本人意思に反する「転勤」の終焉と多様化
こんにちは、リデザインワーク代表&ベーシックCOOの林です!
今回は、日経さんがご意見募集をされている#転勤は本当に必要かについて考えてみたいと思います。
本人意思に反する「転勤」の終焉
転勤は、日本のメンバーシップ型組織における特徴的な制度だと思っています。従来の組織では、新卒一括採用を前提とし、様々な職種や地域を経験してもらうことで、均質的な人材を育て、会社として大きな人事異動時期には、退職や昇格などに合わせて、均質な人材を最適に再配置することで組織に穴が出来ずに運営されてきました。
この仕組みを支えてきたのは、終身雇用制であり、転職などの人材の流動性が低かった時代背景があり、会社は終身で雇用を約束する(御恩)かわりに、会社のために、転勤も奉公として受け入れるという関係でした。
江戸時代の参勤交代のイメージに近いものを感じています。
しかし、前提の会社と個人の関係が大きな変化を迎えています。
会社と個人の関係は御恩と奉公、終身雇用の終焉を迎え、
会社と個人の関係は、対等な契約関係、ジョブ型、プロジェクト型に向かっています。転勤が本人の意に反するものであれば、普通に転職するでしょうし、著しくモチベーションが下がってしまいパフォーマンスが下がることもあるでしょう。
これらの状況変化から、本人の意思と反する「転勤」はなくなっていくと思います。というよりも、成り立たなくなっていくと思います。実際に、転勤回避権を導入する企業の例も出てきました。あくまで回避権なので、前提としては企業が転勤命令できる前提ですが、その前提もどんどんなくなっていくと思います。
「転勤」の多様化
リモートワークが一般化してきた中で、「転勤」の概念や定義を見直す時期に来ていると思います。
東京で働いていた人が大阪の仕事をするのに、大阪に引っ越しする必要がなくなってきていますし、東京の仕事を継続するのに、大阪に引っ越しても良くなっていきます。
転勤をwikipediaで調べると、
転勤(てんきん)とは、同じ官公庁または会社内で勤務地が変わること
と書かれていました。
勤務地という言葉は、勤務地(会社が指定する主となる職場)と住所(住んでいる場所)が近接である時代は上記の定義で事足りていますが、近接である必要がなくなっていく中で再定義が必要だなと思いました。
少しまとめてみました。
特に、新転勤①と②です。
新転勤①東京から大阪支社に主たる勤務地は変わるが、リモートワークを活用して、東京から引っ越さない場合
新転勤②主たる勤務地は東京から何も変わらないが、リモートワークを活用して、大阪に引っ越す場合
前述したように、従来の転勤(特に本人の意思に反する場合)は減っていき、新転勤①と②が増えていく構造になっていくと思います。
「本人意思に反する転勤」に変わる備えを考える
参勤交代的に、本人の意思に関係なく転勤を命ずることは成り立たなくなっていくと思いますが、では、組織に穴が開いて事業運営ができなくなるのも困ります。従来の転勤が担っていた役割をどうアップデートしていくのかについて考えてみました。
大前提として、あるエリア(主たる勤務地)で人を加えないといけない場合、リモートワークを活用して、住所を変えなくても人を加えられる業務フローを構築し、新転勤①の選択肢を作ることが重要だと思います。
また、従来の転勤が必要な場合でも、本人の成長機会や本人の考え方と合致してWINーWINになるのであれば、従来の転勤は成り立つと思います。
そのためは、1on1を通じて本人の成長プランをすり合わせたり、転勤についての考え方を確認し、従来転勤が双方にとってプラスになると思える人が誰なのかをしっかり把握・プール化しておくことです。
このことで、組織全体最適を実行する際に、WINーWINの構造の中で、本人の意思を反映した従来型の転勤が価値あるものとして成立していくと思います。
また、従来組織内の転勤によって埋めていた人事異動や退職の穴は、当該エリアにて積極的に中途社員の採用と定着に取り組んでいくことで選択肢の広がりを作っていくことも不可欠だと思います。
最後に、リモートワークが難しい仕事で、地域採用が本当に難しい役割(余人をもって代えがたい役割)で、本人の意思だけで賄えない場合は、従来給与に加えて、当該エリアで採用が難しい希少性の高さも踏まえた報酬設計まで踏み込むことで、プールを拡充していく必要があると思います。
参勤交代的な本人の意思に反する転勤はなくなっていきます。
その仕組みでカバーしてきた事業運営を支える組織運営のアップデートが必要だと改めて考えました。
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