スラバヤの自爆テロとインドネシア人のSNS利用

5月13日の早朝、ミサの時間に衝撃的な事件が起こった。インドネシア第2の都市スラバヤでの連続爆破テロだ。近年のインドネシアの姿を知る人は、スラバヤの治安の良さを知っているので驚きを隠せないだろう。14日には、スラバヤ南部のシドアルジョとスラバヤ警察本部でも自爆テロが起こった。イスラム国(インドネシアでは、ISISと呼ぶことが多い)からの犯行声明もでている。イスラム教徒の多いインドネシアでは、イスラム国の危険性は日本よりも早く注意されてきた。2011年には、インドネシアの大学でISISからの勧誘が警告されていた。それでも、テロリストになる人々は後を絶たない。

その原因の1つに、SNSがあるだろう。アメリカ合衆国国土安全保障省によると、ソーシャルネットワーク分析を用いて、SNS上での関係性がテロリズムに及ぼす影響を明らかにすることがテロリズムを防ぐ有効なアプローチの1つだと言う。テロリストの組織体系は、私たちに馴染みのあるピラミッド型の構造を持たない。誰かがリーダーシップを発揮するのではなく、テロリズムに感化された人物が凶行に及ぶ。そのため、テロリストの実行犯に最も影響を与える先導者の特定がテロ対策上、必須となる。特に、SNSの利用が活発な国・地域では重要性が増す。

よく知られている通り、インドネシアでのSNSのユーザー数はアジア諸国の中でも群を抜いて高い。Facebookだけを見ても、ユーザー数は約12万人(2017年、日本の4倍)にのぼり、ありとあらゆる情報収集のデバイスとして生活に欠かせない。そして、このようなテロリズムなどの衝撃的な事件が起こると、SNSには決まって監視カメラの映像が拡散される。日本では信じられないが、テロリストの自爆の様子や銃撃戦の画像がありのままの状態で拡散し、ありとあらゆるインドネシア人がそれを見る。多くの人は嫌悪感を覚える内容だが、その内容に感化される人物もいる。

スタンフォード大学のジンバルド教授によると、自爆テロを行う人物は精神の病にかかっているわけではなく、例外なく正常な精神状態にある。特徴があるとすると、自爆テロの実行犯は、自身の過去を否定し、現在の状況を宿命だと悲観的に受け止め、死後の世界に価値を見出す傾向にある。つまり、普通の人がテロリストに変貌してしまう危険性をはらむ。

そのため、わたしたちは過去否定や現在宿命論的な志向をもった人々を、過去を肯定し、現在の楽しいことに目を向けるように時間志向を変える必要がある。一足飛びに自爆テロによって死後の幸せを求めるのではなく、幸せな超越未来へと通じる実行可能な未来の目標と道筋を持つことのできる社会を作ることが、凶行に及ぶ人を引き留めることにつながっていく。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO30447090U8A510C1EAF000/?nf=1

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