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依然として高水準にある広義の失業率

最も代表的な雇用環境を示す指標である完全失業率は低水準にありますが、広義の失業率ともいわれる未活用労働指標は依然として高水準にあることにも注意が必要でしょう。

というのも、完全失業率は就業者と完全失業者を合わせた労働力人口に占める完全失業者の割合を示したものですが、直近の四半期データに基づけば、今年4-6月期時点で+0.2ポイント上昇の3.0%にとどまっています。そして男女別で見れば、男性が+0.3ポイント上昇の3.3%に対して、女性が+0.1ポイント上昇の2.7%となり、男女とも雇用環境の悪化は限定的になっているように見えます。

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しかし、就業していてももっと働きたいと考えている人や、非労働力人口の中でも働きたいと考えている人も存在します。しかし、そうした人たちは完全失業者にはカウントされていません。このため、総務省は平成30年からこうした状況を加味した広義の失業率ともいえる「未活用労働指標」を集計して公表しています。そして、中でも最も範囲を広げた未活用労働指標LU4(=「労働力人口+潜在労働力人口」に占める「失業者+追加就労希望者+潜在労働力人口」の割合)を見ると、今年4-6月期時点で前期から▲0.1ポイント低下の7.3%の水準にありまます。しかし、特に男女別では男性が+0.2ポイント上昇の6.3%に対し、女性が▲0.5ポイント低下していますが、それでも8.6%の水準にあることがわかります。

この理由としては、まず非労働力人口の中でも働きたいと考えていても、就業環境の厳しさや感染を恐れて求職活動していない人たちが失業者としてカウントされていないことがあるでしょう。加えて、女性の割合が高い非正規労働者を中心にもっと働きたいと考えている人が多数存在すること等が推察されます。このため、景気が良くないわりに失業率が低く抑えられているからと言って、楽観視できないということは未活用労働指標からも明らかといえるでしょう。

以上の分析に基づけば、仮に緊急事態宣言の時期や期間をさらに拡大するようであれば、政府には予備費を有効に活用した柔軟で迅速な政策対応が求められることになるでしょう。特に、現時点で打ち出されている支援としては、雇用調整助成金の特例措置が10月以降に縮小されることになっています。しかし、雇用環境の悪化はGDPの悪化に2四半期遅れて顕在化する傾向があることからすれば、少なくとも年内いっぱいぐらいはまでは再延長も必要になってくるでしょう。

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