コロナ禍を理由に、お子さんへのはしかワクチン(MRワクチン)の接種をしていないかたは、ぜひご検討いただければと願います。一方で大人の方は、お近くのクリニックに電話などで相談し、十分余裕をもってワクチンを接種できる状況になってから、抗体検査やワクチンの接種などを検討いただければと思います。

#日経COMEMO

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