複業マトリクス

「アンゾフの成長マトリクス」から「個の成長戦略」を考えてみる。

僕の専門分野の一つが「キャリア戦略」であり、その中で特に「複業」という領域において日々思考し、発信を続けています。

「キャリア戦略」を考える上で有用なのが、「自分自身を一つの会社として捉えて、『自分株式会社の経営戦略』を考えてみる」という思考実験です。

そうすると、どこか遠くに思えた「経営学」という学問が、途端に「めちゃくちゃ有効活用できる学問」に変わります。

経営戦略の父、アンゾフの「成長マトリクス」

ビジネスに最も密接に関わる学問領域として「経営学」というものがあります。経営学は本来「企業経営を科学する」学問ですが、個人を企業として見立ててみると、「個の経営戦略」にも十分応用可能なことがわかります。

経営学には様々なフレームワークがありますが、もっとも有名・有用なフレームワークが、アンゾフの「成長マトリクス」でしょう。

①市場浸透:既存製品×既存市場
②顧客開拓:既存製品×新規市場
③商品開発:新規製品×既存市場
④多角化:新規製品×新規市場

どのターゲット(既存/新規)に対して、どんなバリュー(既存/新規)を提供するか?という2×2の掛け算でつくられるマトリクスで、もともとは企業の成長戦略・多角化戦略を整理するためにつくられたものですが、「個の成長戦略」を考える上でも非常に役に立ちます。

横軸の「市場」を「社内/社外」、縦軸の「製品」を「スキル」に置き換えてみると、次のようなマトリクスとして整理することができます。

「副業ブーム」のいま、9割のビジネスパーソンが「副業」に興味を持っている状況ですが、経営学的に言うと、「複業(副業)とは、個の多角化である」ということができます。

しかし、アンゾフの成長マトリクスが示唆していることは、①市場浸透が不十分な状態で、多角化に舵を切ることは愚の骨頂である、ということです。

これを「個の成長戦略」に置き換えると、「まずは本業で成果を出すことに専念するべき」ということになるでしょう。

では、どんなタイミングが「複業」のはじめどきか、というと「市場浸透」=「本業で安定的に成果を出せるにようになったタイミング」がベストタイミングと言えるかもしれません。

「まったく新しいことをはじめる」のではなく、「社外に横展開」する

では、ある程度「市場浸透」を達成し、いよいよ複業をはじめよう!となったとき、どのように考えていけば良いのでしょうか。

基本的に、複業はプライベートでの営みなので、「やりたいことを、やりたいときにやればいい」が筆者の基本スタンスですが、もう少し「戦略的」に考えてみましょう。

「個の成長戦略マトリクス」を再掲します。

「本業とは全く異なる新しいこと」をはじめるのは、上記で言うと④にあたりますが、これは企業の経営戦略で考えると非常に難易度が高いです。高リターンではありますが、なかなかの高リスクを伴うのです。

その上で、複業としてオススメなのは中リスク中リターン②社外展開です。

②社外展開は、「本業で成果を出すために発揮しているスキルを、社外に対して発揮していくこと」を指します。

例えば、

「本業で経理の仕事をやっていて、Excelをバリバリ使いこなしている人が、社外でExcelの講師として活躍する」

という複業は②に該当します。

複業をはじめたい、と思ったらまずは自分が発揮している、発揮できる「保有スキル」を棚卸しすることからはじめてみるのがオススメです。

「経営学」をもっと学びたい…という方にオススメ

「個の成長戦略」を考える上で、経営学は非常に学びが大きいです。

「もう少し経営学について学んでみたい」と思った方にオススメなのが三谷宏治さんの『新しい経営学』です。

ターゲット、バリュー、ケイパビリティ、収益モデル、という4つの視点から幅広くかつわかりやすく経営学について学べるので、初学者にはとってもオススメです。ぜひ手にとって見てくださいね。


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西村創一朗(複業研究家)

複業研究家/HRマーケター。元学生パパ。HARES代表取締役/ランサーズ株式会社 タレント社員。NPO法人ファザーリングジャパン理事。30歳3児(11歳👦🏻/7歳🧒🏻/3歳👧🏻)の父。首都大学東京法学系卒。お仕事の依頼は→ s.n@hares.jp

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