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若者世代から広がる「大辞職」時代への転換

米国では、ストレスや不満を抱えたまま仕事を続けるのではなく、自発的に会社を辞める人が、コロナ禍以降に増えている。会社側の都合による解雇・レイオフとは異なる、自主的な退職者の数は、パンデミック初期の2020年1~3月には一時的に減少したものの、2020年4月以降は毎月増えており、離職率は20年ぶりの高水準になっている。

Job Openings and Labor Turnover Survey (JOLTS)が公開しているデータでも、リーマンショック後の不況よりも、現在のほうが退職者数は増えており、その中でも自主退職者(Quits)の割合が高いことがわかる。

The Job Openings and Labor Turnover Survey (JOLTS)

2021年初頭から自主的な退職者が増えているトレンドは「Great Resignation(大辞職)」と呼ばれており、特に20~30代の若い世代で増えていることから、雇用主はその動向に注視する必要が生じている。

求職情報サイトの Resume Builderが行った2022年前半に行った調査によると、米国で雇用されている労働者の23%は、1年以内に新たな仕事を見つける計画を立てており、その6割は既に新しい仕事へ応募をしている。離職者の割合が高いのは、小売、食品、接客が伴うサービス業などだが、それ以外の業界でも転職希望者は増えている。社内のポジションでは、中間管理職の退職希望者が、非管理職や上級管理職と比べても高いが、これは報告・伝達・監督という点で、上と下からのプレッシャーが重いためと分析されている。

1 in 4 workers plan on quitting in 2022, as Great Resignation continues(Resume Builder)

通常は、景気が良い時ほど自主退職率は高くなる特性があるが、今回の大辞職はコロナ禍で自分の仕事量が増えているにも関わらず、低賃金、昇進機会の欠如、職場で軽視されていると感じることなどが、主な理由となっており、ワークスタイルの変革を求めた行動となっている。

これまでの労使関係は、給与面の条件を良くすることで労働者のモチベーション(やる気)を高めることができたが、金銭のインセンティブは次第に効果を失いつつあり、雇用主はお金以外でも、自社で働くことの魅力を与えるが新たな課題になっている。

いまの会社で仕事のやり甲斐を無くした社員の人生設計には、大きく3つの選択肢があると言われている。1つ目は「無理はしないまま今の会社に留まる」、2つ目は「今よりも条件や環境の良い会社に転職する」、3つ目は「副業や起業をして新たな収入源を作り、早期リタイアを目指すこと」である。

世界的に長寿化が進んでいることで、これからの定年年齢は65歳、さらに70歳まで働かなくてはいけない時代が到来しようとしている。何歳まで働くのかは、健康状態や、仕事への労働意欲を踏まえた上で、自分自身が決めるようになる。昔と比べれば、自由な生き方の選択肢は増えていることから、サラリーマンとしての働き方に限界を感じる中で、自主的に退職をする「大辞職」のトレンドは、日本にも波及していくのかもしれない。

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