見出し画像

私と誰かの幸せのためのリスキリング

こんにちは。Funleash志水です。いつもたくさんのスキやメッセージをありがとうございます。スキ!をいただくと、私の文章を読んでくださっている方と繋がっている感じがしてとてもワクワクします。

さて、今日はリスキリングについて書きます。
先日、『日本初リスキリングJAPAN2022カンファレンス』(シェアエックス社主催、UMUテクノロジージャパン社協賛)の最終セッションでモデレーターを務めさせていただきました。錚々たる識者・登壇者によるセッションは持ち帰りの多い大変有意義な時間でした。当日の内容についてはオフィシャルな記事が公開されると思いますので、ぜひそちらをご覧ください。

リスキリングという用語が日経をはじめ、いろいろなメディアに登場するようになったのは3年ほど前。最近は日経はじめ他社の紙面を賑わしていますね。

リスキリングはややわかりづらい概念です。日本語に該当する言葉がないためカタカナになっています。メディアではリスキリング=学び直しというように書かれていることが多いようですが、実は単なる「学び直し」ではないということを最近知りました!以前学習したことを再び学んだり、個人の関心にそったことを学ぶ「学び直し」であり、リスキリングには「学び直し」以上の意味があるそうです。

■学び直し・・社会人として働いてる人や再び働こうとしている人が以前学習したことを中心に自分の関心があることを再度学ぶこと。
■リカレント教育・・社会人になった後に大学院や専門学校などの高等教育機関に戻る、社会人向け講座を受講するなど、新しい知識やスキルを身に着けること。いったん職を離れることが前提。
■リスキリング・・技術の進展や産業構造の変化により今後新たに発生する業種や職種において価値を創出するために必要な知識やスキルを新しく習得すること。

リスキリングという言葉が日本に入ってきた背景については、第一人者である後藤宗明氏(一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事)の記事に目を通していただくことをお勧めします。欧米でこの言葉が登場した背景、日本での浸透の歴史、リスキリングの重要性なども含めて、この言葉が日本で定着するように後藤さんが日々奔走されている様子が伝わってきます。

日経の記事を見ると、リスキリングについて(も?)日本は欧米主要国から企業も個人も出遅れている。DX(デジタル・トランスフォーメーション)に備えるために一刻も早くデジタルスキルを身につけよという論調が多いようです。

例えば下の記事では、学び直しが盛んな先進国は生産性高いことを、他国との比較を行いつつ示しています。そのうえで、日本における人材育成の投資が生産性の低さの要因であり、成長戦略の観点からもスキルを備えた幅広人材を増やささないと国際競争に後れをとってしまうことを指摘しています。

DXのスピードが速く、求められるスキルの変化も激しい中、再教育の必要性は高まる。世界経済フォーラム(WEF)が2020年1月、30年までに10億人に再教育を実施する企画を立ち上げたのはIT関連を中心に人材を充実させるのが目的だ。米セールスフォース・ドットコムや印インフォシスなどが協力する。日本は出遅れが目立つ。再教育への参加率は35%とOECD平均より5ポイント少ない。人材のスキルが伸び悩み、生産性は北欧各国の半分程度で37カ国中21位にとどまる。(記事から抜粋)

また、下記の記事はリスキリングの機会についての日米で生じている大きな違い、アジアの中でも学びに対する日本人の意識の低さに焦点を当てています。日米の差でいうと、「全社員」を対象としてリスキリングを推進する米国企業と、「専門人材など特定の社員向け」にのみ再教育を行う多くの日本企業の差について言及しています。DXを加速させるためには、一部の社員のみならず、より幅広い社員のリスキリングが必要なことが明らかであると警鐘を鳴らしています。

学び直し(ここではリスキリングのこと)を実施する米国企業は82.1%だったのに対し、日本企業は33%にとどまった。「実施していないし検討もしていない」という日本企業は46.9%にのぼる(記事から抜粋)

記事の中盤では、2019年にパーソル総合研究所が行った(APAC就業実態・成長意識調査)を引用し、社会人の学びに対する意識や行動に関する考察もあります。特筆すべき点は、日本人の約46.3%が自己啓発について「とくに何も行っていない」と回答、これは中国(6.3%)や韓国(12.3%)、タイ(5.7%)などと比較しても際立っている事実。これはとても衝撃です。

これらの記事にはデジタル時代に必要なスキルを身に着ける重要性や企業・個人が取り組むべきことが何度も強調されています。
一方で、リスキリングしないと仕事がなくなると危機感をあおってもなかなかピンとこない人もいらっしゃるのかなと思います。効果あるのですかね。
なぜなら日本の社会人の学ぶ意識が希薄であるということは、20年ほど前から様々な調査で繰り返し指摘されているのです。けれども大きな進化が見られていない。ここは注目したい点です。

日本では働き手が新しいスキルや知識を学んでも努力が報われる感覚が得られないからではないかというのが私の考えです。人事・組織開発のプロとして言わせてもらうと・・学ぶ動機が見当たらなければ、あるいは、学んだあとにどんなメリットが得られるのかイメージが描けない場合、人は主体的に学び始める、あるいは継続して学び続けることが難しいのです。

危機感や恐れによって行うリスキリングは継続しないかもしれません。
ということで少し視点をずらして考えてみましょうか。
リスキリングは、あなた自身の成長だけではなく、あなたの顧客を幸せにすることができるかもしれない。

どういうことでしょうか?あるコンビニ店でのお話をさせてください。
コロナで在宅勤務が増えた私は自宅近くのコンビニに足を運ぶ回数が増えました。ある時、買い物をした後に、レジで電子決済しようとしたらエラーが発生しました。対応していた年配の男性の店員がぽろっとこぼしました。「こんな複雑な機械(レジのこと)を急に使えっていっても、私ら年寄りには難しすぎるんだよなー。余計に時間がかかっちゃうよ」
一緒にいろいろ試して再起動をかけると動くようになりました。ほっとした感じでその店員さんに対して私はこう言いました。
「新しい機械(アプリ)を使いこなすのは大変ですね。でも一度やり方を覚えて使えるようになったら、面倒な作業もやってくれるし、作業効率がよいからお客さんの待ち時間も減ります。機会がやっている間にお客様との対話ができる時間が増えるかもしれませんよね」
その店員さんは「なるほど、それはそうでした。教えてくれてありがとう」と言いました。業務がデジタル化する中、同じようなことが多くの職場で起きているのではないでしょうか。

こんなエピソードもあります。コロナウィルスの拡大により大打撃を受けた飲食業界。仕事を失ったシェフたちと自宅でレストランの料理を食べたい顧客をつなげるマッチングのプラットフォーム。時々私も利用します。
そのサービスを通して出会ったあるシェフは、マッチングのプラットフォームだけでは情報が限られているため、自分が創った料理の魅力を伝えるために動画をSNSで発信したり、レシピを公開するためにホームページのつくり方とウェブマーケティングを勉強してますといってました。
自宅にいる時間が増えているからこそ、身体に優しいレシピを自分で創ってほしくて始めたのですが、出張サービスよりも人気なんですと笑顔で話してくれました。

最後のエピソード。以前勤務していた事業会社で2000人以上のアルバイト社員を正社員に登用したことは以前もお伝えしました。販売のプロである彼らは正社員になれば異なるスキルが求められます。人材マネジメント(採用、研修、評価など)に加え、店舗の運営やマネジメント業務(財務、マーケティング、ITシステムなど)全般を学ばなくてはなりません。マネジメント職に必要な知識を非正規社員が体系的に学ぶことができる学習ツールをE-ラーニングで提供しました。意欲のあるスタッフならば誰でもマネジメント職に挑戦できることが仕組みも整えました。
その会社を離れて数年たちますが、組織内での活躍はもちろん、さまざまな業界・職種で要職についたり、海外で活躍している元アルバイト社員の様子を見聞きするたびに嬉しくなります。

リスキリングと挑戦によって自分の可能性を広げることができたのです。

日本の社会人の学ぶ意欲はなぜ希薄なのか?日本型の雇用制度や人事制度、そして社会の中で弱者とされるマイノリティの人たちにチャンスが与えられない社会や会社の仕組みに原因があると思います。
新卒で正社員になれば定年まで雇用が保証される。会社から与えられた仕事を粛々とこなしていれば自分のキャリアは会社が考えてくれる。新しいスキルを身に着けても仕事で発揮する場が与えられない。退職すれば裏切者扱い。責任のある仕事に就いても処遇はあまり変わらない。努力して学んだことや挑戦したことが報われないとなかなか意欲はわきません。

でも、これからは会社に依存せず、自分のキャリアは自分で創る時代です。
リスキリングは、学歴や経験が不足している多くの人、そしてすべての人にとってチャンス。新しい雇用・キャリアアップの実現につながる可能性があります。

さらにコロナを通して私たちは気づきました。朝から晩まで働くだけの人生では幸せではないこと。会社に尽くして稼いだお金を使って何かを得ることが必ずしも幸せにつながらないこと。本当に大切なことは、自分と大切な家族友人が健康で笑顔で過ごせるかけがえのないこの時間。幸せには多くの形があって幸せは自分で選択できるんだということ。

リスキリングで新しいスキルを身に着けるとこんなことが可能になりそうだと思いつくことを挙げてみました。
◎新しい職種につけたり、社内外でキャリアが拡がる
◎仕事の幅や責任の拡大で報酬が増える(増えない組織は見切りをつけて)
◎お客様に喜んでいただける
◎誰かの役にたっていると感じられる

人から感謝される、社会で必要とされている感覚は私たちの幸福度を上げます。そう考えたらリスキリングをする意義って大きいと思います。

ということで今年こそリスキリングに挑戦してみませんか?
自分と社会の誰かを今よりちょっとだけ幸せにするために・・

リスキスリング (1)