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いつまで「日本人は英語が苦手」を押し通すのか?

日本人が英語を話せないのは言語として違い過ぎるから?

オンライン英会話大手のレアジョブが、日本人の英語スピーキング能力に関する調査を発表した。同社が開発するAIを使ったスピーキングテストのデータ66万人を活用し、日本のほか非英語圏の77ヶ国・地域が対象の調査だ。その結果、グローバルビジネスで使えるレベル(6段階中上から3番目の「B2」以上)の人は僅か7%にとどまったという。グローバル平均が25%であり、著しく低い結果だ。

といっても、日本人の英語のスコアが低いことは今に始まったことではない。日本でTOEIC Programを実施・運営する国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)によると2022年のTOEIC L&R国別平均スコアで日本の平均点は561点だ。お隣の韓国は675点で100点以上の開きがある。公開されている41ヶ国中29位と真ん中を割り込んでいる。

日本人が英語の習得に難航する理由の1つとして、良く知られるものに「言語間距離」という概念がある。複数言語の類似性と差異性を評価して、言語習得の難易度を示している。英語に対して、日本語は最も差異が大きく、言語学習が困難な群に分類される。
それでは、日本人が英語を話すことができないのは「言語間距離」が原因かというと、そう単純でもない。というのも、なにも日本だけが英語からかけ離れた言語というわけではないためだ。「言語間距離」で日本と同程度に英語と差異がある言語として、中国語・韓国語・アラビア語があげられる。

先に挙げたIIBCの結果をみると、中国の平均点は548点で日本よりも低い。同様に台湾も568点と日本の561点と大差がない。しかし、韓国は675点であり、アラビア語圏の国はより平均点の高い国がいくつもある。例えば、調査で第2位の平均点(804点)を出しているレバノンはアラビア語圏だ。8位のモロッコと9位のチュニジアもアラビア語圏だ。
韓国と同程度の順位にも、ヨルダンとエジプトといったアラビア語圏の国が名前を連ねている。
2000年代初頭では韓国も日本や中国と大差がない500点台だったが、近年、急激にスコアを伸ばしている。

国内市場が縮小する中でグローバル化に躊躇した未来を想像する

「言語間距離」が日本と同様に開いているにも関わらず、英語話者が多い国には特徴がある。それは国内市場が小さく、グローバルビジネスで外貨を稼がないと競争力を維持できない国だ。特に、アラビア語圏で英語話者の多い国は人口が比較的少なく、なおかつ地理的にも歴史的にも欧州と近い国が多い。
中国語圏は、中国の経済成長と共に中国語が話せることで大きな市場でビジネスが可能だ。そのため、英語をわざわざ勉強しなくても、経済成長する中国市場をターゲットとすることで事業が成り立つ。
一方、日本の場合は2010年に中国に追い抜かれるまでGDP世界2位の期間が42年間あり、それから13年後の昨年、ドイツに抜かれるまで世界3位だった。つまり、国内市場の規模が大きく、無理をしてグローバルビジネスに挑戦する必要性が薄かった。グローバルビジネスは一部の大企業が取り組めばよい話であり、多くの企業にとって無理をしなくても良い話だった。
2000年代に環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への加入にあたって議論が起きたときにも、GDPベースで考えると日米がほとんどの割合を占めることとなり、メリットが小さすぎるという意見が多かった。しかし、その議論から20年たたずして、世界の経済バランスは大きく変化している。当時は規模が小さすぎると言われていたインドネシアでさえ、今や日本の3分の1程度までGDPが大きくなり、世界16位のポジションまで上げてきた。スペインに並ぼうかという位置だ。
日本の人口減少は今後も続くことが予想される。それと共に、国内市場の縮小は継続するだろう。一方で、世界的な物価高と賃金上昇にみられるように、世界経済は日本を置いて成長期に入っている。
日本語と英語の距離がありすぎると言っていられる場合ではないだろう。未来志向で考えるならば、まだ日本の国際競争力が残っている現時点のリソースを活かして、グローバルビジネスに打って出る企業が増えることが期待される。


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