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リーダーシップとは優秀さではなく、矛盾を乗り越える力である

菅首相は、コロナ過が小康状態の20年9月に就任し、72%という高い支持率を獲得しましたが、年末の世論調査では42%まで急落させています。

政府のコロナ対応を「評価しない」人は59%に上り、支持率低下の主な要因になっています。

未曽有の災難の中で、国のリーダーへの期待は高まる一方です。しかし、突如、猛スピードで走っているジェットコースターの先頭に立つことになった管首相へ、完璧を求めるのも酷な話です。

そもそもリーダーは、難解な課題にどう対峙し、最低限何を行うべきなのでしょうか。

技術で解けない課題にはリーダーシップが必要

日本ほど成熟した国家であれば、過去の経験や専門知識さえあれば解ける問題への対処は容易なはずです。

専門家を招集して、事実に基づき、科学的に最良と考えられる手段を選択していけば、問題は解決していきます。適切な専門家を招集して丸振りをすれば問題は解決するので、リーダーシップは必要ありません。(コロナ禍に対する政府の初動は、専門知識で解ける課題であると捉えていた可能性を私は感じました)

しかし、現状コロナ禍の問題は全く解決されていません。今回の課題には、異なる側面があります。それは、既存の解決策が通用しないだけでなく、特定の方針によって、必ず傷付く人たちが存在することです。

例えば、感染を完全に抑止するために外出を禁止すれば、対面によって価値を提供する仕事に携わる人たちは、職を失うリスクが高まります。反対に、経済活動を重視して外出を奨励すれば、コロナ罹患リスクが高まり、重症化につながる疾患を抱える人たちにとっては耐えられない事態となります。

人は、変化を嫌うのではなく、何かを失うことに抵抗するのです。

街をロックダウンさせる方針で突き進むとすると、ある人にはより良い未来がはっきり見えたとしても、他の人は失うものがはっきりと見えているかもしれません。

リーダーは、大局的見地に立つ必要があります。明るい未来のために、誰に、何を手放して貰うべきかを、明確に決定しなければならないのです。

リーダーが行うべきこと

どんな方針を立てたとしても、反対する人もいれば、賛同する人もいるのが世の常です。しかし、日本は統制国家ではなく、民主主義で強制力の弱い体制です。できるだけ多くの人に、決定した方針を納得をしてもらうことが必要になります。

そのためには、様々な人の立場に立ち、何を不安に思っていて、何を失うのを恐れているのかを理解しなければなりません。反対派の理由をしっかり理解し、異なる視点を学びとります。最も激しく抵抗する人が、最も多くを失う人です。時間を掛けてでも深く理解し、寄り添わなければなりません。

人は理由がわかれば、犠牲を払うことができます。理由に深く納得できれば、自分の命を投げ打って死地に赴くこともできます。ただし、自分が失うものと天秤に掛ける価値があることなのか、リーダーにはその理由を伝える義務があります。そして、国民が何を失うのかを知っていること、喪失感を理解していることが、リーダーへの信頼を醸成します。決して、自分の身だけを課題の外側に置き、安穏としている姿をみせるべきではありません。当事者として、不安と悲しさの最前線に立っていることを示さなければならないのです

そして、より良い未来を実現するために、方針が抱える矛盾を乗り越え、人々に何を諦めて欲しいのかを明確に伝えることが、リーダーの最大の仕事になるのです。

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