乱立する〇〇バレー。集積するのはスタートアップだけでよいのか
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
東京都内の再開発が続々と進んでいます。主要なターミナル駅前はほぼすべて大規模ビルに建て替えられるのではないかというくらいどこも工事だらけであり、私が現在勤務している渋谷駅前もいつになったら完了するのかわからないほどです(そして導線が目まぐるしく変わるのでよく迷います)。
そして新しいオフィスビルができると、必ずコワーキングスペースやスタートアップを呼び込んでイノベーションの集積地にするというビジョンが語られます。どれも米国シリコンバレーにあやかりたいのか「〇〇バレー」という愛称をつけるところも共通点です。
かつて、1990年代後半に渋谷が「ビットバレー」と呼ばれた時期がありました。渋い谷を英訳したものですが、当時インターネットが出始めの頃でちょっとしたスタートアップブームとなりました。私自身その中にいたのでよく覚えていますが、エンジェル投資家や事業会社や学生ベンチャーとその卵など、イベントがあればそれこそカオスが状態になるという感じの熱気に包まれていました。
その中からは現在ではネット企業を代表するような大企業へと成長した会社も数多くあります。確かにスタートアップが集積することで生まれる熱気というのはあるのでしょう。しかしながら、重要なのは「エコシステム」が生まれるかどうか。つまり、研究開発の種を生み出すベースとなる大学等があり(ビットバレーは学生ベンチャーが多く、背景には自身の研究があったりしていました)、資金を提供するVCやエンジェル投資家があり、オフィスを提供する企業や不動産会社があり、機動的に必要な専門人材を採用できる人材プールがあり、、、といったものが有機的に機能している必要があります。
その中には損得抜きで若者を応援するコネクターのような大人の存在も不可欠です。ビットバレー時代で言えば、なんといっても「サトカン」さんです。
※ 余談ですが、上記の記事中にある「「今は唯一言、是非も無し」。06年、最後にこんなメールを仲間に送ってヤフーを後にした。」というメールの送信ボタンを押したのは私です。
興味のある方は以前の日経での連載「ネット興亡記」をご覧ください。書籍化もされています。
そう考えると、ベンチャーキャピタルを集積して日本版サンドヒルロード(シリコンバレーにあるVCが集積している街)を作ろうとしている「麻布台ヒルズ」のアプローチは、非常に興味深いです。今の日本に足りない機能を一気に底上げする可能性があると思います。
本歌であるシリコンバレーも歴史を紐解けば、冷戦を背景としたスタンフォード大学と軍(およびCIA)がアントレプレナーシップ文化をつくったという興味深い話があります。
歴史に学び、新たなイノベーションを生み出すための原動力としたいところですね。
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タイトル画像提供:Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)
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