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世界でもっとも多い国家体制は、民主政権ではなく独裁政権

米国に、国際協調型のバイデン政権が誕生してから3カ月が経過し、「民主主義陣営専制主義陣営」の競合する構えが明確になってきました。

各陣営の状況ですが、以前は過半数を確保していた民主政権は凋落を続けており、世界人口78億人の半分以上が専制政権下に暮らすようになっています。

香港やミャンマーでは、民主主義を守るために、沢山の人が言葉の通り命を懸けて戦っています。自由は、命に足る重さがあるということでしょう。

しかし、なぜ現在進行形で民主政治の政権が減少しているのでしょうか。

政治体制と経済発展のデカップリング

この20年間、中国やベトナムなど専制主義国家の経済発展は、民主主義国家を凌駕しています。

1900年初頭にヘンリー・フォードが確立した工業産業を立ち上げる大量生産の方法論であるフォーディズムは、100年の時を経て成熟しました。グローバル市場が出現した現代において、安い労働力と一定の秩序があれば、政治体制の如何に関わらず、フォーディズムを用いて経済発展が可能です。

2000年代までは、民主主義と経済発展はセットで考えられていましたが、現在は政治体制と経済発展は切り離して考えざるを得なくなっています。

自由民主主義の推進を支える一つの根拠であった、経済発展のための民主主義という論理は使えなくなっています。

自由競争体制における不満の爆発

また、貧富の差を表すジニ係数は、上昇傾向が続いています。人は絶対的な富ではなく、相対的な富に敏感な特性を持っているため、格差の拡大は社会全体の不満や憎悪を上昇させていきます。

ジニ

民主主義は経済発展に貢献するかどうか不確かで、社会の不満を増加させるシステムのように見えます。

2016年に誕生した強権的なトランプ大統領は、不満を抱える低所得者層から絶大な支持を得ていました。ナチス・ドイツは、度重なる敗戦の負担から生活苦に喘ぐドイツ国民の不満に基づいて、民主的に選ばれた国家社会主義ドイツ労働者党が母体です。

社会に蓄積した不満が閾値を超えると、極端な政治体制が生まれる傾向が読み取れます。

格差はなぜ広がるのか

社会現象にエントロピー増大則が当てはまるとすると、自由と平等は確実に矛盾します。自由に活動している以上、偏りが発生するのが自然で、平等な状態が保たれることはあり得ません。

物理法則を持ち出さなくとも、所得の成り立ちを考えると同様の結論になります。

一例として、所得水準は教育水準と大きな相関があります。個々人の得意不得意には、生まれつきのばらつきが存在します。結果的に勉強の出来不出来も、まばらになるのが必然です。さらに、勉強の出来不出来は環境にも依存しています。教育水準の高い両親は子どもの学力を重視する傾向にあり、より良い学習環境を整備します。

因果が積み重なった階層構造をつくっており、現実には貧富の偏り、格差はより強化されていきます。つまり、自由な競争状況が長年続くと貧富の差は広がり続けます。

博愛に基づき幸福の継続する均衡点を探る

貧富の差の解決策として、全体主義を取り入れれば良いというわけではありません。専制政治は、人々の幸福の観点で、より多くの課題を抱えていることが、論理的にも、歴史的にも証明されています。

また、倫理観に基づいて平等を叫べば、格差が是正されるわけでもありません。それで解決するのなら、既に状況は健全化されているはずです。

世界は「陽極まりて陰となり、陰極まりて陽になる」の転換点にあり、民主主義の行きつく先として専制政権がどんどん誕生しています。自由の維持には、まったなしの状態と言えます。

状況を改善するためには、相矛盾する自由と平等の両立が必要です。どちらかに偏り過ぎてもいけません。税制を強化して平等性を強めるのも、緩めて自由の度合いを高めるのも、行き過ぎるべきではないのです。

みんなの幸せ、博愛のために、均衡点を探る知性が求められています。

そう考えてみて、フランス共和国の標語である「自由・平等・博愛」は、とてもよく考えてあるものだと気づきました。

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遠藤 直紀(ビービット 代表)
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