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変えられないことで思い悩まない 〜世阿弥で学ぶ人生の指針

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

3月と言えば卒業や異動など、新生活シーズンとも言われる身の回りの環境の変化が多い時期です。引っ越しや転職など、人間関係や生活の基盤にも影響が出る場合もあります。自分自身に変化はなくても、例えば上司が変わったり同僚が異動・転職したりして、知らぬ間に変化に巻き込まれていることも少なくありません。

個人的にこの1年は、公私ともども周辺環境の変化に翻弄された年でした。会社内での大きな変化や介護など、まさに勝手に変化に巻き込まれるパターンでした。これまでも数多くの変化を乗り越えてきましたし、そもそも楽観的な性格であることも幸いしてなんとかなってきましたが、今回はなかなかに堪えるものがありました。

このようなときはどうするか。わたしは古典に触れるようにしています。そもそも私なんぞが悩むことなどはおそらく先人たちが必ず経験していることだろうし、そもそも人間については古代ギリシャ時代を例にあげるまでもなく2000年以上人々が議論し続けているわけです。なのでその糸口を過去に求めるのは自然なことだろうと考えています。

よって今の自分を構成する価値観は古典に影響されていることが多く、以前その一部を本の要約サービス flier(フライヤー)さんのインタビューで紹介しました。

最近では今一度世阿弥の思考を学び直しています。世阿弥と言えば能を大成させた人物として知られ、『花鏡』や『風姿花伝』などの著者としても広く知られています。むしろ、その中の言葉「初心忘るべからず」「秘すれば花」のほうが有名かもしれませんね。芸術論として見られることが多いこれらの本ですが、人生とどう向き合うのか、生き残りの戦略ついても多くの示唆に富む内容です。

ジャパネットたかたの創業者である高田明さんも魅了されているとのことです。40歳という遅咲きのスタートであった彼の成功事例と世阿弥の教えをあわせて読むことで、その内容がぐっと身近に感じます。

振り返ってみれば年齢を重ねてきた分、経営者としてはもちろん、夫として父としていろいろな経験をしてきました。いいこともあれば、悪いこともある。人生は山あり谷ありです。

自分の実力や努力とは関係なく、何をやってもうまくいくときもあれば、どんなに手を尽くしても駄目なときもあるものです。みなさんもそんな経験を一度はしているのではないでしょうか。

世阿弥はそれを「男時(おどき)」「女時(めどき)」と表現しました。『風姿花伝』の中で、こう説明しています。

「また、時分(じぶん)にも恐るべし。去年(こぞ)盛(さか)りあらば、今年は花なかるべきことを知るべし。時の間(ま)にも、男時・女時とてあるべし。いかにすれども、能にも、よき時あれば、かならず悪きことまたあるべし。これ、力なき因果なり」

日経電子版

自分で変えられることに集中する。常に未熟であることを忘れない(初心忘るべからず)というのは、変化の激しいときにこそ自分に言い聞かせなくてはならないなと思います。

吉田兼好は『徒然草』の中で「世は定めなきこそいみじけれ」と言っています。永遠不変ではないからこそ、いまここに全力を尽くそうという心持ちが大切ですね。


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タイトル画像提供:コン太くん / PIXTA(ピクスタ)

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