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台北の無人コンビニで考える人手不足問題

Computex/InnoVEXとその関連で台北滞在中に、市内の無人コンビニを2か所見て回った。1か所はすでにオープンして1年以上たっているものだが、情報をキャッチするのが遅くなったのと足を運ぶ機会がなかったことが重なって、今さら、というタイミングでの訪問。

具体的な場所は、同じ時期に台北にいた、Nサロンの台北視察ゼミメンバーから教えてもらった。余談になるが、こうして行程はバラバラでも同じイベントやカンファレンスに参加している人からもらえる情報はタイムリーで本当にありがたく、これまでも何度こうして助けられたかわからない。

昨年から、キャッシュレスとも関連して、社会の効率化に関心が向いているので、限られた時間ながらこの機会に駆け足でも見てこようということで、隙間の時間を見計らって回って来た。

セブンイレブンの無人店X-Store

1つ目は、セブンイレブンの無人店「X-Store」。訪れたのは台北メトロ市政府駅の北西方向に歩いて2,3分の場所にある店。有人店舗と並んで開設されていて、台湾のセブンイレブン無人店舗としては2号店らしい(1号店は、台湾のセブンイレブン本社に併設されているとのことで、こちらは訪れていない)。

あらかじめ台湾セブンイレブンのポイントアプリ「OPENPOINT」をダウンロードして会員登録を済ませ、セブンイレブン等で売られているiCash2.0という、日本でいえばnanacoのような、セブンイレブンが発行元となっているプリペイド式電子マネーカードを入手し、カード番号でアプリの会員情報と紐づけておかなければならない。現金はもちろんクレジットカードも使えない、ということ。「X-Store」隣の有人店ではX-Store特製のiCash2.0が販売されていたのでそれを購入し、ついでにレジで300台湾ドル(約1,200円)をチャージした。なお、iCash2.0カードは、セブンイレブンだけでなく台北メトロなど一部の交通機関等でも使える。

なお、会員登録にはSMS認証が必要で、アプリ上は日本の国番号も選択できるようになっているが、実際には台湾の携帯電話が必要なようだ。また、身分証の番号を入れる必要があり、ここに日本のパスポート番号を入れても登録できない(執筆時点)ので、今回はちょっと特別な方法を使って入店したことは書き添えておきたい。

顔認証のための登録も必要、という情報があり、店にも登録機があったが調整中。品出しのために通りかかった店員さんに聞いたら、一度登録機にいったものの調整中であることを見て「(駅の改札機のような)入店機(?)にいけ」と言われたので、入店機のカメラを見つめつつ、紐づけ済みのiCash2.0カードをかざして入店。1名づつ入店するようになっているようなので、カップルや友人で入ろうと思うなら、全員が会員登録しなければいけなさそう。一緒に気軽なショッピング、とはいかない。

店内はさほど広くなく、品数も限られているが、オフィスビルの1階にあることも意識した品揃えと思った。X-Storeオリジナルのハガキやお土産品もあった。朝ごはんを食べずに来たので、ヨーグルトとパンとアイスコーヒーを買うことに。アイスコーヒーは、冷凍庫の氷の袋をカップに入れ、マシンのボタンを押してドリップするセルフ方式。

商品棚は、一部サイネージ形式の表示が取り入れられ値札も電子式。ドリンクやヨーグルトなどが入った冷蔵ケースはガラスの扉があって、人が近づくと扉が開き、遠ざかると閉まる。案外反応が良いというか、開いている様子を写真に撮ろうと思うと閉まってしまうくらい、こまめに開閉する設定になっていた。

天井などを見渡しても、Amazon Goほどには特殊な仕組みは入っていないように思えたが、詳細はよく分からない。棚の奥行きが浅く1商品あたりの陳列数は少なく感じたが、隣の有人店舗と比較して来店者は結構少ないし、実験店的な位置付けであれば、これでいいのかもしれない。

レジは、商品を台の読み取りエリアに置くと自動で読み取って、ディスプレイに明細が表示される。バーコードを読みとっているのではないらしく、バーコード面を底にして読み取れた商品を、試しに裏返してバーコード面を上にしたら認識しなかった。セルフのコーヒーは、手入力しろ、という表示が画面に出ていたので、画面のメニューから該当商品のボタンを押す。明細を確認して、間違いなければ、決済のボタンを押してiCashカードを読取部にかざして完了。こちらのシステムはNECが納入したものということだ。チャージ残高が足りなければ店内にチャージ機がある。

レジ台には、箸やスプーン、ストローなどがあるので、必要に応じてもらい、入店時と同じ形式のゲート(退店機)を通る。ゲートを出ると、弁当などを温める電子レンジやゴミ箱が備えられたエリアと、携帯を充電できるqiの充電台も備えられたイートインスペースがある。

店外にある説明の立て看板を除いて、アプリやレジの表示は全て中国語(台湾華語)のみ。登録に身分証番号の入力が必要なので、当然といえば当然かもしれない。

地元スーパー「大潤發」の無人店

もう1店は、台湾のスーパーである大潤發(RT-MART)が台北メトロ南京三民駅構内に設置しているもの。3番出口に近い改札外にある。他にも市内に数店あるらしい。

こちらも「大潤發」アプリをダウンロードして会員登録が必要。SMS認証のために台湾の携帯番号が必要なのはX-Storeと同じだが、身分証番号は不要なので、外国人旅行者でも登録できる。決済はいくつかの方法があるようだが、もちろん現金は不可。台湾のSuicaのようなEASY CARDが使え、特に紐づけは必要ないので、その点でもX-Storeよりも簡単。

入店には、店のドア横にあるディスプレイに表示されたバーコードをアプリでスキャンするらしいのだが、1回目に行った時には、会員登録がうまくいかず、ドアを開けることができなかった。2回目に行った昼過ぎには、「Free Entry」とあって、ドアは解錠されており、誰でも入れた。おそらく、会員認証して入店する場合でも、1人が登録していれば家族や友人カップルも一緒に店内に入れそうだ。

こちらは特にオリジナルの商品があるというわけでなく、冷蔵ケースを含めた商品棚も、おそらくは通常店舗と同じ。いくつか監視カメラはあるものの、X-Storeよりさらに特別な仕組みは入っていないと思われた。

レジは、日本でも見かけるようになって来たセルフレジ形式で、アプリの会員バーコードをかざし(おそらく、Free Entryだとそれすら省略可能)、商品のバーコードをスキャン。画面の明細表示を確認して、正しければEASY CARDを読取部にかざして完了。

アプリは中国語(台湾華語)だけ対応だが、セルフレジの使い方の表示は英語が併記されていた。

店自体はX-Storeと比較しても格段に狭く、品数を考えても、自動販売機を多数並べることで解決できるレベルと大差ないのかもしれないな、と思った。

人手不足と無人化

台湾でも人手不足が社会問題になっているのかは、私にはよく分からない。ただ、先進国始め多くの国では、程度の差はあれ将来の高齢化が予想され、それは必然的に若い労働者が足りなくなることに結びつくのだろうから、こうした動きがあること自体は、特に驚くものではない。日本でもセルフレジの店は増えつつある。ただ、セルフレジは抜本的な効率性を発揮するものかというとそうでもないし、赤羽駅構内に設置された無人キオスクも期間限定の実験店という位置付けで、実用化されたもの、ととらえるべきではないもののようだ。

一方で、ご紹介した台湾の2つの店は、実験的要素はあるものの常設店であるようだし、コンビニ以外にも市立図書館の分館が無人化されているものを台北・松山空港で見かけた。

ちなみに、この図書館の隣には「無人珈琲」と銘打ったスペースがあり、ドリップ式のコーヒー自販機とそれを飲むためのスペースがあるだけでしかないのだけれど、時流に乗ろうとする台湾人のたくましさを垣間見た気がする。

今年のComputex会場を歩いていて目についたのは、受付や決済などが無人で出来るキオスク型の機器で、昨年はここまで見かけなかったと思う。

また、eインク(電子ペーパー)と太陽光パネルを組み合わせたバス停の時刻表の表示機なども、技術的には何も目新しくないが、人手を省くという観点で見た時に、有効なものだと思った。雨よけの屋根が設置されているようなバス停であれば、かなり有効に使えそうな気がする。

改めて考えてみると、これだけ人手不足が言われながら、日本が具体的に起こしているアクションは少ないのではないだろうか。もちろん機械やテクノロジーだけが解決の方策ではないけれど、この1年で台湾の街なかで見かける人手不足に有効そうな変化の方が、日本のそれよりも多く感じてしまう。

どうしても、日本は90%どころか99%の確実性が担保できるまで動かない、実用化されない傾向のある社会だ。それが安心を担保しているわけで、その価値がないとは思わない。一方で、台湾はそこが非常に柔軟で、70%くらいいけそうであれば実用化してしまい、ダメだったら後から手直しする、あるいはやめてしまう、という社会であると感じる。

日本がそうである理由の一つは、チャレンジすることを評価せず、チャレンジした結果としての失敗も、チャレンジを伴わない失敗と同じように責任を過剰に課すという気風にあるように思う。むしろ、チャレンジしないで失敗した方が許されやすい、という一面すらあるかもしれない。「いままで通りやっていたのだから、(チャレンジなどという余計なことをしたわけではないから)、仕方ない。」と。

もし、チャレンジした結果としての失敗に対する社会の許容度が高かったら、赤羽の無人キオスクも期間限定で閉じてしまうのではなく、言ってみれば「永遠のβ」として常設化できたのかもしれない。そして、それが出来るなら、期間限定の店よりも多くの知見が溜まることは言うまでもなく、また投資に対する回収もしやすくなるのではないか。

急に社会全体の気風が変わるものでもないとは分かっているので、せめて、性質の違う2つの失敗を、同じレベルに見るくらいのところから始められないものかな、と思う。

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川端 康夫(アクティブビジョン株式会社 代表取締役)

アクティブビジョン株式会社 代表取締役。大手企業とスタートアップ企業双方の事業創造・成長のサポートを手がけ、短期的な戦略コンサルティングの後に必要となる、地に足のついた伴走型の戦術コンサルティングを手がける。 http://www.aktivevision.com

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