これからの「クリエイター経済」でのNFTについて考える。
下北沢で映画館「K2」を開業してはや半年。
インターネットの仕組みである「MOTION GALLERY」と、リアルのリテールである映画館「K2」それぞれの特性はやっぱり違うので、色々と日々トライアンドエラーをしならが挑戦しつづけているこの半年、といった感じで、日々学びがおおいのですが、そんななか昨日まで下北沢ではこんなアートイベントが行われていました。
月がテーマのアートイベント「ムーンアートナイト下北沢」。今年ついに下北線路街が完成したことを受けて、初めて開催されるアートフェスでした。
映画館「K2」も下北線路街の一員として、このアートイベントに連動する形で、バリー・ジェンキンス監督の「ムーンライト」や、今年劇場公開し高評価が相次いだ李相日監督の「流浪の月」といった月にまつわる映画を期間限定上映するなどしていました。この2作品とも作品自体にも共通する部分はあったというか「月」に人が託す思い、もしくは月が照らすものってとふと考えることで、月とアートって相性がいいのかもなあとも思ったり。来年もあるかもしれないので、是非皆様からも「月といったらこの映画でしょ!」というのがあったら教えて下さい。
さて、この「ムーンアートナイト下北沢」ですが、実はこのアートイベントの肝となるもの、軸となるものは「NFT」でした。その名も
「48店舗参加のNFT付デジタルアートを集めるスタンプラリー」
(我々「K2」も参加いたしまして、K2のロゴがキャラクター&NFT化していたりします。入手したかたに愛着を持っていただけると嬉しいです!)
MOTION GALLERYとK2に共通しているものとしては、「クリエイターの為の場所」であるということだと思うのですが、新しいクリエイター支援の形を模索してきた我々としては、この新しい仕組みとなりうる「NFT」については強い興味をこれまで持って来た・・・・と言いそうなところではありますが、正直これまで全く興味を持ってませんでした。端的に「ようわからん」というところもあるのですが、NFTが最初に盛り上がった流れを見ていたときには投機文脈でしかどうも捉えられなかったからです。当時爆騰していた暗号資産の勝ち組達が一旦利確させるための選択肢としてNFTが盛り上がっているようにしか見えず、実際話題になるのもNFTの売買価格がメインで、作品性だとかNFTだからこその表現などの話はでていなかったと思います。そもそも単なる裏書きの仕組みであるわけだし冷静に考えれば「いや、多少アナクロだろうけどもすでにリアルでやっている話だしなあ」みたいな感覚もあったからかもしれません。
しかしながら、この記事にあるように、今伸びているとされる「クリエイター経済」ですが、その成長の伸びしろは、NFTやメタバースなどデジタル領域の新しい仕組みに期待されているところがやはり大きいのはまちがいありません。とっても懐疑的にNFTを見ていた自分ではありますが、もし本当にNFTがクリエイター経済を支えるインフラになりうるのであれば、クリエイターの為の場所をつくっている我々としてはちゃんと向き合わなくてはいけないなあと思っていました。
そんな中、急にNFTが自分の身近に現れた機会となった「ムーンアートナイト下北沢」。このアートイベントでのNFTの活用のされ方自分の周りの知人の参加者の反応はすこぶる良かったことも含めて、自分は初めてNFTにこれまで感じていなかった魅力や可能性を急激に感じ始めています。
それは、もしかして「NFT」は一時の盛り上がりや投資・投機商品としてというような高体温なものではなく、もっと低体温でアーティストと関わる仕組みとして浸透し、かつそれがアーティスト支援にもつながるようなものになりうるのではないかという印象でした。言うなれば、金融商品だと思っていたけど実はラジオ体操の出欠スタンプカードなんではないかという感覚。
うーん、本当にそうなのかな・・・?
ということも含めて、8月のPodcast番組「MOTION GALLERY CROSSING」では、「ムーンアートナイト下北沢」にも作家としてNFT作品を製作し参加されていた、アーティストのたかくらかずきさんにお話をお聞きしました。今NFTアートの実践者として日本で先陣を切る活躍をされている、たかくらさんのお話では、かなりNFTの認識や見える未来が鮮明になりました。
今回伺ったたかくらさんのお話を踏まえて、一層NFTの可能性を考えていきたいと思います。
#107/section1「アーティストによる青空市」
初期からNFT/NFTアートをウォッチし、活用してきたたかくらさんに、NFTとは?ブロックチェーンとは?NFTアートとは?という基本の部分から、信用に関する考え方の転換という視点、さらには、NFTの普及によってアーティストがつくりたいものをつくり売ることができるようになる、という素敵な循環まで、さながらNFTの見取り図のような初回となりました。
#108/section2「NFTアートはラテアート」
NFTアートとはどういうものかを、主にアーティスト目線からお話しいただいた前回から視点をガラっと変えるsection2。購入する側の楽しみ方についてお聞きしていくと、「NFTアートという呼び名は、ラテアートと一緒かも」という衝撃の一言が…!NFTアートとは、どんなキャラクターをまとい、飾り、コミュニティに属しているか、ファッションにするのものであり、さらにはアカウントを中心に複数のメディアを横断するメディアであるというお話から、NFTアートは物理的なアートとはまた別の軸にあることを改めて気付かされました。
物理とデジタルとの感覚の違いとしてはさらに、NFTアートはデータとしてはずっとサーバに置いてあるものであって、購入者はそれを所有しているという権利を有するものであることによる、所有感のアップデートが起こっているというお話にも。たかくらさんのおまもりの例えや、長井さんの「あれ、私のモナリザなんですよ」の一言、とてもわかりやすかったです!そして、買うと何ができるの?というトピックでは、「バーンする権利」に一同驚き。
#109/section3「美術リテラシーの復興」
ここからもっと注目され、さまざまな企業や人の参入が予想されるNFTアート。特集も折り返し地点のsection3では、コンテンツが”無料で”消費されてきた従来の広告ビジネスからの脱却をNFTが可能にしたこと注目しながら、小さなコミュニティから成る今のNFTアートの楽しさやメリットを今後も守っていくためのヒントを探っていきました。
広告や仲介がなくても、NFTによってアーティストと購入者との作品の売り買いを回していけるという事実が証明されたことはすなわち、バズらないと流行らない、バズ中心の世界へのカウンターでもあると話すたかくらさん。流行ってしまうと買われてしまうからむしろ宣伝したくないコレクターさんもいるのだとか。投機ではなくアート文脈・コミュニティ形成と捉えて楽しむ人の存在こそ、今のNFTアートを守っているのだと感じました。
そんなNFTアートのコレクターさんは、物理的なアート作品のコレクター層とは全く違うそうで、そこには、現代アートによって大きくなってしまった”美術への抵抗感”の払拭や、美術リテラシーの復興の可能性というお話も。
#110/section4「NFTアートは路地裏こそ楽しい!」
NFTアートの今後の展開として気になる、既存の美術業界からの反応や、NFTアートの持つ可能性について掘り下げていく特集最終回。NFTアートはアートピースとしてだけではなく、コミュニティチケット(内部証明)として、持っている人たちで何かを推進・サポートしよう!といった活動にも活用することもできるのでは?というたかくらさんのお話から、「個人と所有」という軸のなかで広がるNFTアートの可能性に、面白そう!まずはやってみたい!という気持ちがさらに増していきました。”儲かる”金融取引ではなく、NFTアートを文化として定着させていくために、なにができるのか。アートだけでなく音楽や本のジャンルでもこんな風に活用できるのでは?初稿を売るのはどう!?など、大きなマーケットではなく、誰でも買える・誰でも売れる、”骨董市”や”路地裏”としてのNFTアートのアイデアが飛び交いました。