その負の感情、SNSにあげるくらいなら紙に書いてポイしよう
名古屋大学の研究によれば、怒りなどの強い感情を紙に書き出し、それをゴミ箱に捨てたりシュレッダーにかけて処分することで、その感情が和らぐことが確認された。この研究では、怒りを書き出した後、その紙を「保持する」群と「捨てる」群を比較した結果、「捨てる」群の怒りが大幅に軽減されたことが明らかになった。この方法は、紙に感情を書き出し、物理的に処分するという行為が、感情を「捨てた」と感じさせ、心理的な解放感をもたらすことを示している。
人間は特質として、抱えきれないほどの大きな感情を持つと、それを外部に吐き出したくなるものである。SNSの登場により、こうした感情の吐き出し口として利用されることが増えているが、感情、特に怒りなどの負の感情をSNSに書き込むことは、必ずしも良い結果を生むとは限らない。SNSは即座に反応が返ってくるため、一時的にはスッキリするかもしれないが、たとえ匿名であっても感情をネット上に晒すことは、自分の日常にも悪影響を及ぼす可能性がある。さらに、SNSの特性として、強い感情を吐き出すと、それに共鳴する似たような価値観の人々が集まってくることで、自分の価値観がSNS上の集団に引きずられるという危険もある。
米国の経営学者デイブ・ローガン氏は、人間の価値観は、自分が属している20人程度のコミュニティの価値観の総和から強く影響を受けると指摘している。SNS上で強い感情を共有すると、その価値観に影響されやすくなる可能性が高く、特に負の感情に基づくコミュニティに所属することで、ネガティブな影響を受け続けるリスクがある。SNSは一度書いたものが拡散されてしまう恐れもあり、その影響は本人の意図を超えて広がることもある。そうした事態を防ぐためにも、紙に感情を書き出して物理的に処分するという方法が、感情を吐き出しつつも自分の中で処理する有効な手段となる。
紙に感情を書いて捨てる行為は、ある意味で教会の懺悔室に似ているともいえる。懺悔室では神に許しを求めるが、この場合は自分の怒りを物理的に処分することで、自分に許しを与え、気持ちを整理するプロセスを体験できる。シュレッダーやゴミ箱に捨てる行為が、その怒りを手放し、精神的な解放感をもたらしてくれるという点で、この方法は非常に効果的である。
特に職場などで強い感情を抱えてしまった場合、同僚に紙に書いている様子を見られるのも避けたいと感じるだろう。そんなときには、健康経営の一環として、トイレに紙を用意しておき、一時的に感情を書き出してトイレに流すことが有効な手段となるだろう。トイレはプライバシーが守られる空間であり、冷静さを取り戻すための時間と場所を提供してくれる。その空間で感情を書き出し、それを物理的に処分することで、職場での負の感情の影響を最小限に抑えられるはずだ。
また、ついつい過激なことをSNSに書いてしまいがちな人にとっても、この方法は役立つだろう。感情が高ぶったときにすぐにSNSに書き込むのではなく、まず紙に書き出し、それを捨てることで感情を整理する。例えば、感情を書き出すための紙とボールペンを鞄に常備し、怒りが生じた際にその感情を書き出し、トイレに流したり、ごみ箱に捨てたりというルーティンを取り入れることで、SNSに負の感情をぶつける衝動を抑えることができる。このようにして、感情を処理するための安全な方法を確立すれば、SNSでの不要なトラブルを避けることができ、自分の生活や仕事にも良い影響を与えるだろう。
怒りなどの強い感情を紙に書き出して物理的に処分するという方法は、感情を一時的に吐き出し、自分の中で処理するための健全な手段である。SNSなどの不特定多数に対する感情の吐露とは異なり、この方法は自己の内面における解放感をもたらし、負の感情が他人や自分自身に悪影響を与えることを防ぐ効果的な手段と言える。
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