大学の「年内入試」から学ぶマーケティング
昭和の受験者に違和感のある、「年内入試」という言葉
今年の秋は、本当に「秋」なのかという暖かい日々が続いています。そんな中、一つの記事が私の目に留まりました。
皆さんは、「年内入試」という言葉をご存知でしたか?私は、この記事で初めて知りました。私の記憶では、正月を過ぎてから受験、合格通知は3月だと思っていたし、そのように経験していたので、とても「早い」と感じました。
このように受験生の中には、年内に大学の合格を手にする人がいるそうなのです。確かに、年内に進学先が決まれば、親御さんも一安心でしょう。この記事の中では、主に受験生側に「年内入試」のメリットがあるように書かれています。
しかし、実際には、受験を行う大学のメリットもあるので、このような「年内入試」の取り組み大学が増えていることも忘れてはいけません。
以前、大学の関係者と大学のマーケティングについて議論したときに、面白い話を伺いました。「大学において、受験生集めは、毎年、毎年、お客様が変わるマーケティングです。そして、入学者数には定員があるが、受験生には定員がない、変わったマーケティング」との話です。そして、「入学者数は、大学にとって重要な数値」だとも伺いました。つまり、「年内受験」を行う大学にとっても、早めに入学者を決めることで、次年度の大学経営を早く安定化させられるというメリットもあるのです。
ところで、このように、「発売時期」「実施時期」の早期化は、大学受験以外でも、使われていたマーケティング手法です。少し、その事例を紹介しましょう。
クリスマスケーキの予約スタート、そして「おせち」も
みなさんが、今、よく目にして、実感しているのは「おせち」の予約ではないでしょうか?多くの百貨店では、すでに「おせち」の予約がスタートしています。そして、お店によっては、早期割引などの特典をうたっている事例もあります。
クリスマスケーキの予約も完了していないのに、「おせち」と思うのですが、確かに「おせち」は、一世帯1つしか購入しないので、販売するほうは、他のおせち提供会社にお客を取られないように、どのお店も必死でしょう。その結果、少しでも他の店よりも予約を早くして、早めにお客さの数を確定させたいという気持ちになります。これが、「おせち」の早期販売が増えた、背景の一つでしょう。
なんと、ランドセルを「元日」から販売
いまや、孫へのプレゼント商品となった「ランドセル」も、まさに「早期販売」の事例です。どの流通も、新入学する子供と祖父母の会うタイミングに合わせて、販売キャンペーンを実施しています。結果、元日、お盆休みが、「ランドセル」の販売時期になっています。
子どもが、ランドセルを意識していないかもしれませんが、祖父母が新入生のランドセル姿を見たくて、帰省シーズンがランドセルの販売時期になったのです。
昭和な私は、確か直前の3月に黒いランドセルを、親から頂いた気がするのですが、時代とともに、ランドセルのマーケティングも変わったのです。
なんでも早めれば良いのか?
このように、「発売時期」「実施時期」の早期化は、有効なマーケティングです。しかし、単純に、時期を早めれば良いのかというと、そうでもありません。
例えば、バレンタインのチョコレートの予約が、クリスマス・ケーキの予約より前に始まったら、皆さんはどのように思いますか?多くの方は、クリスマスが終わらないと、バレンタインのことは考えられないと思うでしょう。実際に、多くのバレンタインの予約は、正月が明けてからスタートします。
つまり、早期にするにしても、多くの人が考える、「自然な順序」を追い越した展開は、うまくいかないことが多いのです。
しかし、この「発売時期」「実施時期」の早期化は、多くのマーケターが考え、実践する手法の一つです。次に、早期化して、ヒットするマーケティングは何か?私は、とても興味があります。