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挑戦の土台〜「アンカー」か「セーフティネット」か

お疲れさまです。メタバースクリエイターズ若宮です。

今日はちょっと挑戦のための「土台」と「アンカー」「セーフティネット」という話を書いてみます。


転職や起業、新しい挑戦って怖い?

僕はこれまでの半生で何度か大きなキャリアチェンジをしています。

ファーストキャリアは建築の設計でしたが、26歳のとき仕事を辞めて大学に入り直し、美学芸術学を学ぶことに(ここが僕のアート思考の土台になっています)

その後30歳でNTTドコモに入社、約8年間働きました。そして38歳でDeNAに転職し、そこでスタートアップ的な事業の立ち上げを経験し41歳でuni'queを起業。2023年にはメタバースのスタートアップ「メタバースクリエイターズ」を立ち上げ、グローバルを目指しています。

新規事業ばかりやっていたのでいつかは起業したい、と大企業時代から思っていましたし、社内ベンチャー制度にも応募したりしていました。しかし実際に起業してみると、企業で働いていたり新規事業をしているのとはまた全然違う感覚です。


いつかは起業を、と思っていても実際に大企業を辞めて起業するとなると躊躇する方も多いかもしれません。安定した環境から飛び出すのにはリスクも感じます。しかし、そのまま一つの企業にとどまるのにもリスクがある。僕が大企業を飛び出したのはそれが理由でした。


「土台」と「アンカー」と「セーフティネット」

起業を含め、新たな挑戦をするためにはまずは準備が必要、と思う方も多いでしょう。それは一定そうなのですが、いつか準備ができたら起業する、と言いながらいつまで経っても起業しない方も結構多いものです。

挑戦には「土台」が必要。ただそれが「アンカー」になってしまうか、「セーフティネット」と思えるのか、というところに分かれ目があります。

挑戦の「土台」

「まずは大企業で経験を積み、土台を作りたい」と考える方も多いですよね。

僕自身、大企業でベースのビジネススキルをつけることができましたし、起業後に融資や出資を受けたりする際の信用の面でも、大企業にいたことが一定の土台となっています。

ただ、問題は「土台」はどこまであれば十分なのかという点です。学びはつきませんし、「まだ準備が足りない」と感じ続けることで、新たな挑戦に踏み出すタイミングを逃してしまうことも少なくありません。

特に、「石橋を叩いて壊す」とも言われる日本企業に染まってしまうと、その土台がいつの間にか「アンカー」になってしまうことがあります。


土台からの「アンカー」への変質

「アンカー」とは錨。命綱のような安心感がありますが、それはまた現在地に縛る重りでもあります。安心・安定の一方、そこから踏み出せなくなる呪縛にもなる。

僕自身、大企業を飛び出したのにはそうした呪縛に危機感を持った、ということもあります。大企業で働いていると、その企業の中の論理に合わせ、価値観やスキルを最適化しすぎてしまうことがあり、この会社でしか通用しない人材になってしまいかねません。

また、出世して役職が上がっていくにつれ、築いてきたものを失う怖さも大きくなっていきます。

人間の心理には「プロスペクト理論」という、新しく得るものよりも、持っているものを失う方が強く感じられるバイアスがあります。この結果環境を変えるチャレンジがしにくくなり、「挑戦のために作った土台」が逆に自分を縛るアンカーになってしまうことがある。

まずは挑戦のための土台をつくる、と思うなら、それがアンカーに変質してしまわないために、どこまで土台をつくったら新たなチャレンジに踏み出すのか、自分の中である程度挑戦する基準や時期を決めておくことも重要だと思います。


土台は「セーフティネット」にもなる

僕も大企業にいた時にはその企業の中での出世や評価に囚われていました。一つの価値軸しか知らないとある種依存的な状態になります。しかし実際に外に出てみると、もっと価値というのは多様で、これまでこだわっていたことを手放しても大したことはないと相対化できます。


そして、中にいると飛び出すことがとても怖く思えるものですが、外に出たからといって全てを失うわけではありません。

たとえば、大企業で積んだスキルや経験は、起業して仮に失敗したとしてもゼロにはなりません。新しい挑戦をしたことでまた新しい土台も出来ていますし、再び就職する選択肢も残されています。それまでの土台はゼロになったわけではなく、空中ブランコで落ちたときに受け止めてくれる「セーフティネット」のように、次の挑戦を後押ししてくれる存在にもなります。

先ほど「土台」が「アンカー」になってしまう、ということを書きました。しかし本来、土台がない時よりも、土台がある方が挑戦しやすいはずです。毎日の生活にも困るような一文無しよりは、経済的な安定やスキルなどを積み上げることで拠り所が増えるからです。

本来、土台はアンカーではなく、安心感を増やすセーフティーネットとして捉える視点が大切だと思っています。それはあくまでそこに留まるためにではなく、ジャンプするためにあるのです。土台があるからこそ、もっと大胆にチャレンジできる。そう考えることで、新しい一歩を踏み出す勇気が湧いてきます。


土台の価値は変化する。だからこそ、挑戦を

新しい挑戦をしようとする時、それまでに積み上げてきたものを考え、縛られてしまうことがある。今までのキャリアやスキル、地位などを「失いたくない」という恐れが生まれるからです。キャリアや年齢を積み重ねた人たちにとって、「できない」「わからない」を認めること自体恥ずかしく、新しいことを始める妨げになることもあります。

土台を積み上げるほど怖く踏み出せなくなる。それよりも、土台があるからこそジャンプできる。そうした姿勢はますます重要になっていると感じます。

というのも、積み上げてきた「土台」の価値は不変ではありません。時代の変化とともにその価値は変化します。これまで積み上げてきたスキルや経験が、いつの間にか時代遅れになり「不良資産」と化すリスクもあるのです。昭和の時代には、土台がある程度長い期間資産として通用しましたが、いまは不良資産化も早くなっています。だからこそ、積み上げたものに固執せず、リスキリングやアンラーンが必要だとさかんに言われるわけです。


また、たとえばメタバースなどの新しいカルチャーについてもそうですが、そもそも「若さ」そのものが土台、ということもあります。土台は時間をかけて積み重ねられるものばかりではなく、時間が経つほど徐々に失われていくものもあるのです。

だからこそ、積み上げたものに固執するのではなく、新しいチャレンジを選ぶ方が良いと僕は思っています。土台をアンカーではなくセーフティネットとし、新たな挑戦へとジャンプすることで自分をアップデートし続ける方が、「土台」を有効活用できます。


自分自身の経験からも、土台はそこを踏み出し新しいことに挑戦してみるからこそ、土台としての真の価値を発揮すると感じます。

もし今挑戦をためらっているなら、一度その恐れを手放してみてはどうでしょうか。失敗してもゼロには戻りませんし、それまでの経験やスキルが「セーフティネット」になってくれるのですから、土台をつくる前よりもより大胆な挑戦がきっとできるはずです。

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