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リモートワーク時代の到来〜働き方改革と新しい経営のあるべき姿について、米国テクノロジーのトレンドから考えてみた

こんにちは。大学院入学のため渡米、そのまま米国シリコンバレーにてキャリアを積み、米国Yahoo!本社のバイス・プレジデント、ベンチャーキャピタルなどの経験を経て、現在は、シリコンバレー拠点の日米クロスボーダーの投資及び事業開発の会社、アンバー・ブリッジ・パートナーズを経営しています。米国シリコンバレーより、ウェルビーイング、テクノロジー・トレンド、ESGなど、ホットな情報を発信していきます。

コロナ禍収束後も引き続きリモートワークを採用

私の住む米国シリコンバレーでは、コロナウィルスの大流行をいち早く察したApple、Google、Facebook、Twitterなどの大手IT企業が、昨年3月より全社員のリモートワークに切り替えました。この動きは、学校や公的機関よりも早く、シリコンバレーIT企業に勤める社員は、1年4ヶ月近くリモートで仕事をしていることになります。ワクチン接種が急速に進み、コロナ発症のケースが激減した結果、シリコンバレーはかなり通常運転に戻ってきましたが、多くの会社が社員の完全リモートワークを認めたり、出社とリモートワークのハイブリッドを採用したりしており、コロナ禍を境にリモートワークは一般に浸透した様相です。

企業側の対応が求められる〜リモートワークによる燃え尽き症候群と孤独

米国のFlexJobsとMental Health Americaが共同で1,500名のオフィス・ワーカーにアンケートをしたところ、75%が燃え尽き症候群を経験したという結果が出ており、そのうち40%がコロナ禍でリモートワークをしている間に燃え尽き症候群を経験したと報告しています。これは、リモートワークによって常にオンの状態でいなければならないというプレッシャーが原因とのこと。リモートワーカーの67%が「常に即答しなければならない」「コンピューターの前にいなければならない」とプレッシャーを感じてると回答しています。

加えて、リモートワーカーが直面する「孤独」は、個人的なウェルビーイングだけでなく、仕事のパーフォーマンスにも悪影響を及ぼしています。研究によると、幸せだと感じている人は仕事のパーフォーマンスが高く、幸せな人が多い会社はそれだけ生産性が高いとされています。事実、国連は、2020年5月の白書にて、職場におけるメンタルヘルス問題はUS$1trillionの損害になると予測し、各国、各企業に積極的にメンタルヘルスへ対策を講じることを示唆しています。企業は、従業員のウェルビーイングのために、この問題への対処、対策を講じることが求められています。

企業に「つながり文化」が求められる時代

リモートワーカーを効果的にサポートするためには、企業はバーチャル空間でのつながりの文化を育む方法を見直す必要があるのではないでしょうか実際、繋がりの文化をもつ企業では生産性が向上したという報告もあります。その一方で、つながり文化を育んでいない企業での生産性は15%低下したという報告もあります。リモートワークの環境ではタスクに集中してしまい、その背後にいる従業員にまで気が回らなくなる可能性があるため、リモートワーク向けのソリューションは「人をリモートで管理すること」ことから「リモートだからこそつながりをたいせつにする」ための機能が求められています。

「リモート管理」ではなく「従業員のエンゲージメント」にフォーカスしたソリューションが続々登場

Zoom、 Asana、GoToMeeting、Slackなどのテクノロジーはリモートでの会議やコミュニケーションを可能にしました。アジェンダに従って会話をするため、無駄話がなく、効率的なミーティングが出来るという利点があります。その一方で、オフィスなら「ねえ、これどう思う?」と隣の席の同僚とちょこちょこおしゃべりしたり、水飲み場で「最近どう?」と会話を交わすような「水飲み場社交」が激減してしまいました。

このような「つながる」ニーズを満たすべく、様々なプロダクトがリリースされています。GoogleやMicrosoftのような大手IT企業はもちろんのこと、フィーリングを大切にするといわれるミレニアム世代が創立したスタートアップからも多くのサービスも多く、社員のウェルビーイングというカテゴリー別でみると、従業員のエンゲージメント・ソリューション、従業員のウェルビーイング・ソリューション、チームコレボレーションなどのパーフォーマンス向上・ソリューションなどがあげられます。

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出典:SIGNALFIRE Remote Work Market Map by Elaine Zlby

例えば、ASSEMBLY社は、社員のエンゲージメント度合いを社員同士が「いいね、すごいね」と認知する数、コメントの数、リアクション(反応)する数から幸福度の高いカルチャーどうかを計測するツールを提供しています。コメントや認知を受け取った社員はポイントを取得し、アワード受賞やギフトカードへの交換により、さらにモーティベーションを高める仕組みとなっています。2017年に設立された会社ですが、Coca Cola、Amazonなど2400社が採用しています。

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DONUT社は、Slack上でDonutプログラムのチャネルを作り、このチャネルが「水飲み場」的な役割を果たします。Slackはプロジェクトを円滑に推めるためのコラボーレーションツールですが、Donutチャネルは気楽に誰もが立ち寄れて、バーチャルランチをしたり、趣味について話し合ったり、ほっと一息つける場になっています。

2007年に設立されたENERGAGE社は、社員アンケートを実施して、組織のカルチャーを可視化し、社員の幸福度が高い健全なカルチャーにするお手伝いをするツールです。7万社を超える2,300万ものアンケートから4億5千万ものデータポイント収集し、それを基にAIベースのアルゴリズムを作成。社員アンケートの結果を分析し、幸福度の高いカルチャーに導くプラットフォームです。Microsoft、Hubspotなど3000社が採用し、社員の幸福度を調査し、データをもとに幸福なカルチャーにするための施策を講じています。

ESG投資においても注目されるウェルビーイングの向上

ESG投資においても「ウェルビーイングの向上」が注目されるようになり、リスク&リターンの金融の世界に「幸せ」という人間的で情緒的な価値観が根付きつつあります。欧米では、社員は単なる労働力ではなく、ヒューマン・キャピタル(人的資本)であると捉え、人の心身を良い状態に保つことは、資本市場にとっても大きな意味合いを持つようになりました。

社員を管理することにより生産性を上げる時代から、「社員の幸せをあげることにより、真の競争力を増す」つまり「ウェルビーイングの向上」へと経営の価値観そのものが移り変わりが、コロナ禍をきっかけとして、ますます加速していきそうです。今後も引き続き、ウェルビーイング向上のためのテクノロジーに注目していきたいたと思います。





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