「意味の経路をつくる」というリーダーシップ。あるいはセンスメイキングについて
今日、坂井風太さんのこの動画を見ていてめっちゃ目から鱗なフレーズが出てきたんです。
「うまくいくかわからないことを決め、うまくいかせることが『決断』」だと。
これはマネジメントやリーダーと呼ばれるような人に限らず、現場から改革を起こしていくうえでも重要な力だと感じました。
「センスメイキング」というリーダーシップ
「決断」と同じくらい重要なリーダーシップの要素に「意味をつくること」があるんじゃないかと。
まず「決断」した結果がうまくいくかどうかは「実行力・推進力」がセットで重要。決めただけでは何も起こらないからですね。
このモメンタムを生み出すために必要なのが「意味」だと考えています。
意味と方向を見出す「センスメイキング」というスキル
「センスメイキング」という言葉があります。ざっくり言うと、複雑で不確実な状況を理解し、意味や行動の方向性を見出すためのプロセスやスキルのことです。
スタートアップやベンチャーでは、正解や前例がないなかでも手探りで挑まなければならないシーンばかりです。VUCAと呼ばれる時代においては尚更。それでも日々、決断を繰り返し前進します。
このような環境で成果を生み出し、事業(そして組織や個人の)成長につなげていくには、センスメイキングは重要なスキルだと捉えています。これは役職に関わらず、日々の激動を乗り越えていくうえで、あらゆる立場の人が持っておいて損はないんじゃないかと。少なくとも、自分が接してきたなかで、スタートアップやベンチャーで活躍する方の多くに共通するなと感じます。
センスメイキングの肝は「意味の経路」をつくることではないか
とはいえ「センスメイキング」といっても咀嚼しづらいので、個人的に「意味づくり」と「意味の経路づくり」の2つに分解して解釈しています。
まず「意味」は、多くの企業に存在するミッションやビジョン、理念といった概念に相当するかなと。(既に策定されているパターンが多いと思うので、「意味づくり」についてはここでは割愛します。)
この「意味」について、日々の業務、取り組みからみた時にイメージつきづらいこともあるかと思います。
例えば、僕の所属するSmartHRには「well-working|労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」というコーポレートミッションがあります。(単純化するために、今回のnoteでは「社会のwell-working」ではなく「自社のwell-working」という観点で捉えます)
この「well-working」に対し、日々の業務を単純にプロットすると下図のようになりますが、それぞれの取り組みが「本当にwell-workingにつながるのか?」「距離が遠くないか?」という疑問が生じることも少なくないでしょう。
そんな時に力を発揮するのが、「意味の経路づくり」だと考えています。
例えば、個人的な解釈として「well-working」の重要な因子に「well-being」があると考えています。ポイントとして、以下のような観点があります。
well-being度や主観的幸福度の高い社員は、そうでない社員と比べて労働生産性や創造性が高いという研究結果があること
「その人らしく働く」前提として「その人らしくいること、受容されること」が重要ではないかということ
この「well-being」が「well-working」の中核因子であると仮定したときに、次に生まれるのは「その『well-being』をどのように高めるのか?」という問いです。(ちなみにwell-workingがwell-beingを高めるという循環的な作用もあると思いますが、本題とそれるのでここでは省きます)
well-beingにまつわる研究、因子分析は様々ありますが、代表的なモデルのひとつ「PERMA理論」(マーティン・セリグマン)を例に挙げます。well-beingを構成する5つの因子として、以下の要素があるとされています。
「Positive emotion」ポジティブ感情
「Engagement」エンゲージメント、没頭
「Relationship」関係性
「Meaning」意味づけ
「Acoomplishment」達成感
ここまで分解できると、たとえば「ポジティブな感情を引き出すにはどのような取り組みがあるかな?」「関係性を高めるために交流を促進しよう」「意味づけを強めるために、ミッションやビジョンを見直そう」といった議論のポイントが明確化されるし、逆に日々の取り組みを各因子とつなげながら「意味」までの過程を認識できるはずです。
実際の例「SmartHRのサーキュレーションマーケティング」
実例として、自分と自社の話をします。
僕はSmartHR入社後、約3年ほどオウンドメディアをはじめ導入事例やeBookなどのコンテンツマーケティングを主な役割として担っていました。
2019年秋ころから徐々にメンバーが増え「どのようなチームにしていくのか?」という言語化・概念化の必要が生じました。その際、VPの岡本さん含め、「コンテンツマーケティングを起点にした循環型のマーケティング構造(サーキュレーションマーケティング)」の仮説にたどり着き、2020年7月にこのユニットを新たに立ち上げることになりました。
当時のことは以下のインタビュー記事に詳しく書かれているので、気になる方はぜひご覧ください。
きっかけとなったポイントを抜粋します。
この「サーキュレーションマーケティング」という意味のもと、各種取材やユーザー会などに取り組み、接点の生まれたユーザーさんやその頻度をログに残しながら「線のコミュニケーション」を強化していったことが、ユーザーコミュニティ『PARK』立ち上げの初期の熱量になっていったと、振り返って思います。
サーキュレーションマーケティングという「意味」と「意味の経路」が成果を生み出した
現在、僕はPARKの運営から離れ別の部門となりましたが、1,500名を超える規模となり、ますます盛り上がりを見せています。最近の分析では、PARK参加メンバーは活用度が高いというデータもでています。こりゃすげぇ。
個人的にすごく嬉しかったエピソードとしては、この4年ほどの間に「SmartHRを導入しているかをポイントのひとつに転職先を決め、またPARKに戻ってきた」「転職した先でSmartHR導入を推進し、またPARKに戻ってきた」というユーザーさんが何人もいたことです。
サーキュレーションマーケティングという「意味」を掲げてきたなかで、思い描いていた理想的なケースのひとつだと強く実感しました。この「意味」と「意味の経路」がなければ、オウンドメディアでの取材や導入事例を強化する先に、現在の世界はなかったかもしれません。
このように、「意味」と「意味の経路」を可視化し、日々の業務と関連付けていけると、冒頭に挙げたような「決断」が後押しされる、または腹落ち・納得感が強まるのではないかなと考えています。
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