携帯乗り換えの促進で料金は安くなるのか?
こんにちは。電脳コラムニストの村上です。
菅内閣になり、矢継ぎ早に携帯事業者への値下げ圧力が高まっています。首相は第1次安倍内閣時代に総務大臣を務めていたことからこの領域に知見が深く、官房長官時代から「携帯4割下げ」に言及していたことからも自信のほどが伺えます。
総務省は携帯料金の引き下げに向けた競争を促すため、携帯会社を乗り換えやすくする。メールは元のアドレスを残して移転先に転送する仕組みを整備するよう大手各社に要請する方針だ。遠隔で回線を切り替えられる「eSIM」への対応も求める。過剰な囲い込みを防ぎ、利用者の自由な選択を後押しする。10月中にもまとめる携帯値下げの新たな政策案に盛り込む。
「え?ここなの?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
スマートフォン・携帯電話を買い替えるタイミングで、契約している通信会社の乗り換えを検討するか尋ねたところ「検討すると思う」は16.5%で、「多少検討すると思う」も含め、前向きな意向を示したのは4割弱となった。
たしかに4割弱の方は携帯電話を買い換えるタイミングで乗り換えを検討しているようです。
(出所:MCA、19年7月調査結果より抜粋)
「通信料金が安くなりそう」というのが1番の理由で、次に「端末が安く購入できそう」が続きます。
(出所:MCA、19年7月調査結果より抜粋)
乗り換えを検討しなかった6割の方は「現状に満足」「手間がかかる」が半数を占めており、「メールアドレスを変更したくない」については2割ほどとなっています。手数料についても同様です。
昨日、さらに追加で以下のような施策の検討が表明されました。
武田良太総務相は電話番号を変えずに携帯会社を乗り換える際の手数料について「原則、ゼロ円にする」と表明した。3千円の手数料が携帯会社の変更を停滞させ、料金の競争を阻むとされてきた。ネットで申し込んだ際は無料にする方針だ。21日に日本経済新聞のインタビューに答えた。
乗り換えにあたり一番重要なのは、料金が下がること。そして、端末が安く買えることです。一連の施策につながったロジックを想像すると、乗り換えをしやすくすることで事業者間の競争が激しくなり、結果料金プランが値下げされるだろうと見込んでいるのでしょう。しかし、3社寡占の現状においてはこれまで通りひたすら「横並び」の料金に留まるでしょうし、扱っている機種もiPhoneがメインで代わり映えしないことを考えると、すぐに流動性が高まることは難しいでしょう。
劇的に下げるためには、野心的な新規プレイヤーによる価格破壊が最も効果的です。ブロードバンドインターネット(ADSL)のときには、ソフトバンクがその役割を果たしました。以下の記事では、インドの事例を紹介しています。
現在の日本で言えば、その役割は楽天モバイルに期待されるところでしょう。また、政府がMVNOに一切言及していないのは不思議でなりません。欧州ではMVNOを促進する行政指導が度々行われています。競争を促進するためには、新規プレイヤーが大胆な戦略を取りうる市場環境を行政が後押しすることが重要でしょう。
また、2019年10月に改正電気通信事業法が施行され、いわゆる携帯電話の通信と端末料金の完全分離が開始されました。この中で通信端末バンドルにより行われていた「実質0円」のような派手な値引きはできず、その上限が2万円に抑えられることになりました。
しかし、先に挙げたリサーチ結果においても「端末が安く買えそう」というのはキャリアを乗り換える際の大きな理由になるものです。不透明な抱合せ販売は料金プランの透明性を高める上で大切ですが、事業者努力による端末の割引については規制を撤廃してはどうでしょうか。
今後のより消費者の目線に立った、より実効性のある施策を期待したいところです。
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タイトル画像提供:freeangle / PIXTA(ピクスタ)
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