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今日は大学生のみなさん、特にこれから就活、就職、をしていくという方に向けてアドバイスしていきたいと思います。

昨年と今年は大学に行けなかったり、旅行に行けなかったり、コロナの影響で様々なことが制限されたと思います。

このような今までとは違う状況が続く中で大学生のみなさんが一番気になっているのは就職についてではないでしょうか?

ただでさえ就職は人生を決める大きな選択であるのに、コロナ禍の下で企業が採用数を減らしていたり、オンラインでのインターンだったり戸惑いが大きいと思います。

そんな中で頑張って就職した会社が倒産、なんてこと想像したくもないですよね。実際問題としては、企業倒産は、コロナ禍の政府支援などのおかげで低水準に抑えられてはいます。ただ、自分の会社が危機的な状況に陥っていても、若手社員はそのサインに気付けないことも多いです。そんなことを避けるためにも、今日は企業が倒産するまでにたどる段階についてお伝えしたいと思います。


【毎年山ほど企業は倒産している】

ではまず企業の倒産はどれくらい起こっているのかですが、ここ10年で創業または設立された事業者(法人・個人事業主)は約118万7000件あります。それに対し、ここ10年で倒産(法的整理)した事業者は約9万2000件です。

これは1ヶ月で考えると、だいたい平均で700件から800件くらいになります。想像より多く感じているのではないでしょうか。

年間だと、昨年の倒産企業数は8354件です。リーマン・ショックのあった2008年で、だいたい年間1万2000件くらいでした。知らないところで実は倒産が毎日のように起きているのです。

では、そもそも倒産の状態とはどんなものか、ざっと理解していただこうと思います。
聞きなれない言葉が多く、少し専門的な話になるので、あまり深く知らなくてもいいという方は聞き流していただいて結構です。

倒産には、裁判所の管轄下で行う「法的整理」と債権者同士が話し合って行う「私的整理」があります。

このうち、「法的整理」にはまず、清算型の「破産」と「特別清算」があります。

現在起こっている倒産は「破産」が約9割を占めています。

これは個人・法人を問わず申し立てできますが債務超過もしくは支払不能の状態であることが条件です。「破産します」と裁判所に申し立てると、残った財産は債権者に公平に配当され、その後会社は完全になくなります。

「特別清算」は解散している株式会社が対象です。破産とは異なり、債権調査・確定の手続きがありません。

清算型以外には再建型といわれる手続きがあります。再建型には「民事再生法」「会社更生法」があります。

「民事再生法」は事業を継続しながらの弁済を目指す手続きです。

「会社更生法」の例では、JAL(日本航空)が2010年に「会社更生法」の適用を申請し、再建したものがあります。会社更生法は事業規模が大きく社会的になくなったら困るような会社に対して行われることが多い手続きです。

帝国データバンクの倒産の集計では、この4種類の法的整理を対象としています。倒産にも様々な種類があるのです。


【着物レンタル「はれのひ」倒産事件】

この事件は有名ですね。知っている方も多いとは思いますが、これは振袖のレンタルや販売、写真撮影を手がけていた業者「はれのひ」が、2018年の成人式当日に突然複数の店舗を閉鎖し、予約をしてた多くの新成人が振袖を着ることができないという事態が発生したというものです。

その後社長は詐欺罪で実刑判決を受けました。会社は破産し、負債総額は10億円以上にもなりました。

会社のデータをよく見ると、店舗数を急速に増やしていて、急拡大した会社だとわかります。店舗を増やしていたら景気のいい会社だと感じますが、実は店舗を増やす分、設備投資にお金がかかってるのです。

当たり前ですが、増やした店舗にお客さんが入らなければ、採算が取れません。お金を借りて設備投資したのに、借入金を返せなくなります。「はれのひ」は、決算書の賃借対照表(BS)上では、売掛金や棚卸資産をかなり水増ししていました。よくある手口です。

この棚卸資産は、回転期間といって在庫がどのくらいの期間をかけて販売されたかを示す数字が財務分析によって出せるものです。同業種で黒字が出ている企業の回転期間と比較してみて、異常に長かった場合、架空在庫を上乗せしていることが疑われます。

「はれのひ」の場合、同業の貸衣装レンタル業の黒字企業の平均回転期間が0.6カ月であったのに対し、「はれのひ」は約3.52カ月と異常に長かったんです。数字を見ると一目瞭然ですね。


【倒産の段階的予兆ー社内外の変化】

では、倒産の予兆とはどんなものなのでしょうか。まず、「はれのひ」のようなケースでは、事業を急拡大させるなど無理が生じて業績が悪化するということが予兆ですね。設備投資が過大で利益につながらなかったケースです。

他にも見極めるポイントがあります。大切なのは、会社の内部でどのような動きがあるかということです。例えば、トップである役員の人たちが退職し始めることです。その中でも特に経理部門のトップの方がやめるときは要注意です。会社のお金の動きを一番知っている人がやめるというのは大きなサインの一つです。

このように上層部に動きがあると、普段の会議が上司だけで行われることが多くなったり、逆に上司が多く離席していることが多くなります。上層部が慌ただしくなることで、その下の人材が駆り出されるため、上司が頻繁にいなくなるのは会社として大きな変化が起こる合図と捉えられます。
 
こんな感じで嫌な予感がしたら、まず会社に出入りしている人をチェックすることがお勧めです。素性の分からない人が突然役員になったりするのは危ないです。

重役の人事異動があったときはその人の素性について確認するべきです。


もう少し自分に近いところで倒産の予兆が感じられるとすれば、過度な経費削減が言い渡されることです。企業としては当然経費の削減はしたいことです。しかし昨日まであったことが突然廃止されるような過度ことがあれば注意するべきです。

経営改善のため、理不尽なリストラが行われることもあります。

このようなことが何回も続くようだと、同業他社の間で悪い噂が広まっていきます。もちろん全く根も葉もない噂を聞くこともあります。

しかし、「下請業者に対して厳しいコストダウンを強要していた」とかいう話は同業他社の方が詳しいことがあります。このようなときは実はあなたが働いている企業は赤字経営が続いていて、資金繰りが厳しくなっていることが考えられるため、倒産の可能性が非常に高いです。


【悪あがきをする企業に騙されるな!】

そのほか、小売店の「大安売り」のように頻繁にセールを行うようになることも予兆のひとつです。セールをする、ということは、在庫が有り余っていて売りさばきたいのが理由です。

それから「資産売却」もあります。現金が足りないから、自社ビルを売却して現金を手元に残すといった方法が挙げられます。

このような様々な方法で経営を改善しようと試みます。それでも上手くいかないと、赤字が累積して金融機関からの信用も低下して、新たな資金の借り入れが難しくなり、債務者区分が要注意先などに落ちたりします。

そうしたなか、スポンサーが現れて買収されたり、メインバンクが立て直しのための事業計画を見てお金を出す、となると経営改善に戻って、元の状態に戻ることや、赤字経営との間を往復するケースもあります。

どうしようもなくなってくると、支払いの遅れがずっと続くので債権者たちが、担保がついていない物件や資産があるとそこを押さえに行きます。多くの人がそうやって回収しようとすると騒ぎになります。だから裁判所の管理下の状態になるのです。

就活生だと内定取り消しがどの段階で起こるのかが気になりますよね。

ぎりぎりまで会社は実情を隠すと思うので、どの段階とは一概に言えません。

しかし、これもまたご存知の方多いと思いますが、「てるみくらぶ」の場合は2017年3月27日に裁判所から破産手続き開始の決定を受けて、その日に4月入社予定の内定者約50人を集めて内定取り消しの説明をしました。内定者にとってはこんなひどい話ないですよね。

このように就職・転職する直前で騙される前に倒産の予兆に気づくためにも、役員の人事に変な異動がないかであったり、決算資料を見ておかしなところかないかなど、会社の公開情報から得られる情報を客観的に見て判断する必要があります。

いかがだったでしょうか。企業の倒産の予兆についてお話しさせていただきました。他の人と同じように企業を見るのではなく、一歩踏み込んだ視点で企業を見ることで、企業の本当の姿が覗けるのです。また就職してからも様々なサインにいち早く気づき、自分の目でそれを確かめるということが大切です。数字で会社の状態を見たり、上司の動向を見て異変に気付けたりできる人はなかなか少ないです。多方向からものを見るのを忘れずにいて欲しいです。

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