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令和時代のお店の役割『顧客へ提供する価値は合理性か?それとも体験か?①』ー合理性篇ー

テクノロジーの進歩やネット通販の普及、働き方改革と人手不足、個人消費の低迷など、外食産業や小売業などの所謂「お店」は変革の時代に立たされている。この変革の流れは、日本だけではなく、全世界で同時多発的に起こっている歴史の転換期と言っても過言ではない。それでは、どのような方向性に「お店」は変革し、ビジネス環境の変化に適応していくべきだろうか。

結論から言うと、「お店」は自分たちが提供する価値を「合理性」と「体験」のどちらを重視するのか、決断を下さなくてはならないだろう。そして、「合理性」と「体験」を顧客に提供するために、テクノロジーを積極活用し、自社独自の価値を提供していくことが求められる。

本稿では、前後編に分け、現在すでに起きている変化を紹介しながら、「合理性」と「体験」に特化したお店の在り方について考えていきたい。


テクノロジーによる「お店」の合理化は避けられない

米国の変化で、最も印象的なことは「amazon GO」に代表されるようなテクノロジーによる店舗の無人化とキャッシュレス化だろう。テクノロジーを活用することで従業員が店舗にいる必要がない世界観は、SF映画の中のような未来的であり、合理性を突き詰めた形態だ。日本国内でも、エンターテイメント性が多少含まれているものの、「変なホテル」は同じ方向を向いている事業と言える。


このように、テクノロジーを活用することで果たされる「お店の合理化」は、日本のみならず、全世界で猛スピードで進展している。

中国における「お店の合理化」は、アリペイやWeChatPayに代表されるキャッシュレス化だろう。いまや中国は、現金を使うことなく、ほとんどのものを買うことが可能だ。屋台で串焼きを買うのですら、アリペイやWeChatPayで支払いが可能だというのは、よく知られている。

また、スターバックスのようなコーヒーショップにも、テクノロジーによる合理化の波が押し寄せている。先日、米ナスダックに上場申請をして話題になった中国のコーヒーショップ「Luckin Coffee(瑞幸咖啡)」は、スターバックスキラーとして注目を集めている。「Luckin Coffee」では、スマホで事前注文やデリバリーの依頼をすることで、並ぶことなくコーヒーを楽しむことができる。居心地の良い空間を提供するがゆえに、店内やレジが混雑するというスターバックスの弱みを突いたビジネスだ。


「お店の合理化」は、米国や中国というユニコーン企業を多数輩出する国だけで起きているわけではない。AIテクノロジーを活用したホテルマネジメントシステムで急成長を遂げる、インドのホテルチェーンOYOも代表的な企業の1つだ。


アフリカも同様に、テクノロジーによる「お店の合理化」が進んでいる。「シリコン・サバンナ」と呼ばれ、急成長しているケニアでは「電子マネー革命」が起きている。ケニアの大手通信会社・サファリコムが2007年に始めた携帯電話を使った送金システム「M-PESA」は、生活になくてはならないインフラとして浸透している。ケニアにおけるキャッシュレス・サービスの浸透は、日本はもちろんのこと、他の先進諸国と比べても進んでいる。


合理性を求めるビジネスモデルは、規模の経済が機能しやすい。そのため、大資本を持ったグローバル企業が先進テクノロジーを積極活用したサービスを提供することで、今の日本市場も大きく変化してしまう可能性がある。20年後には、今存在しているコンビニエンスストアのブランドが1つも存在しない世界もあり得るほど、世界の変化は劇的だ。


新たな「合理性」は、算盤からレジスターへの変化以上のインパクトを持つ

もし、「合理性」を競争優位とするのであれば、テクノロジーを活用することによるビジネスモデルや業務プロセスの抜本的な改革は避けて通れない。

この時、人員削減や人手不足を背景にした、ワンオペをするような経営判断や合理化とは根本的に考え方が違う。人員削減や人手不足を背景にした合理化は、顧客にとっては「価格の低下と共に、サービスの質の低下」として受け止められる。いくら「人手を削減しても、プロなのだからサービスレベルを下げるな」と精神論を振りかざしても、サービスレベルの低下を防ぐことは物理的に不可能だ。

テクノロジーを活用することによるビジネスモデルや業務プロセスの抜本的な改革は、顧客が享受する価値も変容させる。それは、驚きや感動、快感を伴って迎えられる。それは、1884年にNCRがレジスターを初めて販売し、8年間で米国内市場の95%のシェアを握り、独占禁止法に抵触するまでになった変化と似ている。「ガシャ、ガシャ、チーン」と正確に支払いができるレジスターの登場は、顧客にとって支払いのストレスと不安をなくし、新しい機会の登場が買い物自体をワクワクさせた。

レジスターの登場から、凡そ55年が経ち、店舗からレジの存在が消えようとしている。新たな合理化は、私たち、顧客が現状抱えている不便や不満(そして、仕方ないこと、当たり前のこととして受け入れてしまっていること)を解消し、買い物における「不」可能を実現させるものになるだろう。

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碇 邦生(大分大学)

大分大学経済学部の講師(人的資源管理論)をしています。採用や育成などのタレントマネジメント、地方創生・地方発ベンチャーなどの話題を中心に取り上げていきます。自動車メーカーやシンクタンクを経て、30代で大学教員とジョブホッパーです。 ※日経のキーオピニオンリーダーに選出されました。

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コメント2件

現在、小売業ではOnline Merges Offlineなども言われていますが、お店の未来は消費者だけでなく、店員の働き方を改善してもよいと考える。(有人ではなく無人店舗の未来も考えられるが)コンビニ等の店員は一日中立っているのではなく、椅子に座ってレジをしたり(椅子に座ってレジがしにくければ、レジの時だけ立って)、椅子に座ってお客を待っていても良いのではないだろうか。
コメントありがとうございます。「定員が終日立ちっぱなし、商品入れ替えをする、待機時間が長い」はテクノロジーの導入で確実に10年後には過去の遺物になりそうです。レジも人がいる必要性は防犯目的以外にはありません。
個人的には、完全無人店舗がマジョリティになることは無いかと予測しています。防犯とイレギュラー対応のリスクが大きすぎますから。ただ、コンビニにおける店員の役割は確実に変わることでしょう。「店員からのコンシェルジュサービス」に特化した富裕層向けコンビニも出てくるかもしれません。
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