「面接官ガチャ」と候補者に言わせない面接官研修のポイント
時折話題になる「高圧的な面接」「圧迫面接」。私自身も転職時にオンライン・オフライン共に遭遇したことがあります。カジュアル面談では朗らかな人事担当者だったのに、一次面接では不機嫌な4人組に囲まれたときは美人局に遭ったような気持ちでした。
下記の記事では「面接官ガチャ」という言葉もありました。「この面接官じゃなければ受かったかもしれないのに」とのことで、面接官を選ぶ仕組みとのことです。入社しても配属ガチャとか案件ガチャとか言うのだろうなと思うと、ハラスメントをするタイプの面接は外す必要がありますが、そこまで候補者に迎合する必要はないのではないかと考えています。
現在、私はレンタルEMとして採用支援の一環として候補者体験改善にも取り組んでいます。この仕事を始めて確証に変わりましたが、下記のような方は「人を選択することに特化した一方通行な圧迫面接」を行う傾向にあります。
自社が有名だったり、面接官以外の誰かが頑張っているため「候補者が勝手に応募してくる」と勘違いできるお膳立てがあり、面接官は偉いと勘違いできている状態
面接官が就職氷河期世代や、就活に失敗した人であり、「圧迫面接しか知らない」状態
今回はこうした事象に対し、どのように対策していくべきかについて面接官研修を念頭にお話していきます。
私が候補者体験に思い入れがある理由
かれこれ採用に関わり始めて12年が経過しますが、最初に担当したポジションは黎明期のマッチングサービスになります。今でこそマッチングサービスは市民権を得ていますが、当時は出会い系事業者との差が認知されていなかったため、大変苦労しました。今でこそ少なくなったと信じていますが「人材紹介会社と契約してお尻を叩けば採用はできる」と思っている人事担当者は、2010年代前半には数多く居られました。
自然に候補者が集まらないどころか、マイナスな事業イメージからスタートするという「採用弱者」を多めに経験したわけですが、企業は「一緒に働けるかどうか」と共に「選ばれる」ことに意識を持つことが採用成功の第一歩だと痛いほどよく分かりました。知らない会社や胡散臭い事業なのにも関わらず、感じの悪い候補者体験をしても尚、内定承諾をする方は変人と、行く当てのない訳あり人材のみです。(ちなみに私は30歳 高学歴ワーキングプア アルバイトプログラマだったので、後者でした。)
候補者体験や企業理解などの考え方が自然とできるようになったことは財産になっています。恐らく最初に入社した会社から有名メガベンチャーだったとしたら、今の弊社もなければ、このnoteも無かったと思います。
面接官研修は要る
面接官をアサインし、現場に送り出すにあたって面接官研修は必須です。特に弊社で面接官研修をする際に意識しているポイントについて、アンチパターンを交えながらお話します。
厚生労働省 公正な採用選考の基本
注意喚起の観点で厚生労働省の「公正な採用選考の基本」を最優先でインプットしましょう。
何の気なしにアイスブレイクのつもりでご家族に言及される面接官は居られますが、就職差別に繋がるリスクがあります。セクハラなどは特に厳しいです。この就職差別のお話をする度に、過去にお会いした面接官で、「B型は採用しない」と全員に血液型を聞いていた方が居られたのを思い出します。
自社が「候補者からはまず選ばれない企業だ」と認識するところから始める
圧倒的買い手市場だった就職氷河期世代とは違い、業界的に第二群の立ち位置だとエントリーシートや書類の段階では自社情報を読み込んだ上での志望理由があることのほうが珍しい状態です。押しも押されぬ業界最大手でも無い限り、面接官には「来てくれてありがとう」という謙虚さが重要です。
選考基準を合意する
採用後にパフォーマンスが低かったり、人柄が自社に合わなかったりするケースはそれなりにあります。大きな問題になった場合、「誰がどういうジャッジをして入社に至ったのか」という大反省会が行われます。私も何度か経験があるのですが、下記のような結論に至ることが多いです。
発生した問題に繋がるような質問を面接でしなかった
面接官がいつもと違ったため、質問内容が違っていた
いつもであればチェックするポイントを誰も聞かずに内定を出していた
前職がキラキラしていた(ハロー効果が派手だった)ので選考が甘かった
焦って選考期間を短縮し、選考過程とスキップした
リファラルなので選考が甘かった
構造化面接のようなイメージで必須で確認するチェック項目は用意し、それに対してのレベル感を最終面接まで含めた面接官の間で合意しておくべきです。どこかで事故が発生します。
自社の基本情報を知る
特にエンジニアが面接官をする際によく問題になるのですが、自身が関わっているチームやプロジェクト以外のところを話せないという方が少なくありません。他のチームやプロジェクト、事業がどういったものがあるのかを概要だけでもインプットはしておきましょう。
また、福利厚生なども能動的に調べている人でもないと、面接官が把握していないケースが多々あります。人事が同席する場合は大きく問題にはなりませんが、そうでない場合は会社説明資料などに盛り込むなどし、質問があった際の回答時の参考になるようにしましょう。
面接FAQを作成、共有する
面接FAQを事前に作成しましょう。人事と事業部で役割分担をして書き、情報統制の観点から法務チェックを挟むと良いでしょう。
会社の方針によってエンジニア正社員の人数を公開するのがNGな企業もあるのですが、「それって言っちゃいけなかったんだ」という決め事がある組織はあります。丁寧に進めましょう。
手元にある怪談としては、退職した面接官が『2年目にどのくらいの給与になるのか』という質問に明確に金額を答えてしまったことからまとまった人数でのトラブルに発展したというものもあります。こういった大事故に繋がることを防ぐためにも、回答事例集は準備しましょう。
自社のアクティブな求人を知る
自チーム以外でオープンしている求人を面接官に共有し、どういう要件であれば可能性があるのかも含めてインプットしましょう。
面接の際、「自チームでは不合格だが、他チームではいけるかも知れない」という場合があります。折角ご応募頂いた方なので、社内で然るべきチームに転送しましょう。最初からお見送りのつもりで話すのと、次に繋ぐことを念頭に話すのでは面接官の話し方も変わるものです。
社員から「自社への入社理由」を集める
面接の終盤に候補者に対して「何か質問はありますか?」という逆質問を行うことが一般的です。この際に準備不足の面接官が困る質問として「(面接官の)〇〇さんはどういう点が良いと思って入社されたのですか」というものがあります。同様に人材紹介会社と打ち合わせをしていても「どういった動機で入社する方が多いですか」というFAQがあります。この際に言葉が詰まると訳ありの会社に見えます。
直近数年の入社者や、アルムナイで戻ってきた人を中心に入社理由を集め、取りまとめておくことが良い準備になります。私が面接官研修に入る際、複数名面接官がいる場合は、自社の強みを発見するワークショップを行ったりもしていますが好評です。
面接官が多数デビューする今の時期が肝
5月中旬現在ともなればサマーインターンの母集団形成期です。面接官を多数動員する組織も多いと思われますが、何か参考になるところがあれば幸いです。