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少子化とは「子どもが生まれない時代」ではなく「子どもが死なない時代」だ

荒川和久/「結婚滅亡」著者

経済成長著しいベトナムですが、既に早くも少子化の波がきているようです。

記事にある通り、ベトナムは一時2000~2015年にかけて合計特殊出生率が2.0を切りましたが、それでも、2015年以降はもちなおして再び2.0を越えたりしています。とはいえ、1950年代から比べれば、随分と減りました。

ちなみに、ベトナムの人口は現在約9700万人で、1950年の2000万人台から比べたら、70年間で約5倍に膨らみました。しかし、その人口増加現象も長くは続かず、間もなく2025年頃には1億人を突破しますが、2049年には人口減少基調に変換し、2100年には6000万人まで減少します(国連WPP・LOW推計)。日本も2100年には6000万人を切ると言われているので、まあ、どこの国も同じように人口は減少します。もっとわかりやすく言えば、現在人口14億人の中国でさえ、2100年には半分の7億人台に減ります。

まるで日本だけが出生率が低いかのような報道をするメディアもあり、あきれ返るのですが、全世界的に出生率はいずれ2.0を割り込みます。アフリカでさえ2070年代には2.0を切ります。

大体どこの国も地域も判で押したように、出生率は同じ値に集約されていきます。

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2.0以下になるということは、基本的には出生数<死亡数ということになり、世界の人口は確実に減少していくことを意味します。

「日本だけではなく、世界的に人口は減少する」と言い続けていますが、これがまたなかなか信じたくないのか、認めようとしない人は大勢いて、「ああ、こういう人たちが、ノアの方舟を馬鹿にして溺死していった人たちなんだな」と感慨深くいつも見ています。

詳しくはこちらの記事をお読みください。

東洋経済の記事でも触れたように、出生数というのは、乳児死亡数が減れば減るほど減るという正の相関関係にあります。言い換えれば、生まれた子どもが乳児の段階で死ぬ(=医療は未発達)段階では、その国のお母さんは、がんばって次の子どもを産もうとするからです。子どもが死なない社会になれば、無理に子どもを産むことはなくなります。

これは、民族が違っても、宗教が違っても、文化が違っても、どこの国でも同様です。現在、人口が増え続けているのはアフリカ地域ですが、それもアフリカ諸国ではいまだに乳児の死亡率が高いからです。

こうした出産のメカニズムは動物においても見られます。

ライオンの群れのボスライオンに戦いを挑み、群れを乗っ取った雄ライオンは、まず、旧雄ライオンの子どもたちを殺します。そして、群れの雌ライオンと交尾して、自分の子どもを産ませます。

これがライオンの子殺しという習性ですが、群れを乗っ取られた上に、元の旦那を追い出され、自分の子どもまで殺した相手の雄ライオンとよく交尾できるな、と思うかもしれません。仇じゃないか、と。

しかし、群れのメスは、子どもを殺され、失うことによって発情が起きます。育児中のメスは本来発情しませんが、子どもへの哺乳が止まることでホルモン分泌が変わるからです。つまり、子がいなくなったことで本能的に新たな子を産もうとするわけです。

かつて、平安時代の娘で、天皇や高官貴族などに輿入れした娘は、とにかく子どもを産むことが役目でした。男児を産みことは、将来の天皇を産むことと同じだからです。なので、出産に伴い、死んでしまう女性も多かった。

藤原行成の妻は13歳で結婚、14年間で7人産みましたが、22歳からは毎年5年連続で出産しています。そして、7人目の子を出産した後、そんな連続出産の無理がたたったか、死んでしまいます。享年27歳。

しかも、産んだ7人のうち3人は早逝してしまいます。貴族の子ですら、産んだうちの半分は死んでしまったわけで、庶民であればもっと死亡率は高かったでしょう。「7つまでは神のうち」と言われたのはそのせいです。七五三のお祝いは、7歳まで育ったのでもう死んでしまうことはないだろう、よくぞ育ってくれたという意味のお祝いなのです。

当時の貴族層の母親は、行成の妻もそうでしたが、わが子に授乳させてなどもらえませんでした。その役割は他人の乳母が担当しました。授乳させない理由は、授乳による不妊期間を短縮させるためです。酷いものです。とにかく子どもを産むことだけが求められたわけですね。ライオンと変わりません。

貴族とか十二単とか言っても、当時の妻はある意味「子を産む家畜扱い」されていたようなものです。

そういうことを考えれば、少子化とは「子どもが生まれない時代」ではない。「産まれてきた子どもが死ななくてよくなった時代」でもあり、「産んだ母親が死ぬこともなく、自分の子を自分の手で慈しみ育てることのできる時代」になったと言えるのであり、決して悪いことではないように僕は思います。

いずれにしても、結婚した女性は平均して大体2人の子どもを産んでいます。今後もその傾向は続くでしょう。にも関わらず、合計特殊出生率が2.0を切るのは、未婚女性及び無子夫婦の数が増えているからです。

だからといって女性が全員子を産まなければいけないものでもなく、産まれてきた子ども達を、直接的なかかわりはなくとも「社会的な親」として、納税や消費で支えていければいいんじゃないでしょうか?

20世紀に入って異常に増えた今の人口は、100年くらいの年月かけて是正され、大体今の人口の半分以下に落ち着きます。その頃には、人口ピラミッドも是正されていることでしょう。

少子化や人口減少、大騒ぎするような問題ではありません。


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荒川和久/「結婚滅亡」著者

長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。

荒川和久/「結婚滅亡」著者
11/13に新刊「結婚滅亡」が発売です!他著書「ソロエコノミーの襲来」 「超ソロ社会」「結婚しない男たち」等。東洋経済等でコラム執筆したり、テレビ・新聞によく出ます。独身研究家として活動させていただいてます。メディア出演・執筆・対談・講演のご依頼はFacebookメッセージから。