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未来予測の手がかりとしてのSF小説〜メタバース、気候変動、AIの20年後

メタバースとCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)。今週気になった2つの大きなキーワードを眺めながら感じるのは10年後、20年後にテクノロジーが社会にどのような変化をもたらすことになるのか、理解がなかなか追いつかず、また、想像することすら難しいと感じることです。

そんな時に「なるほど」、と感じたのが以下の「SF思考」に関しての記事でした。

『未来がみえない。地球温暖化の悪夢が今世紀末までに現実になるといわれても、遠すぎる未来への備えには国や企業に戸惑いが広がる。新型コロナウイルスの感染拡大が予期せぬ社会の変化を招き、未来は一段と不確実になった。成長戦略を行動に移すには将来を見通す思考法が欠かせず、一人ひとりが考え方をバージョンアップする必要がある。にわかに浮上しているのが「SF思考法」だ。』

『注目すべきは、将来の事業を模索する大手企業が、参考にしたかどうかは別にしてSF小説に活路を見いだす形になった点だ。SF小説は娯楽作品と思われがちだが、作家らの思考法にならえばビジネスの指南書にもなる。』

具体的には米SciFurureという会社が既に存在し著名企業のコンサルティングを数多く手掛けているようです。国内でも三菱総合研究所WIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所などが企業の新たな製品や事業企画などにつなげるためのワークショップやコンサルティングサービスを提供しているとのことです。

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以前からテスラ&スペースXCEOのイーロン・マスク氏やフェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグ氏等、テック系起業家が幼少期からSF小説を読み漁っていて影響を受けた、ということは耳にしたことがありました。

フェイスブックが社名を「メタ」に変更し、本格的にメタバースに取り組むことを明らかにするなど、かつてのSF小説の中で描かれていたことが10年後、20年後に現実になるのではないか、ということをますます感じます。また、そうした状況の中で、これまでテクノロジーを世に送り出してきたテック起業家が影響を受けたSF小説を、未来の「水先案内役」、或いは想像しうる世界を覗く手段として、学びや今後の戦略立案に役立てることの需要性がとても高まっているようにも感じます。

SF小説というとディストピア的なイメージを持つ人も多いかもしれませんが、多くのSF小説は事実や現実に基づいたリサーチや学問的な研究も踏まえた上で描かれていることが多く、背景を理解したり、客観的な予測やポジティブな未来を考える上でその重要性は今後も高まっていくことと思います。

例えば最近読み始めた以下の2冊は、まだ途中ではありますが、AI(人工知能)や気候変動問題が今後10年、20年後にどのような社会的インパクトをもたらすかについて、とても示唆に富んだ内容です。いずれもまた読み終えた段階で学びを書き記してみたいと思います。

①「AI 2041」:中国におけるマイクロソフト、グーグルの現地トップを経て2009年にシノベーション・ベンチャーズというVCを設立し、2018年には『AI世界秩序 米中が支配する「雇用なき未来」("AI Superpowers")』を出版した李開復(Kaifu Lee)氏というAIの専門家による著作。かつてリー氏ともにグーグルで勤務した後に中国を代表するSF小説作家の一人として活躍している陳楸帆(Chen Qiufan )氏が、リー氏の知見を元に短編SF小説の形式で20年後の未来の姿を10の物語として映し出す、という構成の1冊です。

②「The Ministry for the Future」:SF作家のキム・スタンリー・ロビンソン氏による2020年10月に出版された本。2025年に大規模な熱波がインドを襲い、数百万人の死者が出るという設定で、小説の主人公は将来の世代の利益を代表し、気候変動の解決策を支援するため世界各国の政府間調整を試みることが任務の国連機関を運営しているという設定。世代間の衡平とさまざまな形態の分配政治について描かれていて、英語圏ではとても高く評価されている一冊です。

Photo by Peter Herrmann on Unsplash

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市川裕康 (メディアコンサルタント)
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