コロナで歪んだ社会をもとに戻すためにはもう後戻りしてはいけない
新型コロナの新規感染者数の発表がない日がいつになったら来るのか?とつぶやいている毎日ですが、増加に転じてしまうとどの報道もトーンがあがってきます。私は増えても減っても東京都内の発熱外来施設としてリアルタイムな現状を逐一ご報告してきましたが、実際に受診されて新型コロナと診断した患者さんの最近の状況は以下のような印象です。要点として数は増えていても高齢者を含む多くの患者さんがふつうのかぜと同じような症状で、一部の方では咽頭痛が強いですが、数日以内に軽減して10日間の療養期間でほぼ全快しています。子どもは2-3日でほぼ全快です。
① 受診者・相談件数・検査陽性率は1月に急増したときと類似している
1月にオミクロン株が国内で確認された頃にも急激に受診者・発熱相談件数・検査陽性率が急増しました。ここ最近は急速に増加していると不安を煽るような報道振りですが、今のところは1月と大差ない印象です。当院での検査陽性率は50-60%程度で1月に増加した頃とほぼ同様です。このあと2月頃から減少傾向に転じましたので、波の高さは異なるもしれませんが時間経過とともに減少に転じるのではないかと推測します。
② ワクチンを3回接種済でも陽性になる方が目立ってきている
3回接種済で陽性となった方の多くは6月頃まではほとんど症状がない(無料検査施設などで陽性)、あるいは上気道症状のみで症状出現日には抗原検査は陰性(PCRは陽性)というような印象でしたが、7月以降は3回接種済でも高熱、症状出現直後から抗原検査で陽性になる方が目立ってきました。3回接種済で陽性になる方のほとんどは2~4月頃に3回目接種を済ませている方で5月以降に接種されたという方で陽性になった方はまだ確認していません。既存ワクチンのオミクロン株に対する発症予防効果は2-3か月でかなり低下することがわかってきましたので、その裏付けにもなっていると考えられます。また免疫をすり抜けると言われている派生型BA.5への置き換わりによるものとも考えられます。
③渡航歴のある日本人の検査陽性者も散見される
これまでは入国時に検疫で検査を行い隔離されていた状況が、6月からワクチン接種歴によっては入国時の検査が免除になったのと待機期間がなくなったことで、自身で検査をして陽性になった方が医療機関を受診する機会が増えたのかもしれません。欧米ではBA.5が主流となっています。
こちらもいくつまで波の数を数えるのか?と都度つぶやいているのですが、再拡大の背景として考えられることをいくつか考えてみました。
①6月末に関東甲信越の梅雨明け以降、猛暑日が続き、エアコン使用による密閉した環境下での飲食機会、マスクなしでの会話機会など、感染が拡がりやすい状況が増えたことによる相乗効果で増加スピードが増した。
②夏バテやエアコンによる体調不良、あるいは一日だけの発熱だったので新型コロナとは考えずに出勤や登校してしまい、マスクなしでの会話機会があったことで知らぬ間に他の人にうつしてしまっている。
③3回接種から2-3か月経過すると発症予防効果が著しく低下することから、集団的な免疫の減弱による拡散。
④屋外ではマスクを外すことにはなっているが、室内での会話の場面までマスクをしなくなることによる基本的感染対策の破綻。 そもそも会話をしなければマスクをする必要性はないのですが、屋外や会話をしていないときにはしっかりとマスクをしているのに会話をするときにマスクを外す方(顎にかける方も同様です)が散見されますが、これでは全く意味がありません。
これから夏休みシーズンを迎え、様々なイベントが3年ぶりに開催される自治体も多いことと思います。私が感染症対策アドバイザーを務める東京都三鷹市からも多くのイベント開催の是非に関するアドバイスを求められましたが、対策を講じた上ですべて「是非とも開催」であり、イベント当日も現場に出向く予定です。さらに先日は千代田区長と今後の対策・展望について協議し、その内容が公式ツイッターに掲載されました。
対策自体はこれまでと変わりはないのですが、現状の背景をしっかりと理解したうえでメリハリのある対策を継続していくことに尽きるという内容です。ウィズコロナとして社会経済活動および不自由のない日常生活を送るためには社会全体に大きく網をかけるような行動制限や緊急事態などを発出することは絶対に避けなければなりません。これまでの経験からメリットよりデメリットが大きくなってしまうこと、そして何よりも子どもたちの学校行事への影響を踏まえてのことです(一保護者としての私見でもあります)。
しばらくは新規感染者数は増加していくでしょうが、個人的には連日の感染者数の報道はきわめて意義が低いと考えます(人数のインパクトにより個々の対策意識向上でブレーキになるかもしれませんが・・)。1月からの経過をみても重症者はそれほど増えず、ピークアウトも特に対策が効いたというよりは自然の流れのようにも感じます。今回BA4, 5とはいってもオミクロンの亜種で多くは軽症者であり、現段階ではBA2.と比べても病原性が高いという確証はありません。従って3万人、5万人になろうが、医療提供体制が整っていれば大きな問題にはならないと考えます。それをカバーするのがだれでも検査ができる体制(民間検査施設やキットの販売など)、有症者の受診体制の整備(地域での医療連携)ですので、やはりそのブレーキとなっている感染症法の見直しはどうしても論点になるだろうと考え1年以上になります。
これまでも感じていたことですが本日の某番組内容に関するつぶやきです。新たなものに対する注意喚起は必要ですが、現段階で詳細不明確な内容を強調し不安を駆り立てるような発言には賛同できません。それが識者であれば社会への影響も大きくなおさらのことであると考えます。
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