マカロンがクレジットカードのマークに見えてくる話
マカロンは好きですか?
私はたまの贅沢でローソンの「あまおう苺マカロン」を買ってしまう方ですが、隣のデスク(40代男性)に聞いたところ「好きだけど自分のためには買わないよね」とのこと。相容れないように思えて、実は「高級品」という認識では一致しています。
高級で特別なイメージはブランディングにも生かせるようです。米クレジットカード大手のマスターカードが、シンボルマークと同じ色のマカロンを作ったという事例が日経電子版の記事に紹介されています。
こちらはスタートアップの情報をまとめたアメリカのデータサービス「CB Insights」が作成したレポートの邦訳記事です。
読んでみると、マスターカードがこのような取り組みを始めたのは、単に丸いシンボルがマカロンに似ているからではなさそうだということがわかります。
理由1. 顧客体験が向上する
マスターカードがフランスの有名パティスリー、ラデュレと提携して作ったマカロンの名前はPassion(情熱)とOptimism(楽観)。「プライスレスの味」というコンセプトも好奇心をそそられ、食べてみたくなります。
ただし買えるのはマスターカードを持っている人のみ。こうして所有者のロイヤルティーを高めることで、カードのブランディングに活用する狙いがあるようです(詳しくはマスターカードのプレスリリースを参照)。
理由2.五感とセットだと印象に残りやすい
マカロンを作ったマスターカードにメリットはあるのでしょうか。実はただ顧客に満足してもらうだけでなく、次も使い続けてもらうシカケが施されています。カギは「五感に訴えること」です。
香りは記憶や感情を呼び起こす強力なきっかけになることが示されている。国際会議「グローバル・ウェルネス・サミット」では、買い物客は心地よい香りのする場所では15分長く滞在することが報告された。これは購入額が増えることを意味する。(同記事から)
味覚に訴える戦略をとったマスターカード。「期待もしていなかったことの方が長く印象に残る場合がある」と同社の最高マーケティング&コミュニケーション責任者(CMO)は語っています。
「Passion」と「Optimism」を食べた顧客は、マカロンを食べるたび、見るたびにマスターカードのことを思い出して使ってしまう――。あくまで想像ですが、マカロンがマスターカードのマークに見えてくる、そんな青写真を描いているのかもしれません。
CB Insightsでは海外の事例を紹介しています
先の記事ではレクサスやファストフードの取り組みなど、五感に訴えるマーケティングの事例がいくつか紹介されています。
日経の新しいコーナー「スタートアップOn The Globe」ではCB Insightsのほか、中国の36Kr、シンガポールのDeal Street Asiaの翻訳記事を掲載しています(月~木更新)。世界のトレンドを知りたい方はぜひ読んでみてください。
(日本経済新聞社デジタル編成ユニット 渡部加奈子)