「逆張りのキャリア」によるリスキリングのススメ
「リスキリング」という言葉を目にする機会が多くなりました。
岸田首相も、「リスキリングに力を入れる」と明言をされています。
リスキリングとは何か
リスキリングという言葉を聞くと、僕は見出し画像の言葉を思い出します。マクドナルドの創業者、レイ・クロックの言葉です。
日本マクドナルドの採用ページにも、上記のように今も掲載されています。
リスキリングとは、まさにこのレイ・クロックの言葉の通り、年齢に関係なく、いつまでも学び続け、成長し続けようというコンセプトだと僕は捉えています。
そうすることが、長く働き続けることにつながるし、人生を豊かにもするし、ひいては日本という国を豊かにもする、ということだと思うんです。
だから岸田政権も着目している。
日経新聞でもリスキリングをテーマにした連載がありまして、僕も取材いただきました。
リスキリングをテーマに、自身のキャリアについて取材いただきましたが、自分ではリスキリングを意識してキャリアを歩んできたという感覚はあまりありません。
それより、キャリアの中でそれまでと異なる環境に身を置き、実務の中から学びを得ることで、結果としてリスキリングしてきたという感覚が強くあります。
今回のnoteでは、リスキリングにおいて教育機関で学び直すということではなく、キャリアの中でリスキリングをどのように行なっていくかについて、自身の拙い経験をもとにお伝えしていきたいと思います。
学ぶには「逆張りのキャリア」
僕は、新卒で日本マクドナルドに入社しました。
大学の同期たちが商社や金融にいく中で、「就職したい会社ランキング」に名を連ねることのない外食産業を選びました。しかも、入社した2005年当時のマクドナルドは、平日半額といったキャンペーンの後、赤字に転落した直後です。周囲の仲間たちからは、「なぜうまく行ってない会社を選ぶの?大丈夫なの??」とよく言われました。
成長こそが本当の安定
僕も日本の大手企業を受けていました。いわゆる安定のためです。しかし、就活する中で僕が抱いた気持ちは、「同期1,000人が入社するような大企業に入っても、競争が激しくて勝てない可能性が高いのではないか?」「今は安定しているように見えても、将来その企業の経営が厳しくなって放り出されたら、僕は食べていけるのだろうか?」という漠然とした不安でした。
「だったら、誰も選ばない逆の環境に行って、自分を思いっきり鍛えて、どこに行っても食べていける力を身につけた方が、むしろ安定するのではないか。」
そう思って、マクドナルドでのキャリアのスタートを決意しました。
この時から、僕の「逆張りのキャリア」は始まっていたんだと思います。
マクドナルドに入ってからは、とにかく必死でした。「マクドナルドに入ってよかった」と思うためには、入って良かったと思えるだけ成長して、成果を上げ続けるしかなかったからです。
そうやって必死に働き、マクドナルドでは史上最年少で部長職に抜擢してもらったり、経営改革期には社長室長として社長と二人三脚で経営改革に携わらせてもらいました。こうした機会に恵まれたことに、心から感謝しています。
同時に、必死に働き自分を成長させた結果として得られた機会でもあるので、「成長するという選択肢を選んでよかった」と今では思っています。
経験したことのない道を選ぶ
業績が回復し、経営改革がひと段落した頃、自身のさらなる成長のために転職を考えるようになりました。
そして僕の場合、最初のキャリア転換では、マクドナルドという大企業から、メルカリへというスタートアップに挑戦をしたのです。
・外資系大企業から日本発スタートアップへ
・マーケティングから人事・組織開発へ
・店舗ビジネスからITサービスへ
toCビジネスという面では一貫してるのですが、それを除けば180度といっていいほど異なる環境でした。
通常、転職エージェントと話すと、「これまでの経験を生かして成果に繋げやすい方がいい」という話になります。
当時、マクドナルドでマーケティング部長だった僕の場合だと、「外資系消費材メーカーのマーケティングディレクター」とか、「外資系外食企業の日本の責任者」といったポジションで声がかかるわけです。
それもそのはず、「同じマーケティング」とか「同じ外食」とかで少しずらした方が成果が見込みやすいめので、採用する方もされる方も安心です。
そして、紹介するエージェントにとっても、その方が「高く売れる」から、彼らの業績にも繋がるわけです。(僕に紹介をしてくださった方が儲けのためだとは思いませんが、あくまで一般論として)
でも、自分の「学びの幅」という意味では、大きくないんですよね。
ビジネスモデルや職種が同じだったりするので、過去の経験を転用しやすく成果は出しやすいのですが、やることも似ていたりする。
組織や人が変わるので、そうした違いから慣れるまでの時間がかかる割に、やることは前職とあまり変わらないなら、前職のままいた方がもっとパフォーマンスを出せていたかもしれません。
だとしたら、できるだけ遠いポジション、なんなら真逆と言えるくらいのポジションに挑戦した方が、新たな経験から多くを学べるんですよね。
足りないピースを埋めにいく
スタートアップでの人事や経営職に挑戦した後は、自らスタートアップを共同創業して、ゼロから起業するという新しいチャレンジをしています。
スタートアップや経営という意味では、これまでの経験が活かせますが、コンサルティングを行ったり、企業向けのITシステムを開発したりという仕事は、toBにあたるので、toCの経験ばかりだった僕にとってはまた新しい領域の経験を積めているわけです。
そして最近では、スタートアップを自身で経営する傍、デジタル庁での人事・組織開発という仕事にも兼業で就いています。
人事・組織という仕事である点についてはこれまでの経験が活きますが、何せ「行政」という環境は全く初めてです。そもそも伝統的な日本組織自体が僕にとっては初めてなので、また違う環境から多くを学ばせてもらっています。
デジタル庁に挑戦したのは、むしろ「伝統的な日本組織」というこれまで経験したことのない、自分にとっては足りないピースを埋めに行った感覚からでした。
僕はこうした動きを「逆張りのキャリア」と呼んでいて、少しずらして確実性の高いキャリアよりも、真逆の環境に飛び込んで不確実だけれども学びの多いキャリアを選ぶことをお勧めしています。
逆に張ることで大いに学べば、自分のできることが増えます。キャリアの幅も広がり、その後の選択肢の自由度を広げることが可能になります。
選択肢が広がれば、やりたいことがやれるようにもなり、それだけ人生も豊かになっていくと思うんですよね。
逆張りって大丈夫なの??
そうは言っても、「経験したことのない道を選んで成果を上げられるのか?」「積み上げてきたキャリアを捨てて良いのか?」といった不安を抱く方も多いと思います。
その不安は当然と思いますが、意外とやってみたら、経験上そうでもなかったんです。
ゼロリセットは期待値を下げる
確かに、キャリアを大きく動かすと、やったことがないことばかりなので最初はメチャクチャ戸惑います。
マクドナルドからメルカリに移ったとき、仕事ではメールを使わずSlackでコミュニケーションをとっていたり、会議の議事録を同時編集でその場で書いてログを残していたり。仕事の作法から全く違って、本当に新卒になったような気持ちでゼロから学びました。
当然、慣れないから一つ一つに時間がかかるし、自分の生産性も一時的に下がります。当初は本当に使えない社員だったと思います。苦笑
でも、真逆に振ってゼロからスタートすると、そういう状況が許されたりもするんです。なぜなら、周りの社員の期待値が下がるからです。
「ああ、マクドナルドからきたの、ITではないところからだから慣れるの大変だね、少しずつ慣れていってくださいね。」という感じで。色んな方が教えてくれて、支えてくれて、本当に僕は助けられました。
(メルカリという会社はいい人ばかりで、そうした組織カルチャーの良さの影響も多分にあったと思いますが!)
これが、近い業界、近い立場、それなりの役職での転職だったら「当然できますよね?」というお手並み拝見という感じのスタートになる。
この期待値の違いは入社直後の仕事のしやすさに大きく影響すると思います。ゼロリセットでのスタートは意外と仕事しやすい面もあるということです。(もちろん、苦労もあります)
積み上げた経験はゼロにならない
他にも、「成長できるのは分かるけど、キャリアとして積み上げてきたものを捨てて良いのか?」という疑問も生まれます。
では「キャリアを大きく転換したら、それまでの経験が本当にゼロリセットされたか?」というと、そんなことはありませんでした。
僕は最初の転職とともに、マーケティング職から人事に転身しました。
正確にいうと、人事として転職したかったわけではなく、「経営を担えるようになりたい」と思っていたので、経営に近い仕事として社長室で採用してもらいました。そして、やっているうちに組織課題が大きくそこと向き合ってるうちに、人事の仕事に近づいていったという感じです。
さて、「売れる仕組みを考える」マーケターと、「従業員のモチベーションを高める」人事とでは、全く異なる仕事のように見えます。
しかしこれ、やってみると本質的には同じ仕事に感じられたのです。
僕にとって、マーケターは「お客様を幸せにする仕事」であり、その一方で、人事は「従業員を幸せにする仕事」なんだと気づいたからです。
つまり、幸せにする対象が異なるだけで、「ターゲットを幸せにする」という仕事の目的は同じなので、マーケティングの感覚を応用して人事の仕事に取り組むことができたのだと思います。
このように仕事の本質を捉え直すということは、ちょっとズラすキャリア転換だと気付きにくいかもしれません。表面的な知識やスキルをそのまま活用して仕事がある程度こなせてしまうからです。
むしろ、真逆の環境だからこそ、新しい知識・経験を身につけながら共通項を見出し、どんな環境でも仕事で成果を上げられるという自分流の勝ちパターンを手に入れられるのではないかと思うのです。
まとめ
「リスキリング」というと、「学び直し」と日本語に訳されます。
確かに、今まで持ってないスキルを身につけるために、学校に通ったり、本を読んだりすることはもちろん大切です。実際、グロービス経営大学院で教壇に立ち感じますが、社会人になって自ら学び直しにこられてる方々は、意識も高く、吸収してすぐ実践で使うなど、仕事にプラスになる効果が多々あることは間違いありません。
一方で、実践の中から学ぶということもまた大切だと思うのです。
実践から学ぼうと思ったら、慣れ親しんだいわゆるコンフォートゾーンにいては、得られるものは少なくなります。
知らないことや、やったことのないことに積極的にチャレンジし、キャリアの中で学べる機会を作ることは一石二鳥にも三鳥にもなります。
もちろん、そうした機会を得るためにまずは勉強するということも欠かせません。「やりたい」と言ってるだけではその機会はやってきませんからね。
僕自身、30歳のときにグロービス経営大学院で学び直しておいたおかげで、その後に社長室長や人事責任者など、それまでやったことのない職務にも就きやすかったという感覚があります。
それでもやはり、本当に使えるスキルを身につけるには実践です。
今まで経験したことのない困難な挑戦。
他の人なら選ばないであろう「逆張りのキャリア」。
そうしたことにあえて挑戦することで、実践を通してリスキルングを進め、やりたいことをやれる自由を手に入れて行きたいと僕は思います。
20年後に、「経験上、これしか選べない」というキャリアの選択肢の狭い人生を送るか? それとも、「やりたいと思ったことを自分で選べる」キャリアの選択肢の広い人生を送るか?
僕は後者の人生を送りたいと思うので、常にチャレンジしていきたいと思います!!
皆さんもぜひ、迷ったらチャレンジの大きい方を選んでいきましょう!!