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新型コロナの検査を受けることの「安心感」が時に「生命の危機を及ぼすこと」にもなりかねない

 インフルエンザの患者数が異例の低水準となっており、新型コロナウイルス対策で国民の衛生意識が高まっていることや海外からの帰国者が少ないことが影響していると推測されています。

厚労省が11日に公表したインフルエンザ患者の発生状況によると、8月31日~9月6日の1週間に全国約5千カ所の医療機関から報告された患者数は岐阜県、大阪府、沖縄県で1人ずつ。例年はこの時期でも数百人が報告されており、19年同時期は沖縄での大流行により3813人に上った。

 夏から秋にかけての時期にインフルエンザの発生はまだないだろうと思われる方も少なくはないと思いますが、例年7月頃には沖縄県での患者数増加や、夏休みで海外渡航をされた方が現地や空港などで感染して帰国後に発症する事例をよくみかけます。昨年はラグビーワールドカップが開催されたこともあり、おそらくは南半球からの輸入例も例年以上に報告されていたことが推測されています。ただ今年は海外からの帰国者はきわめて少なく、現在は発熱があればとにかくCOVID-19の検査が優先され、仮に陰性であってもインフルエンザの検査をするかどうかは正直不明確です。しかもインフルエンザの報告は5類感染症の定点(指定された医療機関)からの報告で、その多くは診療所ベースであり、自らの感染や院内感染のリスクからインフルエンザ検査で行う鼻腔ぬぐい液採取を敬遠している可能性もあると思われます。そうなるとこれまで検査診断していたインフルエンザの報告数も少なくなっているかもしれません。また発熱患者さんの診療では一つの感染症が判明すればおそらくはそこで診断は終わり、インフルエンザを含む自然に治癒してしまうことが多いウイルス感染症は正確な診断がなされないこともあります。すなわち積極的に検査をして探しにいかなければ正確な診断は得られない訳で、特に重複感染の診断は2つ以上の感染症検査をしなければ確定できないということです。勿論COVID-19も検査をしなければ正確な診断はできないのですが、あまりにもこだわるばかりに、陰性であっても信用できずに何度でもCOVID-19の検査を望まれる方もおられます。

 本日私は別の医療機関(東京近隣県)の発熱外来を担当したのですが、休日にもかかわらず実に30名近くの発熱患者さんが来られました。症状や行動歴からCOVID-19を疑った方は2-3名、検査はすべて陰性でしたが、他の検査も行い別の感染症と確定診断した方も数名おられました。また本日ではありませんが、本人はCOVID-19を気にしていたのですが診察の結果、内科以外の問題が見つかった患者さんもおられました。このようにCOVID-19ばかりを気にしていると確実に治る感染症や感染症以外の重大な病気を見逃してしまう可能性もあります。実際に持病のある方が定期的な受診を控えることにより生命の危機に瀕する事例も散見されているようです。これは患者さんだけではなく時に医師にも問題があることを感じます。検査を受けること、することの「安心感」とでも言うべきでしょうか、その「安心感」が時に「生命の危機を及ぼすこと」にもなりかねないことを十分にご理解いただきたいと思います。

 これまで半年近く何人もの患者さんの診療を行ってきて思うCOVID-19の印象は、「3密」と呼ばれる環境や、最近の感染者がほとんど該当する至近距離でのマスクなしの会話(ほとんどが食事が終わった後のマスクなしでの長時間の会話)での感染がほとんどであり、しかるべき感染対策をとられている方にはそう簡単に感染するものではないと思っています(勿論例外もあります)。「しっかりと対策を取っていたのに感染した」という報道振りもありますが、どこまでしっかりなのか真相はわかりません(勿論例外もあります)。インフルエンザだけではなく夏季に流行するはずのウイルス感染症もきわめて少なかったという報告があったことからも感染症対策の基本である「手指衛生」「咳エチケット(現在はユニバーサルマスキング)」を「新たな日常」の「当たり前の行動」になるように心がけたいものです。

#COMEMO #NIKKEI

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