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世界競争力の「大艦巨砲主義」の見直し

スイスの有力ビジネススクールであるIMDが2024年の世界競争力ランキングを発表した。シンガポールが4年ぶりに首位となり、一方の日本は38位と3年連続で順位を落とした。調査対象国は67ヶ国で、この調子でいくと来年にはインドに追い抜かれる。内訳では、「国内経済」・「雇用」・「科学インフラ」についての評価は高かったものの「ビジネスの効率性」・「企業環境」・「国際経験」・「機敏性」の評価が著しく低かったという。

さて、ランキングの上位をみるとシンガポールを筆頭に、スイス、デンマーク、アイルランド、香港、スウェーデン、UAE、台湾、オランダ、ノルウェーと続く。

ランキングの上位陣を概観すると規模の小さな国だが、国家としての性格がわかりやすい国々が並んでいることがわかる。アジアの中では、グローバルビジネスにおけるアジアヘッドクオーターとして機能するシンガポールに、アジアの金融の中心である香港、先端テクノロジーと柔軟で機動力のある製造技術を生かす台湾が名前を連ねている。
これらの国々は規模が小さいことから大国よりも機動力のある意思決定が可能で、思い切った戦略を打ち立てて国家運営もしやすい。ランキングでは、米国でも12位であり、大国は上位に食い込みにくい特徴があるのだろう。

一方で、この結果は一つの示唆を与えてくれる。それは、国として大きいということが必ずしも競争力を生み出さないということだ。それよりも、明確な戦略を持ち、競争力を高めるためにグローバル市場で存在感を発揮できるかが評価される世の中に変化してきたということだ。
日本人は自分たちで日本は小さいと言いがちだが、相対的にみると日本は小さくない。米国・中国・ロシアと隣接している国家があまりにも大きすぎるだけで、世界的にみると日本はどの指標をとっても大国だ。

では、大国の日本がどうすべきかというと、地方ごとの独自の競争力を高めていくほかないだろう。日本全体として中央集権的な意思決定をしていたのでは、これからのグローバルビジネスにおける競争力を維持することが難しい。IMDの評価にある通り、ビジネスの効率性と機敏性があまりにも遅すぎるのだ。

将来を見つめたとき、グローバルビジネスで戦えるビジネスの効率性と機敏性を各地方が独自に戦略として打ち出すべきだ。東京が地方を助けてくれる時代はもう終わりを迎えるのだ。まるで大艦巨砲主義が終焉を迎えたように、機動力の時代が来る。

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