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働く女性の価値算定で成長する家事代行ビジネス

 一日の中で、炊事・洗濯・買い物などの家事に費やしているのは3時間が平均値。これは家族構成によっても異なるが、結婚している主婦の場合には4.55時間と、夫が家事を分担している平均時間(0.49時間)よりも、はるかに長い。

家事労働の大半は、無償で毎日行われているものだが、これを経済価値に換算するといくらになるか、というシミュレーションは、各国で行われるようになっている。内閣府が算定したデータによると、日本の女性が行っている年間の家事労働は1,313時間で、その金銭価値は193.5万円と算定されている。時給換算すると約1,400円/時になるが、この単価の求め方は、同じ時間を、会社で働いた場合に得られる賃金の機会損失に基づいている。

近年では、女性の社会進出が進み、労働単価も昔より高くなっているため、主婦が行う家事労働の金銭評価額も上昇することになる。高度成長期だった35年前と比べても、日本の家事労働価値は3倍近く高くなっている。

働く主婦の家事労働は、年収が高い女性ほど単価評価は高くなる。たとえば、年収600万円の女性は時給単価が約2,800円、年収800万円は時給3,700円となり、自分で家事をするよりも、外部のサービスを効果的に利用したほうが、トータルでみた労働生産性は高くなる。こうした考えは、海外のエリート女性の中から浸透してきており、家政婦を雇ったり、ハウスキーピングサービスを利用したりすることは一般的になっている。

夫婦間の家事分担にしても、日本は先進国の中で最も夫の家事時間が最も短くて、調理器メーカーのリンナイが、世界5ヶ国(日本、韓国、米国、ドイツ、デンマーク)で行った共働き世帯の意識調査でも、夫が家事を分担している割合が、日本は最下位となっている。

一方、米国では家庭内の家事分業が進んでいるが、夫婦共に仕事が忙しい世帯では、家事に十分な時間が割けなくなる問題が生じてくる。子どもが発熱した時にも会社を休めなかったり、必要な睡眠時間を削ってまで、毎日の炊事や洗濯を行うような状況は、「ワーク・ファミリー・コンフリクト」と呼ばれ、それを是正する目的で、家事代行サービスへのニーズが高まっている。特に20~30代の若い世帯ほど、家事代行を利用することの抵抗感は低い。

日本でも、家庭形態は変化していることから、共働き世帯、単身世帯、高齢者世帯、という3つの属性において家事代行サービスへのニーズは高まっていくことが予測されている。そこで、ダスキン、イオン、パソナ、ニチイ学館など、大手企業もこの市場に本格参入しはじめている。しかし、家事代行はもともと、小回りの利く個人事業者に適した分野であり、大手よりも付加価値の高いサービスを手掛けることが可能だ。

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