レストランは幸せの伝道師だ
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
※ この記事は以下の日経MJ連動投稿企画への寄稿です。
緊急事態宣言下で外食もままならないという方も多いのではないでしょうか? 飲食店および関連する業種の方々のご苦労はいかほどかと思いますが、おいしいのもが大好きな私としても非常にストレスがたまる日々です。
飲食店の方々も様々な工夫でコロナ禍を乗り越えようとしています。テイクアウトやお取り寄せのバリエーションがぐっと増えたため、家にいながらにして普段では味わえないようなものが体験できたりしています。特に、なかなか予約の取れないミシュランの星付き店であってもお取り寄せができるようになるとは、以前では想像もできませんでした。
そのうちの1つに、代々木上原に店を構えるフレンチレストラン「sio」があります。去年の3月下旬にオーナーシェフである鳥羽周作さんがTwitterでレシピを公開したことから、全国的に有名になりました。
その後、公式noteも始められ、いまもたくさんのレシピが公開されています。
sioは前身であるGrisのころに初めてお邪魔して以来何度かうかがっていますが、繊細な料理や構成、そしてノンアルコールペアリングの巧みさに唸らされた記憶があります。しかし、星を取られてから予約がなかなか取れないこともあり、しばらくの間は「行きたいけどなぁ。。。」という状態が続いていました。正直に言うと、そうこうしているうちに記憶がどんどん薄れてしまい、あまり行くことがなくなってしまいました。
転機となったのが、2019年の10月に2号店である「o/sio」のオープンでした。会社のすぐそばでもあり、ランチでもふらっといけるカジュアルなお店で、メニューもアラカルトで単価も安い。これは行かなくては!と思い、オープン日にお邪魔しました。びっくりすることに、唐揚げやホッケといった街の定食屋風のメニューが並んでいましたが、どれもsioの味、つまり五味(うまみ・塩み・甘み・酸味・苦味)が整った素晴らしいおいしさでした。以来、唐揚げ&奈良漬けタルタルにハマってしまい、足繁くランチに通うことになりました。
仕事でちょっと元気がないとき、または気合を入れたいときには必ずo/sioのランチを食べる。この新しいルーチンは、私のやる気と幸せを増やしてくれました。
コロナ禍のリモートワークで自炊をするようになった方も多いと思います。私は元々料理自体は好きだったものの、日々の仕事の忙しさでなかなかできずにいました。在宅になってからは家族全員が昼から家にいるというこれまでにない状況になったため、さっとランチを作って食べる機会も増えました。そんなときに #おうちでsio のレシピは大活躍。間違いなくおいしいものが食べれるというのは、とても安心感があります。
(人気レシピの1つである、sioのスペシャリテのカルボナーラ)
鳥羽さんはよく「幸せの分母を増やす」と言っています。料理を通じて喜びを感じる人が増えれば、結果として飲食店も盛り上がるということなのだと思います。おうちでsioのレシピの中には、ものすごくハードルの低いものもあり、え?ミシュランシェフがこんなものを!?とびっくりしました。さらにはコンビニで買えるレトルトの肉団子やからあげチキンをアレンジしたものすらあります。以下を初めて見たときは、本当に衝撃でした。
「そうか、粉末ソースを水で伸ばすのか!」など、目からうろこのちょっとしたプロの工夫を真似するだけで、仕上がりは全然違う。自炊のハードルもぐっと下がり、いろいろ自分でも試してみようと思えます。するとどうでしょう、料理自体への興味も湧いてきて、味についても感度が増してくる気がします。さらに最近では「こうせい校長」の動画にハマっています。そうやってるのかー!と目からうろこがボロボロ落ちること請け合いです。
シェフのレシピの良いところは、お店に行けば「答え合わせ」ができることです。結局は同じことをやっても全然味の精度が違うので「プロすごい」という感想にはなるのですが、それもまた料理への興味につながるでしょう。
レストランが要らなくなるとき、それはみなが食への興味を失ってしまったときではないでしょうか。栄養的にはチューブとかサプリでも人という生物は生存できるわけです。そうではなく、食の楽しみ、そこから得られる幸せをどう増やすのか。
それを実現するために、これからのレストランは幸せの伝道師になっていくのではないか。私はそのように思います。
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タイトル画像提供:PanKR / PIXTA(ピクスタ)