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『パーフェクト・デイズ』と国際コラボレーション

ヴィム・ヴェンダース監督の『パーフェクト・デイズ』をミラノの映画館で観ました。

イタリア人の友人に「1回目はぜんぜんわからなかった。ストーリー展開があるものと期待していたんだ。2回目は淡々とした日常生活の断片を追うものと分かったけど、ディテールをもっと理解したいから一緒に観て欲しい」と誘われたのです。

観終わって「年齢を重ねて経験を積み、ヴェンダースの映画を面白いと思えるようになって良かった。その昔、『パリ テキサス』がさっぱりわからなかったからね」と友人と歩きながら冗談っぽく話しました。

「あの時の理解度は10点満点で3点、今回は8点くらいは言ったかな」と。言うまでもなく、柄本時生が演じるタカシの真似ですが・・・。

日本に何度も滞在したことのある友人でも、あのシーンは解釈しづらいだろう、と思えたところも何点か取り上げて説明しました。

率直に言えば、面白い映画です。ただ、渋谷のジェントリフィケーションも描かれているなかで、手放しで公に賞賛しづらいのがぼくの迷うところです。それを彼にも正直に言いました。

そして、大学の先生である彼に一つの提案をしました。

今、君の2人の女子学生が日本にインターンで滞在しているわけだが、彼女たちと、彼女たちがつきあっている地場産業の企業経営者たちに、この映画を観てもらい、国際的コミュニケーションのあり方を議論させたらどうだろう。幸いにも台詞が少ないのだから、ちょうど良いはず。

更に言うなら、2003年のソフィア・コッポラ監督『ロスト・イン・トランスレーション』も東京を舞台に、暗黙のコミュニケーションで成り立つ「ハイコンテクスト文化」のありようを見せつけているので、この2つの作品を題材に議論するともっと良いかもしれない、とも付け加えました。

この2作品は「日本、不思議。だから日本に滞在して経験したい!」との人たちの旅心を刺激し、インバウンド促進に貢献するはずです(実際、『ロスト・イン・トランスレーション』はそのような役割を既に果たしています)。

地政学的な危機感が各地に伝播するなか、欧州の人も日本はそこの埒外にあるような気に「なんとなく」なっているような状況を後押しもするでしょう。また、日本株の上昇も日本推しをバックアップします。

ただ、ここにパラドックスがあります。

日本の多くの分野をみていて共通に感じる不足点は、ただ一つです。国際的コラボレーションの圧倒的な欠如です。それ以外については、凹凸あってしかるべきと思えるのですが、この国際的コラボレーションの欠落だけは「それでも、いいじゃない」とは言い難いです。

ところが、前述の「不思議日本」認知の加速的高まりは、同時に国際的コラボレーションの推進にブレーキをかけます。だからこそ、上記の2つの映画から国際的コラボレーションの道を探るヒントを探ったら良いのでは?と思うのです。

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冒頭の写真はミラノの王宮で開催されている「エル・グレコ展」の展示作品です。1500年代、ヴェネツィア共和国統治下のギリシャ・クレタ島に生まれたエル・グレコはヴェネツィアで絵画の修行をしました。そこで当時のベネツィア派、それからローマではミケランジェロから多くの影響を受けます。その後、スペインのトレドに移り、多くの作品を残しました。

今回の王宮の展覧会では「イタリアとの対話」とのタイトルで、イタリアの画家の作品とエル・グレコの作品の2つを並べて展示し、国際的コラボレーションがアートヒストリーをつくったことを示していました。


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