みんなの想いを込めたボールを社会に全力で投げこんだ日。 #保育教育現場の性犯罪をゼロに
2020年7月14日(火)厚生労働省。「 #保育教育現場の性犯罪をゼロに 」の記者会見が行われました。
この会見で伝えたかったことはたったひとつしかありません。性犯罪の前科者を、子どもと関わる保育・教育の現場からキックアウトしてほしいということ。なぜなら、性犯罪の温床になっているからです。
日本では性犯罪の前科を持っていても、保育・教育の現場で問題なく働くことができます。そしてそこで、多くの子どもたちが深刻な被害にあっています。
今回登壇してくださったは、ベビーシッターマッチングサービス大手企業の登録シッターの性暴力被害にあった児童のお母さん(Aさん)、都内の小学校の担任教師による性被害にあった児童のお母さん(Bさん)、現役ベビーシッターの参納さん、そして認定NPO法人フローレンス代表の駒崎さん。
登壇者がそれぞれの立場から切実な、そして悲痛な想いを述べてくださいました。もう二度と、子どもたちをこんな悲しい目に合わせたくないと。
涙ぐみながら子どもの被害を訴えるお母さんの話を聞いて、なんというか、本当に悔しかった。悔しくて悔しくてしかたなかったです。
大手TV局から全国紙、各種メディアから多くの方にご参加いただき、熱心に耳を傾けてくださいました。近く、あらゆるメディアで発信されるはずです。これまでの多くの人が長く願い、訴えてきたことが、社会を変える大きなうねりになろうとする瞬間をリアルタイムで見ているようでした。
記者会見の詳細は是非こちらの記事をご覧ください。
ただ、この記者会見は自然発生的に生まれたものではありません。どこかの偉い人がドーンと企画したものでもないです。日本中の、子どもを守りたいという思いを持った人たちの小さな力が集まってできたものです。
今回はそれをどうしても伝えたかったので書きました。力を貸してくださった皆さまへ敬意と感謝を込めて。
まずは声をあげてみたけれど
ひと月前の6月。ベビーシッターマッチングサービス大手企業の登録シッターが立て続けに児童に対する強制わいせつで逮捕されました。
保育サービスを運営する組織の一員として、そしてひとりの親として、この事件は全く他人事とは思えませんでした。
二度とこんな悲しい事件を起こさせないためにはどうすればいいのか、自分なりに考えてみました。すると、同社だけでなく保育業界全体の構造的な問題があることがわかりました。
それが、性犯罪の前科者でも普通に保育・教育現場で働けてしまうことでした。性犯罪の中でも特に小児わいせつは非常に高い再犯率(約85%)で知られています。
なのに、この国にはそれを防ぐための法律・規制が何もなかったんです。これは絶対におかしいと思い、noteで記事を書きました。
この記事を、本当に多くの方が拡散してくださいました。最初に発信した私のTwitterのツイートは5,000リツイートを超えました。それがインフルエンサー各位にも届き、さらに拡散。「 #保育教育現場の性犯罪をゼロに 」をつけたツイートは破竹の勢いで伸びていきました。
当初は「# StandByKids」でしたが、抽象的とのご指摘が多かったので「 #保育教育現場の性犯罪をゼロに 」になりました。
ただ、やはり現実は厳しかった。政治・行政にアプローチをしてみましたがTwitterで少し拡散されたからって現状が変わるほど甘くはありませんでした。
冷静に考えれば、性犯罪者を保育・教育現場からキックアウトする制度の必要性は多くの有識者や専門家が長年指摘してきたことであり、今さら自分のような素人が騒いだからといってなんだというのか。
自分の無力を呪いながら、次の一手をどうしたものかと考えあぐねていたとき、SNSに一通のDMが届きました。
社会に散らばる小さな思いが、SNSでつながった
送信元は、ベビーシッターとして今回の事件に心を痛め、署名活動を行っておられた参納初夏さんでした。
これまで全く面識はなかったのですが「署名活動を頑張っていて、なかなか支持が広がらなくて困っていた時に記事をみて勇気付けられた」とおっしゃってくださいました。
なんてこった。勇気付けられたのは完全に自分の方でした。そして、この時に大切な事を思い出すことができました。今までフローレンスで学んできたこと、なんで忘れていたんだろう。
社会はひとりでは変えられない。みんなの力を合わせねばなりません。いわゆる、コレクティブインパクトです。
迷いなく参納さんにご相談しました。一緒にやらせてもらえませんかと。二つ返事で快諾いただきました。
ここから、本格的に仲間集めを開始しました。
まずご相談したのは、ベビーシッターの性犯罪問題で渾身の記事を書かれていたジャーナリストの中野円佳さんです。そもそも私が本件に強い問題意識を持ったきっかけは中野さんのこの記事でした。
中野さんには、当事件の被害児童のお母さん(Aさん)に意向を確認していただいたうえで、繋いでいただきました。このほか、メディア対応でも多くのアドバイスをいただいてます。
Aさんにはお電話で率直な想いを伺いました。親子でこんなにつらい想いをしているのに、子どもたちを二度とこんな目に合わせたくないと立ち上がってくれました。自分の娘が同じ目にあっていたら、Aさんのように勇気を出して声をあげることができただろうか。心から尊敬しています。
この時点で記者会見をやろう!と思ってはいました。当事者たちの声を社会に届けるにはSNSだけでなく、マスメディアに取り上げていただくことが必要だからです。
しかし、自分にはそんなノウハウは1mmもないし、何より、この頃になると多方面で多くの専門家(政治家・官僚・学者)にご相談&法制度などのインプットにその発信と同時進行でやっていたので首が回らなくなっていました。加えて、もちろん本業だってあります。8ヶ月になる娘の子育ても。睡眠時間がアカンことになっていました。
そこで駒崎さん(弊会代表)に覚悟をして相談に行きました。泣きを入れたに近いです。だって、社員が勝手にソーシャルアクション始めたと思ったら、大変だから力を貸してくれってわけですから、経営者の立場からしたらふざけんなってなるだろうなと…
ところが、逆にめっちゃ応援いただき、しかも本件をフローレンス案件にしてくれました。これはつまり、世論喚起に多くの実績とノウハウを持つ弊会の広報チームの出陣を意味します( 親分…!😭 )
広報チームのみんなも超多忙だったのに突然降って湧いたこの案件を快く引き受けてくれました。この瞬間から広報周りのタスクはほぼ全て担って頂いてます。まったく頭が上がらない。
これで保育現場に関しては、事業者(弊会)、現役ベビーシッター、そして被害者家族と、当事者が勢揃い。しかもそれを世に出す広報チームまでいます。
このまま記者会見まで走り切ろう、そう思っていました。
つい1週間前までは。
教育現場でも悲痛な事件が
記者会見まで1週間を切ったある日、知り合いの女性(Bさん)から連絡がありました。「相談したいことがある」と。
都内の公立小学校に通う娘さんが担任教師から性被害にあった、という衝撃の話でした。しかも、クラスの複数児童が被害にあっていたと、男子も含めて。本当に、目眩がしました。
Bさんは言いました。この教師は今懲戒免職になっている。でも、それはたったの3年間。3年間の失効期間の後、必要な大学の卒業証明書等を教育委員会に持っていけば、免許を再取得することができる。それは絶対におかしいと。
いや、おかしいっていうか、この国の法律はどうかしている。教育職員免許法には本当にそう書いてありました。教員免許の欠格事由にあたるのは「当該失効の日から三年を経過しない者」と。
Bさんの話を聞いてたら涙が出てきました。この国は、いったい何を大切にしているのだろう。大人たちは、何をやっているんだろう。
この日まで、目の前の保育現場のことで頭がいっぱいになってしまっていたけれど、それは間違っていました。私たちが守りたいのは、子どもたちです。子どもをたちを守るには、保育だけじゃなくて教育現場もなんとかしないといけない。
急な話ではありましたが、Bさんにも記者会見にご登壇していただけないかご相談しました。力強く、引き受けてくださいました。
みんなの想い、これから国会に届けてきます
こうして、今回の記者会見が実現しました。当事者の悲痛な、切実な声が凝縮されています。
この記者会見ができたのは、私たちを繋げるきっかけを作ってくださった皆さまです。記事を拡散してくださったり、ハッシュタグをつけてSNSでコメントをしてくださった皆さまです。本当に、ありがとうございます。
改めて、私たちが今回伝えたいことはひとつだけです。性犯罪の前科者を、子どもと関わる保育・教育の現場に近づけないでほしい。
もちろん、加害者のプライバシーや更生だって大切です。それは重々承知です。私たちは、性犯罪者を社会そのものから排除したいわけではありません。仕事で子どもと関わらないで欲しいだけです。仕事なら他にいくらだってあるのだから。
とはいえ、これは私たちの想いです。社会には多様な意見があります。子どもの未来より性犯罪者の更生を優先すべき、子どものいる職場でチャンスを与えるべき、という人だっているかもしれない。
どっちが正しいのか、それは残念ながら論理的に導くことはできません。ここから先は、価値観の話になります。私たちの国が、何を大事にするのかということです。
そして、それを決めるのは政治家です。こればかりは官僚にも、専門家にもできません。
私たちは近く今回の記者会見で発表した意見書を、関係する政治家各位にお届けする予定です。皆さまの想いを伝えてきます。全力でいきます。
そこで、ぜひ引き続き皆さまの力を貸してください。政治家の背中を押す最大の圧力は、皆さまの声です。それを可視化させるため「 #保育教育現場の性犯罪をゼロに 」のハッシュタグをつけて拡散していただきたいのです。これは本当に力になります。
子どもの「助けて」は聞こうとする人の耳にしか入りません。特に性犯罪は、そもそも声をあげる事すらできない場合が多いです。
でも、「大丈夫、聞こえてるよ」って言ってあげたい。そういう社会でありたい。そしてそれは、私たち大人にしかできないことなはずです。
皆さま、どうか、もう少しだけ力を貸してください。
【後日追記】 その後の展開
この記者会見からわずか3日後。森まさこ法務大臣に日本版DBSの意見書を手交することができました!
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