五輪効果は既に8割以上出た可能性
今夏に開催する予定の東京オリンピック・パラリンピック。
当初は世界一コンパクトなオリンピックを目指し、経費を7000億円に抑えるというものでしたが、経費は膨れ上がり3兆円超に上るとされています。
オリンピックに合わせて進めてきた事業等は多数あり、政府の方でもキャッシュレス等も含めたインフラ整備に力を入れていました。
しかし、ここにきて中国発祥の新型コロナウイルスの影響が肥大し、日本全国で感染者が見られています。
コロナウイルスの影響次第では夏に予定している東京オリンピック・パラリンピック(以下オリパラ)が延期、もしくは中止になる可能性も出てきています。
延期ならまだしも、中止になれば日本経済に与えるダメージは計り知れないでしょう。
過去、オリンピックを開催した国は例外なくその前後に景気の拡大や、株価や通貨の上昇を経験しており、オリンピック開催は当該国の経済にプラスの効果をもたらしてきました。
前回のブラジルでは、2009年にオリンピックの開催が決定してから、競技場の建設や交通網の拡充など、様々なインフラ整備を通じて景気が押し上げられましたが、観光収入や個人消費の増加という経路からも、経済成長率の押し上げ効果がありました。
今年の東京オリパラも、例外なく経済効果が期待されていました。
東京が招致段階でIOCに提出した「立候補ファイル」の大会経費は、建設工事が本体工事費のみに限るなど計上される費用が基礎的なものに絞られていました。
さらに、IOCは大会開催を側面から支える都市基盤整備等は大会後も残る「レガシー(遺産)」に当たるとして大会関係経費に盛り込まれなかったため、約7340憶円にとどまっていました。
しかし、昨年12月に会計検査院が公表した試算では、国の大会関連支出とした事業が340あり、国は関連経費として既に1.06兆円を支出したことが明らかになっています。
これは、府省庁が照会に回答した支出を幅広く計上しています。
このため、検査院の試算や東京都の関連経費を含めると、総額3兆円を超えることになっています。
このように、オリンピック経費は総額3兆円を超えることになっていますが、それにはオリンピックに向けて支出される民間部門の投資や消費は入っていません。
あくまでざっくりした試算ですが、1984年のロサンゼルス以降に夏季オリンピックを開催した国の経済成長率の平均をとると、開催3年前を底に開催2年前が+0.4%ポイント、開催1年前が+0.9%ポイント、開催年が+0.3%ポイント押し上げられていることがわかります。
それを現在の日本の経済規模に当てはめると、GDPの押し上げ額は直近3年間の累計で+9.2兆円、開催年だけでも+1.7兆円となります。
ただ、これは付加価値ベースの金額です。
生産誘発額に換算すれば、それぞれ+17.0兆円、+3.2兆円程度の金額になります。
従って、すでに全体の8割以上の14兆円近くの経済効果が出た可能性があるといえるでしょう。