観測史上最も気温が高かった年のCOPを振り返るー化石燃料からの「脱却」?
今年一年振り返るといろいろありましたが、「史上最も気温の高い一年」であったことは、(少なくとも関係者には)強烈なインパクトを与えたように思います。国連の気候変動枠組み条約締約国会議、いわゆるCOP28への注目も否応なしに高まる・・・かと思いきや、報道ぶりなどはそれほどでもなかったですね。政局関係に関心が集中したということもあるでしょうが、COPの意義そのものが問われているということもあるのかもしれません。
そもそもパリ協定が、各国に法的な削減義務を課す仕組みではなく、自主的な枠組みですし、COPで文書をまとめるには、参加国すべてが飲めるものでなければならないのはこのプロセスの宿命。そうしたなかで、今回の文書は「高い野心を掲げつつ、技術や道筋の多様性を認めよう」という文脈で書かれており、文書としてはよくできたものだったと思います。日本のメディアは全く書きませんが、日本政府が以前から主張してきたところでもあります。ただ、「文書としてよくできている」というものがどれほどの意義があるのか、という指摘はあり得るでしょう。
それにしても、日本のメディアが複数、COPの成果として、化石燃料からの「脱却」が掲げられたとしていることには違和感があります。
文書が使っているのは transition away from であり、素直に訳せば「移行」あるいは「転換」でしょう。移行・転換していけば最終的には脱却するわけですので、言葉として誤訳というわけではないでしょうが、phase outという言葉を使うことは通らず、transition away fromが使われたという交渉の文脈を踏まえるとミスリードだと思います。日経の社説も「脱却」を使っていますが、原文を見てそう訳しているのでしょうか?
[社説]脱化石燃料の実現へ世界は一層の努力を - 日本経済新聞 (nikkei.com)
今回参加した実感としては、COPは「環境万博」になったということ。
それも悪くはないと思います。ただ、万博部分は「毎年この規模でやる必要ある?」というのは強く感じますね。砂漠の都市に7万を超える人が集まって、毎日シャワーを浴びながら、冷房キンキンにかけながら環境の会議というのは、なんのジョークだろうという気がします。従前どおりの政府間交渉の場としてのCOPと、環境万博としてのCOPとは切り離して開催を考えても良いのでは・・と思いました。
2024年は世界が平和で笑顔の多い一年になることを心から祈りつつ。
皆様、良いお年をお迎えください。