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日経世界シェア:データは、成長産業では日本は韓国に負けていると告げている

前回の記事にて、日経新聞の発表した世界シェアのデータから、日本企業のポジションが中国に追い抜かれ、プレゼンス(存在感)が低下していると指摘した。


今回は、もう少し掘り下げて、具体的に日本企業のプレゼンスがどのように低下しているのかについて、考察していきたい。


日本企業は成長産業で戦えているのか?

日経新聞のデータを見てみると、産業規模が前年と比べて増減しているのかという情報が公開されている。

そこから、前年比10%増の産業を「成長産業」、前年比10%減の産業を「減少産業」としてラベル付けしてみる。そうすると、「成長産業」には16産業、「減少産業」には8産業を分類することができた。

下図は、これら24産業に対して、1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点を得点を付け、順位を示したものだ。これによって、「成長産業」でシェアを獲得している国と「減少産業」でシェアを獲得している国を可視化した。

図を見てみると、アメリカと中国は成長産業と減少産業の双方で高いシェアを誇っていることがわかる。多様な産業に投資ができており、スマートスピーカーやクラウドのような成長著しい若い産業の台頭といった新陳代謝にも対応できている。まさに世界一位と二位のGDPの大きさを表すように、国力の違いが顕著に出ている。

米中が上位を占めることは全産業のシェアの状況から見ても予想できたが、日韓のポジションが興味深い結果を示している。成長産業における日本のシェアは第4位であるが、減少産業では第1位だ。日本は減少産業で強く、成長産業ではそれほどでもないという特徴が表れている。それに対し、韓国は成長産業で第3位であり、減少産業では第4位である。つまり、成長産業だけに焦点を当てると、日本企業の競争力は韓国に負けている。


産業の新陳代謝と業態変革が日本の大きな課題

なぜ、日本は中国だけではなく、韓国にも後塵を拝するようになってしまったのだろうか。これは、自分たちの強い既存事業に固執してしまい、なかなか新しい成長産業への移行が上手くいかなかったことが原因として推察できる。理論的には、古典的なものだが、いわゆるイノベーションのジレンマが当てはまるのだろう。

イノベーションのジレンマは、ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授が提唱した、成功している企業が新興企業の前に力を失う理由を説明した企業経営の理論だ。成功している企業にとって、新興の事業は、規模が小さく魅力的に映らず、既存事業の利益を損ねる可能性を持つために積極的に投資できない。そのため、新興の事業がもたらす顧客への付加価値の大きさを見過ごすことになってしまい、新たな特色を持つ商品を売り出し始めた新興企業に後れを取ってしまう。

減少産業は、具体的にはVRヘッドセット、デジタルカメラ、発電用大型タービン、中小型液晶パネルが当てはまる。これらの産業はいずれも日本企業がトップシェアを持つ。特に、デジタルカメラはトップ5を日本企業が占める。しかし、どの産業も代替する新技術や新興事業が出てきており、残念ながら、今後、産業の規模が反転して拡大する見込みは薄い。事業の転換が求められている段階に差し掛かっているとも読み取れる。

反面、成長産業はスマートスピーカー、DRAM、クラウドサービス、監視カメラ、スマートウオッチが挙げられる。その多くが、ここ10年間で急成長した産業だ。これら5つの産業の上位5社に日本企業は存在しない。まだ規模の小さい、新興事業だった頃に、うまく投資をして産業を育てることができなかった。


ビジネス環境の変化スピードは増すばかりであり、今、日本が競争力を発揮している産業も、5年も維持できているかはわからない。また、5年後には、現在は規模が小さく、見向きもされていなかったような新興事業が大きくなっている可能性も大きい。

例えば、ドローンはかなりの確率で新産業として期待されている。しかし、その取り組みの多くが、「ドローンでサッカーをしよう」「ドローンの子供教育を推進しよう」「農業や土木測量でドローンを活用しよう」と草の根的なモノが多数を占めており、そこからユニコーン企業が出てくるような気配をまだ感じない。

また、特定の自治体を特区化したとしても、中国の深センのように街中をドローンが飛び回るような、トライアンドエラーを繰り返しながら、イノベーションを模索するような試みもほとんど見られない。ユニコーン企業にとって不可欠な、試行と試作を繰り返すような環境ができていないのだ。


日本が国際競争力をこれ以上喪わないためには、成長産業を早い段階で見抜き、積極的に投資をし、新興企業を育てていくことが必要となるだろう。そのために、若い起業家をどのように育て、支援していくのか。また、大企業も自社の中の若い才能を如何に活用していくのかを考え、イノベーションのジレンマを克服していくことが求められている。

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