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中途採用という言葉から透ける「プロパー重視」 昭和体質を脱却するための打ち手とは

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

いきなりオカルトめいた話で恐縮ですが、みなさんは「言霊」を信じますか? 「言霊」とは、言葉それ自体に力があって、良いことを言えば良いことが起こり、悪いことを言えば悪いことが起こる、という考え方です。

ビジネスの現場においては言霊なんかよりも戦略・戦術・実行力だろう!という意見には賛成します。自粛しろと言われてそれがそのまま実行されないのと同様に。しかし、ある局面では言葉というのはとても重要な示唆を与えてくれたり、実行力そのものにも影響を与えるものです。

言葉から透けて見えるもの、それは企業文化です。

例えば、お客様からのクレームが非常に多く顧客満足度が低い会社があったとしましょう。そのような会社の現場をよく見てみると、社内資料の中に顧客を軽視するような表現があったり、社内の会話でも「またうるさいやつがなんか言ってるから適当に回答しといて」みたいなやりとりが発見されたりします。心のなかで思っていることは、どうしても言葉や態度の端々に滲み出てしまうものです。

人材不足が盛んに叫ばれている中、採用の場面においても普通に使われている言葉があります。それは、「中途採用」と「出戻り」です。

出戻りについては、以前こんな記事を書きました。

今回は、中途採用について考えてみたいと思います。中途があるならば、そうでないものがあるでしょう。お気付きの通り、新卒ですね。

中途採用というのは読んで字のごとく「途中から入ってきた」ことを指しています。この言葉の裏には「新卒プロバー社員こそが正統」であるという想いが隠されているのではないでしょうか。実際に大手企業の中には、入社後の評価制度がプロパーと中途では違う場合もあります。中途社員には「特別専門職」のようなタグがつき成果重視の評価、プロパーについては新卒から続く年功序列を重視した評価制度といった具合です。日本のグローバル企業の中には、日本はメンバーシップ型、それ以外はジョブ型というダブルスタンダードになっている会社もあるようです。これを是正してより社員を強くしようと改革を始めている企業も出てきました。

完全ジョブ型であるグローバル企業やスタートアップ企業には、中途採用という言葉自体がありません。全部ひっくるめて「新規採用」です。

スタートアップはそもそも新しく入ってくる人ばかりですので当然そうなります。グローバル企業も人の出入りが(日本企業と比較すると)激しいため、役員も含めて大部分が中途社員で構成されています。ですので、区別するまでもなくただの新規採用です。それどころか、社内の異動であっても新規採用扱いとなります。

ジョブ型では先に「ポスト」ができます。どういうことかと言うと、これこれこういうプロジェクトをやりたいです。計画はこう考えていて、実行するためには既存人員に加えて営業1名、マーケティング1名の追加が必要です。なので承認おねがいします!としかるべきルートに出します。

無事承認されると、採用枠(ヘッドカウント)がもらえます。採用チームと一緒にジョブ・ディスクリプションを書き、応募を開始します。外部に求人情報として出ると同時に、この情報は社内にも公開されます。「新しいロールができましたよー。興味ある人は応募してね」という感じです。社員に対して新しいキャリアの機会を提供するという意味でも、かなり積極的に社内発信をします。

応募が集まるといろいろなテストや面接をするわけですが、社員からの応募でも外部から応募したときと同じプロセスを踏みます(書類選考がスキップされるくらい)。私も面接やプレゼンテーション試験に同席したことがありますが、実際に見知っている社員でも厳しく審査します。根底にある考え方は「このポストに最適な人は誰か」。必要な人材が社内から見つかれば成果を出すのが早くなりますし、社内でキャリアを積む社員が増えることは非常に喜ばしいことです。それでも、市場から最適な人を採るための努力は怠りません。

「社内公募」という言葉も、中途採用に近い雰囲気を感じます。そのポストは社外にも同時に出したほうが、会社にとってのメリットが大きくなるのではないでしょうか。そして社員を「常に市場での戦力が高い人材」にしておくことが、なにより本人のキャリア育成に役立つのではないでしょうか。

「そんなことしたら辞めちゃうじゃないか!」とおっしゃる方、よく考えてみてください。それはつまり、自社は市場において常に競争力が欠けていると言っているのと同じことです。そう思うのであれば、防止するためには何をすればよいか。給与水準を上げる、働きやすさを大きく向上する等々、社員がやりがいをもって働き続けてくれるためには何をすればいいかを深く考える絶好の機会となるでしょう。

すべての働く人が、やりがいを感じて楽しく働ける世界。そんな未来をつくっていきたいと心から思います。

※ 本記事は日経朝刊投稿募集企画「 #キャリアの社内公募制度 」への寄稿です。COMEMOでは誰でもハッシュタグで募集企画に参加できます。ぜひみなさんもご自身の意見を書いてみてくださいね。

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タイトル画像提供:metamorworks / PIXTA(ピクスタ)

#日経COMEMO #NIKKEI #キャリアの社内公募

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