足し算より引き算の時代
こんな記事が話題になっていた。男性の脱毛が増えている、と。
かつて男の身だしなみはスーツや靴や腕時計といった付け加える「プラスの所有」だったが、物欲が失われた現代、抜く・剃る・除く・引き締めるという「マイナス」方向になったということ。
薄毛についても、昭和の頃は少ない頭髪を誤魔化すためにかえってバーコードハゲに陥るおっさんが多かったが、今はもう堂々とスキンヘッドにした方が受けがいい。
足すのではなく引くのである。
これと連動する話かどうか、男性化粧品市場が右肩あがりである。
かつてこちらの記事にも書いたように、男も経済力だけではなく容姿が求められる時代になったのでさもありなんということだろうか。
年代別で見ると、以下のようになっている。
これだけみてしまうと10-20代の若い男子がもっとも購入しているように判断してしまいがちだが、2023年の購入率は40代のおっさんがもっとも高い。そして、人口動態的にみれば今では10-20代の若者より40代以上のおっさんの人口の方が多い。彼らは第二次ベビーブームの名残りの子どもたちだからだ。
となると、狙い目はおっさんに対する、「嫌われないための引き算のメンズコスメ」となるだろう。シミとかシワを目立たなくさせるようなもの。別にこれは独身の色恋関係だけではなく、会社における立場や取引においても重要である。
資生堂などの会社だけではなく、サントリーが男性用基礎化粧品などを展開しているのもそうした需要を見込んだ話だろう。
このCMは見た人も多いと思う。
実は、男性コスメの盛り上がりは過去にも何度かあって、その第一次ブームが1980年代。
1984年にコーセーが「ダモン・ブロンザー」という男性化粧品を発売している。ファンデーションとアイブロウペンシルやリップスティックまであった。
世の中的に、日焼けした肌が男女とも受けた時代である。広告キャラは天宮良(もう誰も知らないか)。結構売れました。ただ、このころはあくまで足し算のコスメだった。
1984年といえば、東京麻布十番にディスコ「マハラジャ」が開店した時期でもある。それと連動して、アーストン・ボラ―ジュの肩パッドバリバリの服を着た「なんちゃって安全地帯(玉置浩二)」みたいな化粧した男どもが、夜の街を闊歩していた時代でもある。
加えて、当時は男が香水をつけるのも流行りました。御用達は、シャネルの「アンテウス」。今も販売されてる。ただ、今これをつけると敬遠されるかもしれない。いい香りだが。
かつては全体的に「盛った」わけだが、今後、足し算より引き算が求められるのはおっさんのための「無臭になれる香水」だろう。いい匂いはいらないのである。無臭にしてほしいのだ。
とはいえ、一方では「臭いおっさんが好き」という女子もたまにいたりするけど…。
「足すより引く」というのは言動でもある。余計なことを言って炎上するおっさんやおばさんが多いが、これからは「何を言うか、ではなく、何を言わないか」が必要だろう。