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人口減少時代における商売のヒントが満載 薄利多売から「厚利少売」へ

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

2024年はインフレによる物価上昇とそれに対応するための賃上げの話題が多く見られました。また、人手不足も深刻化したという話も多く、営業時間の短縮やタイミーなどのギグワーカーの活用も当たり前になってきました。

2025年も今年並みの水準で賃上げを維持する意向を持つ経営者が多く、一過性のトレンドではなく中長期で労働市場に影響を与えていきそうです。

2025年の賃上げについて、24年並みの水準を維持する意向を持つ経営者が多いことが分かった。「社長100人アンケート」で25年の想定賃上げ率を聞いたところ「5%台」が最多だった。ただ検討中とする経営者が多く、様子見機運も広がりつつある。

日経電子版

人口減少が確定した未来においては、様々な社会課題が噴出すると予測されています。このコラムでも度々登場している「2025年問題」、つまり団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になることで医療や福祉といった幅広い領域に影響を及ぼすことなどです。国民の5人に1人が後期高齢者になるということですから、介護の担い手不足もそうですし、医療費の負担など受け手と担い手のアンバランスが問題となる例が増えてきます。

ビジネスにおいても、ボリュームゾーンで可処分所得の高い高齢者向けのサービスが活況となるでしょうし、人口が増えない国よりは人口ボーナスを享受できる国(インドやインドネシアなど)でチャンスを掴もうとする動きも多くなるでしょう。

しかしながら、これまでの日本の伝統的な製造業においては「品質のよいものが割安である」という価値を提供するパターンが多く、近年では中国メーカーにそのお株を奪われました(家電がよい例でしょう。EVもそうなります)。一方で勝ち残っている日本のグローバル企業はニッチ市場でシェアNo.1を獲得することで価格決定力を持っていることが強みです。代替するものがない、というのは理想的な勝ち筋でしょう。

これはどのビジネスでも言えることで、いわゆる薄利多売モデルは価格競争に巻き込まれて場合によってはそのカテゴリー時代が沈んでしまうことがあります。いかに「より高いお金を払ってもらうか」というのは、非常に重要なテーマです。

商慣習として薄利多売を強いられている書店の状況は深刻です。ライフスタイルの変化により雑誌が売れず、家賃や光熱費は高騰を続ける。そして利益率はビジネスモデル上変えることができない等々です。

出版業界の慣行として定価販売(再販制)と返品条件付き取引(委託制)がある。メーカーが小売価格を強制することは独占禁止法で禁じられているが、新聞や書籍・雑誌など著作物6品目に関しては例外的に認められている。定価販売では価格決定権は出版社にある。家賃や光熱費が高騰したからといって、書店は本の値段を上げるわけにはいかない。売れ残った本を値引きすることもできない。

雑誌や多くの新刊書籍は返品条件付きで入荷する。書店は売れ残りのリスクがないが、薄利を強いられている。現状では売価の22%前後。書店業界は以前から粗利を30%へ引き上げるよう出版社や取次会社に要求しているが、出版社はなかなか応じようとしない。価格転嫁することへの躊躇(ちゅうちょ)があるからだと思われる。だが、薄利強要の結果として、書店は人材を育成する余裕を失い、企画力や販売力を低下させてしまった。

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ビジネスモデルを変えるというのは非常に難しいことですが、薄利多売から抜け出すことを考えている方に向けて、具体的な方法論をまとめた本が『厚利少売』(菅原健一著/匠書房)です。

要は少なくつくって高く売る方法論なのですが、概念だけでなく事例を紹介しながら誰もが行動に移せるレベルまで噛み砕いて書かれている点がポイントです。行動の3ステップは「1.価格を上げる → 2.お客を減らす → 3.高い価値を提供する」となっており、特に「お客を減らす」というのは商売をしている方にとっては非常にハードルの高い意思決定かと思います。

正確にいうと減らすのではなくターゲットを再定義する(結果的に前より減る)ということで、マーケティングの専門家らしい著者のアプローチは納得のいくものです。本書の中でも特に読んでほしいのが、提供価値に関する説明です。「価値は相手の変化量」と著者は説きますが、その中にも「本質価値」と「付加価値」をしっかりと分けて定義することを推奨しています。そして本人が本質価値だと信じていたものが、実はそうではないかもしれない。一度疑ってかかることも助言しています。

これは非常に重要なポイントで、ビジネスに思い入れがある経営者ほど「自分がこうしたい」という想いと「顧客が感じている価値」にズレが生じていることがあります。例えば駅前の好立地で繁盛しているラーメン屋さんが店主こだわりのラーメンを提供しているとしましょう。本人は「自分のこだわりが届いている!」と信じてやまないのかもしれませんが、お客さんに聞いてみると「飲んだ帰りに駅を降りたら目についたから」が一番の来店理由かもしれません。この例ではこだわりのスープは本質価値ではなく付加価値に過ぎなかったということになるでしょう。

来年は利益をあげていきたいと考える経営者の方は、ぜひ一読をおすすめします。



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