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クリエイティブ産業、海外取材で何ができる?=ドイツ編

「ドイツ」のビール文化をテーマにしたマンガ「キツネと熊の王冠(クローネ)」が2019年3月に発売されました。国内でもドイツのビール祭りを意識した「オクトーバーフェスト」が全国各地で開催されドイツのビールを身近に感じる機会が増えたり、もっと知りたいといった需要の高まりも背景にはあるのかもしれません。

このマンガはドイツ風の架空の世界で、ビール産業に携わる主人公たちや彼らを取り巻く人たちとの温かい交流を描いたお話ですが、舞台となる町やビール醸造所、ビール祭りの描写はドイツでの取材を元に作画されています。

実はこの現地取材ですが、通訳として同行しました。

マンガやアニメはクリエイティブ産業と呼ばれたりしますが、今回はこのビール・マンガの現地取材を振り返りながら、どういったことができるのかについて考えてみたいと思います。

まずは、取材当時のツイートを見てください。ビール醸造所を見学したり、ビール祭りに参加しました。

そして、例えば以下のようなコマは現地取材をベースにしています。

これはビール醸造所の内部の様子ですが、基本的に一般の人は入れません。大規模なビール工場では見学プログラムが提供されている場合もありますが、今回の作品にはマッチしないこともあり見送ることになった(と思います)。

こちらは山の中で開催された地元の人による地元の人のためのビール祭りの模様がベースになっています。取材したビール祭りには大規模なテントはなく、各ビール醸造所が小規模な店舗を運営し、それらが集まっているものでした。

前置きが長くなってしまいましたが、筆者が協力したのはおよそ以下のタスクです。

・企画と取材内容をドイツ語で事前にメールや電話で説明する。

・現地についてからは取材アポが取れなかったところでも直接交渉し取材の許可を得る。

・見学だけでなく、担当者から案内や説明があった場合は逐次通訳を行う。

ビール祭りとビール醸造所を同時に取材するというのは実はかなり無謀な計画だったのかもしれません。各醸造所はビール祭りに参加するので増産体制で臨んでいて案内する余裕がないところも多かったからです。

ただし、取材を通じて普段見られない裏側でもある製造の現場を見られたことは大きな成果だっと思います。とくに繁忙期の様子は普段ではなかなか見られないものです。(「だめ!」と断られても、粘り強く「その先まで入って写真を撮るだけだから」と交渉した甲斐がありました。こういう時、現地語話者が同行していなければ諦めてしまうケースもあるでしょう。)

また、担当者や併設の居酒屋でビールを飲む町の人たち、その様子やその人たちとの交流は、出来上がった作品を読むと作品作りにも大きく反映されているのではないかと思います。

こういった現地での交流は、IT技術が発達した今でもなかなか現地に行かないと体験できないものだと改めて感じました。

取材の手段は主に写真撮影で、マンガ家自身が撮影します。

これは別の取材時に別のマンガ家から聞いた話しですが、取材の醍醐味は「描きたい角度」で写真が撮れることだと教えてもらいました。


ドイツでの現地取材について書いてみました。作者に現地を体感してもらいい、様々なインスピレーションを得てもらう。こうしたことは、ドイツに限ったことではなく、日本国内でもアジアや他の国にも共通することだと思います。

一方で、筆者の知る限り、ドイツには古い木組みの家が立ち並ぶ町並みや城など、近年流行する「異世界もの」のファンタジーの世界観にマッチした場所が多いのも事実だと思います。ドイツを取材する潜在的なニーズはまだあるのかなとも感じています。

最後に少し大きな話しをさせてください。日本の創作者が海外に目を向け作品を作れば、ファンも現地に興味を持ち、あわよくば作中に登場する場所を「聖地巡礼」するひとも出てくるかもしれません。こうした動きは、「内向き志向」だと言われる昨今において、その抗いの萌芽の萌芽くらいにはなるのではないかなと思いました。

皆さんはどう思われますか?


(2023年4月26日:誤字脱字を修正)

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