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デジタル時代の企業ブランディングは、「企業広報誌」の活用かも

資生堂の「花椿」、愛読誌でした。

 と、元・花王の社員が書いてはいけないのかもしれない。が、元社員だし、事実なので、告白させてください。

 花王に在籍させて頂いた頃に、化粧品事業のお仕事をさせて頂くこともありました。その時に、「化粧」とは何かと、考えることが多かったのです。男性の私にとって、化粧とは難しいテーマだったのです。ある時、下北沢の雑貨と書籍が並ぶお店で、「花椿」に出会い、これは何だと思い購入しました。最初に感じたのは、資生堂の企業広報誌が、こんなに内容も豊富で、とてもクオリティーが高いことを感じました。似た広報誌、自分の会社では創れないのだろうと思いました。

 しかしすぐに気が付いたこともあります。この企業広報誌には、その企業の考えやカルチャーが染み出ている。だから、自社では同じようなものは創れず、資生堂は創れる。それが、企業の違いで、企業のブランドなのではと感じたのを覚えています。

 それ以来、しばらく「花椿」を購入し、資生堂の考える「美」について、私なりに考え、そのことで、当時の会社の「美」の定義の参考にさせてもらいました。

デジタルの時代、企業広報誌減っているのでしょうね。

の記事にあるように、企業広報誌は減っているのでしょう。それは、デジタルの時代になったことが理由にあるかもしれません。しかし、デジタル・マーケティングを長く行ってきた私の理解では、印刷物は、デジタル・メディアに、移植できないということです。印刷物には印刷メディアの特徴と良さがあり、デジタル・メディアとは等価のものではありません。いや、厳しく言うと、デジタル・メディアの品質は、印刷メディアの品質には到達できていません。編纂物、編集物という視点においては。

 企業広報誌は、企業のブランドや活動を紹介するものです。どの話題を選んだか。どの順序で前のページから掲載したか。表紙に何を掲載したか。これらが、すべて企業のブランドやその企業の考え方を説明する要素になります。印刷物だから、編集という考えがあり、高品質なグラフィック表現が可能です。この意味で、本当に企業のブランドや考え方を紹介したいのであれば、企業広報誌は最適なのです。これは、デジタル・メディアという編纂物が断片化される空間では表現しにくいことなのです。

実は、印刷技術もデジタル化されている

 デジタル・マーケティングを長く行ってきたからか、ここ数年、それぞれのメディアの特徴について、再確認することを行っています。これだけ、高速回線が普及した今でも、映画館で映画を見る理由はなぜだろう。これだけ、ほぼすべての人がスマートフォンを持っている今でも、百貨店の催事場でのその催事のチラシを手に取る理由はなぜだろう。などなどです。

 デジタル・メディアが登場した初期には、私も含め、多くの人がデジタル・メディアが他のメディアを飲み込むと考えていました。しかし、今の私の考えは異なります。今までのメディアに、デジタル・メディアが加わっただけで、最適なメディアの選択、組み合わせの選択が増えただけだと考えています。

 こう考えた時に、「企業の広報」を伝えるメディアとして最適なものは何でしょうか。私は、「企業広報誌」、いやデジタルの時代だからこそ過去よりも「企業広報誌」が最適だと考えるのです。

 一つは、デジタル・メディアがあふれる今だからこそ、「紙」の編纂物の存在価値は高くなっていること。そして、今多くの人が、実在する「物理的」なモノを渇望していると思えるからです。

 そして、もう一つの大きな理由は、印刷がデジタル化したという事実です。私は、ここ数年、印刷関係の方と多くお話をさせてもらう機会を頂き、昨年はある印刷機の国際会議まで参加させ頂きました。今の印刷機には、「版」がない方法の印刷機があるのです。最近、テレビ広告である会社が宣伝している「インクジェット方式」の印刷機です。多くの印刷機器会社から販売されており、日本の多くの印刷工場に導入されています。

 これは、今までの高速大量印刷から、高速少量多品種印刷が可能になっているのです。そして、当然、そのあとの製本や、特殊加工もデジタル化されているのです。私も最初に、この印刷機を見た時には驚きました。全く、過去の印刷機のイメージとは異なるものなのです。そして、こんな技術がすでに使える状態になっていることを、全く知らなかったことを恥ずかしく思ったのです。印刷とは、まだ「版画」だと思っていたのですから。

 企業広報誌の担当の方は、一度取引先の印刷会社と、いま何が行えるのかを聞いて欲しいのです。そのことで、企業広報誌をデジタルの時代に、さらにより良いものにするヒントがたくさんあると思うのです。

本当に企業広報誌なくすのですか?

 もし、これから企業広報誌の廃刊を考えている方がいたら、次の質問を答えてみましょう。

1.企業のブランドを伝える最適なメディアが企業広報誌以外に見つかったのか?

2.今のデジタル印刷の技術で、企業広報誌が元気になる方法をきちんと検討したのか?


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