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真実の瞬間(Moment of Truth)を理解できるマーケターでありたい

今回は雑文です。

女性向けアパレルのジャパンイマジネーション(東京・渋谷)は10~20代向けブランド「セシルマクビー」の店舗事業から撤退する。1990年代から若者を中心にアパレル業界を席巻したが、2007年1月期をピークに売り上げが低迷。新型コロナウイルスによる販売減も響き、店舗運営の継続が難しくなった。

セシルマクビーと言えば「ギャルブランド」の代名詞で、正直言って驚きました。以前にアパレルブランドで働いていた嫁は、第一声に「うける」と表現して、次のように言いました。

「というか、女性ブランド自体が乱立し過ぎ。戦国初期。潰れるところはどんどん潰れる」

なるほど…いや、なるほどじゃない。

嫁曰く「だいたいプチブラで十分。靴とかカバンにGUCCIかセリーヌかディオールを使えば、プチブラに見えないんだから」と申しておりまして、積極的にハロー効果を活用しており脱帽です。

<ハロー効果とは?>
評価する対象が持つ顕著な特徴に引きずられて、他の特徴についての評価が歪められる現象。
例えば、ある分野の専門家が専門外のことについても権威があると感じてしまう。これを上手く活用しているのがNewsPicksのプロピッカーで、専門外で頓珍漢な発言を「あの人が言うんだから」と思わせる効果を持つ。
他にも、外見の良い人が信頼できると感じてしまうことが挙げられる。その代表例が小泉進次郎。

ただでさえ新型コロナで壊滅的な打撃を受けている小売業はどうしたら良いんでしょうかね?と嫁に聞いてみたら「"ちゃんとした接客"でしょ。みんなネットに依存し過ぎ」と、考えさせられる回答が返ってきました。

少数派かもしれませんが、それは僕もよく思っていて、新型コロナの前から「接客」を放棄した現場が結構多いな、と感じていました。書店に関して言えば、売り場面積が減った分だけ「売れ筋」の本が残り、渋い本が減ったと感じています。だったらAmazonで買うよ、と。ワイはがんばっておられる店員さんを応援したい本好きなのです。


「理論的」には正しいカスタマージャーニーマップ

カスタマージャーニーマップの作成や、ペルソナの作成、パーセプションフローモデルの作成など、理論的に正しいと思える内容も、現場で回って実践できなければ成果につながらず、定着が難しいと感じています。

というのも、実際に「作る側」になって「カスタマージャーニーがあるから成功するわけじゃないよな」と実感するからです。これらのツールは羅針盤であって、北極星のような事業の道標が見つかるとも限りません。

一方で、無ければ無いで、手ぶらで砂漠を歩くようなもので、余計に事業推進の難易度は高まります。水が無ければ砂漠は歩けませんが、水があるからと言って砂漠を横断できるとは限らない。しかし、いろんな人の話を聞いていると「水があるから横断できる」と言っているような人もいて「?」と感じています。

私が知りたいのは、この3つで十分なのです。

①ボトルネックは何だろう?
②レバレッジの効く施策は何だろう?
③どこにリソースを重点的に投下すると良いだろう?

さてさて、どうしたもんかいな?と考えていた時に、以前受講したセミナーの中に「真実の瞬間(Moment Of Truth)」と書かれた資料を発見して「これかもしれない」と感じました。


真実の瞬間(Moment Of Truth)

スカンジナビア航空のヤン・カールソンCEOが自身の"革新的なマーケティング手法"に基づき業績を回復させ、その手腕をまとめた1冊の本が「真実の瞬間(Moment Of Truth)」です。

CEOいわく、客室乗務員がお客さんに接する時間は平均して15秒ほどしかないようですが、お客さんが「またこの飛行機に乗りたい!」と思ってもらうためには、その15秒の間に自社のサービスの質の良さを感じてもらい、同業他社との差別化を図らなければいけません。その「瞬間」に最高の体験を届ける手法こそ「Moment Of Truth」です。

その後、Google社とP&G社によって領域が拡張され、4つの真実の瞬間(MoT)が提示されました。

第0の瞬間(Zero Moment of Truth = ZMoT):知る
現場に訪れる前に情報に触れて、その場で意思決定をする瞬間
第1の瞬間(First Moment of Truth = FMoT):買う
購買の現場で何を購買するか判断し、その場で意思決定する瞬間
第2の瞬間(Second Moment of Truth = SMoT):使う
購入後に商品を利用して、品質や体験の良し悪しを体験し、次回以降も継続的に購入するか意思決定する瞬間
第3の瞬間(Third Moment of Truth = TMoT):愛着を持つ
商品を利用し続けるうちに、愛着が生まれる瞬間

対面するのは同じ「人」であっても、第0〜第1はショッパー、第2はユーザー、第3はヘビーユーザー(ロイヤルユーザー)みたいな表現で呼ばれていると理解したら良いでしょうか。

P&Gでは「FMoT」のイメージ動画を撮影されていて「へぇ〜」って思いました。

知る瞬間、買う瞬間、使う瞬間、愛着を持つ瞬間それぞれ数秒〜数十秒こそが顧客に「価値を伝えられる瞬間」だと考えれば良いでしょうか。

私(マーケター)が思っている以上に、他人は自社の商材なんて気にしていません。「こんなに素晴らしい課題解決しますよ」と思っても、伝わらないものは伝わらない。気にしてくれた、その瞬間に価値をズバーンと伝え切る必要があるのです。

嫁が"ちゃんとした接客"と表現したのは、まさにFMoTの手を抜いているブランドが多い、という意味でしょう。


やってみるしかない説

MoTの流れを「検索 or SNS」→「店頭 or ネットで購入」→「体験」→「ファン化」と考えると、その瞬間でどのように選ばれるべきかが(カスタマージャーニーよりも)浮かびます。

かつ、その瞬間に選ばれる=売上に直結すると想定されるので、○MoTを表す指標を見つければ、高い再現性も担保できそうです。

もっとも、カスタマージャーニーより難易度が低く感じるといった程度で、○MoTだから「砂漠を渡れる」とは表現していない…つもりです。

この流れで言えば、相対的にみて重要なのは「Z」…知る、ではなかろうかと思うのです。認知してもらう、気付いてもらう、存在を知ってもらう。

「大変だなぁ…」と思うのは、知ってもらうキッカケは作れても、実際に知って貰うまでには大きなギャップ、ハードルがあります。仕掛けはできても実際に作動するとは限らない。

結局のところ、やってみて「はは〜ん、こういう感じか」と肌感を掴み、仕組みを積み重ねていくしかないのではないかと思うのです。北極星のような指標は2、3回旅に出て「あっ、あれか」と気付くしかないのでは。

北極星を見つけて初めて、羅針盤と照らして「あ〜、確かに北を示しているわ」ってわかるのでは無いでしょうか。私は羅針盤だけで北極星がわかる天才じゃないと自覚している分、余計にそう思うのです。

アウトプットするフレームワークがカスタマージャーニーにしろ、ペルソナ設計にしろ、やるべき施策の解像度が高ければ「どれだって良いんじゃない?」ってリアクションがマーケティングの大御所から聞こえてきそうですね。ぴえん。

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松本健太郎
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