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子育て支援すれば出生数が増えるという考え方が全く的外れなワケ

「子育て支援しても少子化は解消されない」ということはずっと言い続けてきてますが、オールドメディアの新聞はあまり取り上げない。新聞の主顧客が昭和世代なのだから仕方ないと思っていましたが、日経のこの記事はちゃんと事実認識しているうえで現実的な見解を述べていて、日経にも事実を語れる人がいるのだなと安心しました。

一方、政府は相変わらず茶番を演じています。

このおじさんも「少子化に歯止めがかけられる」とは本気で思っていないのに、よくもまあいつもいつも空気を吐くように嘘がつけるものです。政治家とはそういうものなんでしょう。

さて、政治家だけじゃなく、メディアも企業も相変わらず誰に忖度しているか、わけのわからない報道をしています。

"「子どもさらに欲しい」過去最高"とかいうけど、所詮3割です。逆に見れば、7割はもう欲しくないという回答なんだけどね。

これは、0-6歳の子を持つ既婚男女に聞いているので、大体2人は産んでいる夫婦になります。まあ、3人目はなかなか厳しいですよ。経済的にも精神的にも、特に夫のね。

しかも、明治安田生命のソースから男女別でみると、「さらに欲しい」と回答した夫は21.6%しかいないのに、妻は39.5%と大きく乖離。このあたりにいろいろ火種があるような気がします。

あと、このアンケートに回答している妻は40%が専業主婦です。つまり、専業主婦している4割の妻だけが「まだまだ子どもがほしい」と言ってると読み取ることもできるわけで、そうした状況を鑑みると、以前僕が書いたこの記事の妥当性もあがるというものです。

何度も言うように、少子化は母親が子どもを産まないから起きた問題ではありません。結婚して子を産んでいるお母さんは、昔も今も平均して2人の子どもを産んでいます。少子化になっているのは、母親が産まないからではなく、そもそも母親となる女性の数が減少しているからに過ぎないのです。つまり、「少子化ではなく少母化」が問題

それについては、日本で一番最初にこの事実に着目して「少母化」という言葉を作ったのが僕です。こちらでも記事を書いて、650を超えるスキ数を見てもわかる通り、たくさんの方から共感を得ました。特にツイッターなどではお母さんたちからの共感が多かった。

東洋経済でも違う統計によって「少母化」のエビデンスを説明しています。こちらもかなりの方に読まれました。ありがとうございます。


これに対して、当然毎度のことながら批判的なことを言う輩もいるわけで、まあ不快だからいろいろ言いたいのでしょうけど、まあそうやってコバンザメ商法したい人はご自由にどうぞ。

少母化を否定する輩が必ず出してくる統計がこちらです。僕も活用している出生動向基本調査ですが、こちらの夫婦が生む子ども数を見れば、明らかに近年になって子ども数0人と1人が増えているじゃないか、と。一人っ子率が高まっているということは少母化でなく、やっぱり少子化じゃないかと、ドヤ顔してくるわけです。

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統計の見方をご存じないのでしょうか?

これ対象は、「結婚持続期間15-19年」の夫婦と明記してあります。もっと厳密に言うと、結婚持続期間15-19年でかつ45-50歳の妻限定です。

これって日本全体の夫婦の子ども数を表していると言えますか?言えません。一体今どれだけの夫婦が離婚していると思っているのですか?離婚の大半は結婚後5年以内です。結婚持続15年以上だけが子どものいる夫婦ではありません。初婚して、子どもを産み、離婚してシングルマザーとして子育てしている母親もいます。離婚して再婚して子どもを産み育てている母親だっています。そういう母親を除外して、一体この統計のどこに意味があるの?

たとえば、離婚した女性に子どもがいる率がどれくらいか知っていますか?25~39歳までの離婚女性の約75%が子どもがいる状態での離婚です。逆に言えば、離婚した女性はほとんどが子連れだということです。

円満に15年以上も連れ添った夫婦だけの数字を見て、わかったような顔している方が恥ずかしい。

百歩譲って、意味があったというなら、1972年まで特殊離婚率が10%未満だった期間まででしょう。ちなみに直近2019年の特殊離婚率は35%です。離婚率が3.5倍にも増加しているのに、その事実を無視して比較する意味は全くない。

結婚持続しているかいないかは関係なく、現在の配偶関係がどうかでなく、単純に一人の母親が何人目の子を産んでいるかという人口動態調査の統計を見れば一目瞭然です。1960年代から、それこそ1970年代の第二次ベビーブーム期と比べても、母親が産んでいる子どもの数の比率はほぼ50-60年間変わっていない。

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少母化の問題は、むろん未婚化です。結婚する女性の数(再婚ではなく初婚数)が減ったからです。

だからといって、初婚数が増えればこの問題が解決するわけじゃありません。現在結婚適齢期世代は、1990年代に産まれています。実は本来ならば、第三次ベビーブームが起きる予定の世代でした。しかし、それは起きませんでした。それが今に続く出生数連続減少です。

これが何を意味するかというと、今後当分の間ベビーブームは来ないということです。若い世代の人口はどんどん減ります。それは結婚数が減るということです。結婚数が減れば自動的に出生数は減ります

出生数の多かった1970年と2019年を比べると、年間100万人以上も出生数は減っています。しかし、そのうちの▲46万人分は第一子の減少です。第二子の減少分▲43万人と合わせると▲90万人、つまり出生数減少の9割の原因は第一子・第二子の減少です。グラフを見ていただければわかる通り、案外第三子以降はそれほど減ってはいません。

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女性は、結婚すれば2人以上の子どもは産みます。しかし、結婚しなければ0人。これが少子化の正体であり、つまりは母になる女性の数が減ったという「少母化」なのです。

ちなみに、婚姻数の減少も同時期比較でこの第一子減少分の▲46万組です。ぴったり数字が符号しますね。

だったら、今結婚している夫婦に3人目、4人目を産んでもらえばいいという乱暴な意見も出ますが、実際、3人以上の子を産んでいる夫婦は、1960-1970年代と同等の比率で産んでいます。産みたい夫婦は産むのです。

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仮に子ども一人にいくらという金銭インセンティブをつけたところで、子どもが増えるとは思えないし、金目当てで子どもを産むような親があっては子が可哀相だ。産んだ子に対する支援は必要だが、産んだらいくら金ををやるというやり方は賛成できない。

結論。母親となるべき女性の絶対数が今後減少し続ける中、少母化を原因とする少子化は、誰が政権取ろうが、どんな政策をしようが、絶対に解決できない問題なのです。だって結婚は増えないから。そしてたとえ今後全員結婚する皆婚社会が到来したとしても、若者の絶対人口が少ないので解決しません。

少子化の中でどうするかを考えた方がいいです。もっといえば、少なくとも産まれてきた子どもは、増加する母子家庭の特に貧困家庭の事情も鑑み、親の自助だけではなく社会として大切に育てていく(間接的にでも)仕組みが必要です。少子化対策とは別に。

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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。