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食の流行はコモディティからスペシャルティへ

大量生産大量消費の時代から、モノや素材にこだわる消費の時代にさしかかっていると感じています。特にチョコレートに近い飲食はコモディティからスペシャルティへの流れが各業界で明確に起こっており、今回はその流れがなぜおこったのかと、各業界の事例を私の知っている範囲でまとめます。ブランドの立上や運営、ものづくりを始めようとしている方々に参考になれば幸いです。

なぜ今コモディティからスペシャルティへ流れがきているのか?

情報

コモディティからスペシャルティへの流れに大きな影響を与えるのが、インターネットの発達によって、情報の非対称性が限りなく無くなっていく事です。この時代において、食においてのブランドつくり、ものづくりを考える際に以下2つの点が影響をうけると思います。

①「個々人の好き嫌い」が影響を与える
画一的な権威主義から、個々人の多様性からくる好き嫌いに依存したブランドやものづくりが主流になっていきます。

②「素材造り手」の情報が影響を与える
情報の非対称性が無くなっていくことは、食においては、どんな素材を使っているのか誰がつくっているのか、という良い素材良い造り手という情報へのリーチが容易になっていきます。

情報の非対称性がなくなる時代において、食を取り巻く環境は少しずつ、コモディティからスペシャルティへの流れが明確になっていくのではないかと思います。

チョコレートもスペシャルティの時代へ

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その流れの中で立ち上がったのが、チョコレート業界でいうと、Bean to Barチョコレートという新しい製造スタイルです。私の経営しているクラフトチョコレートブランドのMinimal - Bean to Bar Chocolate -(ミニマル)もチョコレートの原材料であるカカオ豆にこだわり、世界中の農園に直接足を運び、良質な素材(カカオ豆)を自ら選んでいます。そして、そのカカオ豆に顔の見える職人が手仕事で丁寧にチョコレートを造っています

とてもありがたいですし、手前味噌な言い方になってしまい恐縮ですが、Minimalはチョコレートのブランドなので、チョコレートとして美味しいのは大前提として、そんな良い素材と顔の見える造り手という点がお客さんに選んで頂ける理由となっていると感じています。

俯瞰してみると、コモディティチョコレートのみからスペシャルティ・クラフトのチョコレートブランドが業界として成立するという流れが起こりました。

このコモディティからスペシャルティへの流れはチョコレート業界は他の分野に比べるとむしろ後発と言えます。

私の知る限りですが、他の分野の事例を以下見て行きたいと思います。

事例1:スペシャルティコーヒー

1990年代後半~2000年代前半にアメリカを中心に世界でスペシャルティーコーヒーの流れが加速したと言われています。スペシャルティコーヒーとは何かは日本スペシャルティコーヒー協会のHPから引用した以下文章をご覧下さい。

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※出典:日本スペシャルティコーヒー協会のHP

何が起こったかをとても簡潔に要約すると、コーヒーにおけるコモディティは苦味を軸にしていたところに、コーヒーという果実が本来持っている風味に着目していき、それに合わせた生産方法や焙煎、抽出方法がどんどん開発されて、スペシャルティコーヒーは酸味を基軸にしたフルーティな飲み物に定義を変えていったといえると思います。

この流れは「素材造り手」の結晶であるスペシャルティコーヒーという新しい流れが消費者に支持されていったという事です。

私個人的には2010年にロサンゼルスでスペシャルティコーヒーの御三家のインテリジェンシアのエチオピアのシングルオリジンコーヒーを飲んだ時の衝撃は忘れられません。
私がそれまで知っていた苦味主体のコーヒーとは思えないほどキレイな酸味で飲んだ時に頭が混乱したのを覚えています笑

そのくらいコモディティしか知らない消費者にとってスペシャルティとは別の世界を開いてくれるものだと思います。

今チョコレートをやっているのはあの時があるからかもしれません。

日本スペシャルティコーヒー協会の行ったスペシャルティコーヒー市場調査2018によると、日本のコーヒー輸入量の約10%がスペシャルティコーヒー豆であったとのことです。

2000年前後から20年かけて、輸入の10%を越えたと言うことは、スペシャルティコーヒー市場が消費者に少しずつ認知され、新しい流れとして定着しつつあると言えると思います。

事例2:ナチュールワイン

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ワインの歴史はとても長く、簡単に語れるものではありませんが、近年ではナチュールワインと呼ばれるものを好む愛飲家が増えてきています。市場でもその価値が評価され盛り上がりを見せています。

ナチュールワインの定義はとても難しいと言われているのですが、合成農薬や化学肥料を使用せずにブドウ栽培をおこなうことはもちろん、醸造においても酵母添加や補糖・補酸、添加物の使用など人工的な行為を一切排除する、という考えのもとから造られているワインがそれに当たると言われています。

簡潔にいうと、その土地で培われたブドウのをそのまま表現する卓越した技術をもった生産者が作り出すオリジナルの風味をもったワインという感じでしょうか。これも同じく「素材造り手」の結晶としてワインが消費者に愛されています

詳しくはないので、正確ではないのですが、日本では、祥瑞やグレープ・ガンボの勝山さんがナチュールワインを紹介していったのが30年前くらいではないでしょうか。

そこから30年の流れの中で、日本中にナチュールワインを楽しめるお店がとても増えました。そして、多くの消費者に飲まれるようになってきたと思います。その流れは近年加速していると感じます

Minimal店舗周辺で、個人的にもよく行くナチュールワインの美味しいお店を上げるときりがありません。

アヒルストア(代々木公園)
ル・キャバレー(代々木公園)
PATH(代々木公園)
赤い部屋(表参道)
酒井商店(渋谷)
ビストロロジウラ(渋谷)
ピニョン(神泉)

など、思いつく限りでもまだまだあります。そして、地方に出張した際もナチュールワインの美味しいお店を探すと必ず何軒かヒットするようになりました。

その流れが来ている事の証左として決定的だと個人的に思った事象として、2020年にINAO(フランス原産地名呼称委員会)が、ヴァン・ナチュールにおける公式な定義を認可したことです。

これまで定義がばらばらだったり、曖昧であったナチュールワインに定義されたと言うことはその流れが決定的になったと言うことなんだと思います。

事例3:日本酒

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Minimalは2020年バレンタインシーズンに秋田の銘酒「新政酒造」とコラボレーションして日本酒を使った生チョコレートを造らせて頂きました。このコラボレーションは開始と同時に瞬く間に売れてしまうほど大反響を頂きました。

新政酒造を例にとると日本酒業界にもコモディティからスペシャルティへの流れが見て取れると思います。

日本酒においても2000年代当初はカプロン酸エチル(吟醸酒の代表的な香気成分。りんごなどを想起させるフルーティーな香り)の高生産性酵母の全盛期だったようです。人気酒がどこでも行っている画一的な酒造りでは無く、新政酒造は2010年前後から、全銘柄を元々新政酒造で発見された土着酵母である6号酵母にかえます。そして、多くの人気銘柄が兵庫県産の山田錦が主流であった酒米も全銘柄で秋田県産の酒米のみに買えたお酒造りを始めます。素材である酒米にもテロワールを求めたのです。

造り方も多くの蔵が採用する「速醸酛造り」から手間暇かかる「生酛造り」に変えて行きます。生酛は乳酸の添加を一切行わず、自然発生する菌の遷移を利用して、最終的に酵母のみを繁殖させて造るため、速醸酛に比べて、時間も労力もかなり要する、まさに造り手の技術が求められる製法に変えて行ったのです。

これはワインのナチュール製法に近しい造り方といえるのではないでしょうか。ワインと日本酒において抽象度を上げてみると、奇しくも同じ流れが起こったのかも知れません。

その新政酒造が造るお酒はこれまでの日本酒とは一線画して唯一無二の味わいとして全国に熱狂的なファンをつくっていきました。

個人的な感想ですが、新政のお酒を飲むと、「これが本当に日本酒なのか。」と思えるほど、きれいな酸味を感じます。それでいて酸味が主体ながらもしっかりと米の旨味・甘味を感じてまるで白ワインを飲んでいるかのような感覚になります

Minimalがなぜ新政のお酒を活かした生チョコレートをつくる事ができたのか。それは、日本酒に本来であれば感じる事が少ない、この美しい酸味があったからです。その酸味はMinimalのスペシャルティチョコレートにも共通する要素でありました。

日本酒でも「素材造り手」が熱狂的なファンを生んで、伝統的な業界に新しい流れが生まれています

共通点は素材の本来の風味をいかに引き出すか

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ここまで見てきた事例からも、食の流行は確実にコモディティからスペシャルティへのと流れています

当然事例に上げていないところでも、クラフトビールの流れ然り、クラフトジンの流れ然りと、成り立ちや速度は違えど、食のトレンドは確実にスペシャルティを求める方向に向かっています。

コモディティからスペシャルティの流れとは、消費者であるお客さんが、

「良い素材を求め、顔の見える造り手がこだわって造った(大量生産ではない)美味しいものが食べたい」という嗜好性なのだと思います。

まとめると、

▼情報の非対称性がなくなり、個々人の好き嫌いとマッチした情報を得ることができるようになった。

▼画一的なコモディティではなく、「素材✕造り手」のこだわりへの情報を欲し、ものを選び食べたいという消費者が増えた。

▼その結果、チョコレートやコーヒー、ワイン、日本酒などで、コモディティからスペシャルティへと嗜好性が変化しつつある。

と言うことが起こっていると言うことではないでしょうか。

これから食のブランドを始める方やものづくりを始める方、そして、現在進行形で行っている方々にとって、コモディティからスペシャルティへの流れをきちんと押させておくことは大事な観点ではないでしょうか。

そして、コモディティからスペシャルティという言葉は業界においてはそれぞれ構成する要素は変わってくると思います。その解像度を上げていきながら、自ブランドとしてどこを差別化要素や競争優位性にしていくか、研鑽していくかを考える事が重要です。

私自身も他業界や偉大な先人達に学びながら、Minimalのチョコレートが100年続き、新しいスペシャルティ・クラフトチョコレートの文化を担っていけるように努力したいと思います。

Minimalのチョコレート&SNS

ぜひスペシャルティチョコレートという新しい分野を切り開こうとしてるMinimalのチョコレートを試してみて下さい。こだわりの職人の手仕事で「素材」であるカカオ豆の風味とザクザクした食感をダイレクトお楽しみ頂けます!

そして、今の時期は父の日への贈り物も充実しておりますので、ぜひギフトにもご検討下さい。

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(これはぜひご検討頂きたい:21年6月13日~予約開始)

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山下貴嗣_Minimalチョコレート
最後までお読み頂きましてありがとうございます。このnoteは私がブランド経営やモノづくりを行う中で悩み失敗した中からのリアルな学びです。何かお役に立てたら嬉しいです。良い気づきや学びがあれば投げ銭的にサポートして頂ければ喜びます、全てMinimalの活動に使いたいと思います^_^