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やるべきは「地方創生」ではなく「地方再構築」まず仕事を作れ

毎度ニュースネタとなる「東京人口集中」ネタだが、いつも不思議に思うのは、なぜ「若者の流入」ではなく、あえて「若者・女性の流入」と「女性」を立てるのか?

思想性の強い時事通信なんかは相変わらず「女性の地方離れ」などというタイトルで煽っている。なんでも「〇〇離れ」としたがるところが頭悪いというか語彙力ないというか。


確かに転入超過(転入数と転出数との差)は確かに男<女だが、だからといって女しか東京に来ていないわけではない。
それどころかむしろ絶対数としては男の転入数の方が圧倒的に多い、それもずっと。


要するに、東京に転入して来るのは絶対数としては男の方が多いのだが、同時に男は東京からの転出も多いため、転入超過という差分にすると女が多くなるだけ。

いいかえれば、東京に転入しても男は流動性が高いが、女は東京に来るととどまる可能性が高いということ。

そして、これは性別の問題ではない。男は女より、「どこに住むか」ではなく「どこで働くか」によって住む場所が規定されやすいからである。地方への転勤もあるだろうが、転職や起業、あるいは失業で出て行く場合もある。実家から呼び戻される場合もあるだろう。
女の場合、20代のうちは仕事によって東京に来たのだろうが、仕事の都合で東京を離れることは少なく、転出はほぼ結婚か子育てに伴う住環境の変更(郊外に家を買うなど)である。もちろん、結婚や住環境変更で出て行く男の数もほぼ同等だが、仕事で出て行くかどうかの違いが男女の東京からの転出数の差である。

何が言いたいかっていうと、地方創生がらみの話題で政治家も官僚も御用学者も「女性の東京一極集中」ばかりいうが、絶対数では男の移動の方が多いというのが事実。
問題にするなら、わざわざ「女性」に限定する必要など皆無で「若者の一極集中」と言えばいいだけなのにねえ。
ちなみに、転入も転出もほぼ20代が中心なのでそれが多いというのはイコール若者(20代)の話。

で、この地方から人口の移動だけど、大体の調査でも共通しているように、その理由のほとんどは「仕事」である。

仕事を求めて人が移動するのは別に昔からそうで、明治時代一番人口が多かったのは、東京や大阪ではない。新潟や石川、広島だったりした。新潟や石川は港を通じた仕事がたくさんあったし、広島にも造船工場などの仕事があったからだ。他にも炭鉱があったところは人口が増えた。
仕事あるところに人は集まるだけなのである。

現代の話でいえば、有効求人倍率と賃金の高いとこに人はあ集まる、以上という話でしかない。

下図は、東京圏の有効求人倍率と地方のそれとの比が大きければ大きい程、その地方から東京へ転入してくるというごく当たり前の話の散布図。

もうひとつ、各地域の賃金の全国比が大きければ大きい程(全国平均より賃金安い)その地域は転出超過になるというもの。賃金が低いところからは人は転出し、高いところに転入する。これも当たり前の話。


伊東地方創生相は「若者や女性の東京圏への転入超過を何とかしなければならない」と言ったらしいが、10年前からこんな言ってて、一体今まで何を何とかできたんだよって話でしかない。

地方創生が根本的に間違っているのは「若者や女性の東京圏への転入超過を何とかしなければならない」と言う課題認識そのもの。

なんで出て行くこと自体を悪い事のようにする?

言ってることは、まるで毛沢東が文化大革命でやった上山下郷運動(下放)とかの愚策と同様で気持ち悪い。
上山下郷運動とは、農本主義の毛沢東らしく、都市と農村の格差撤廃というスローガンの下、都市部の青年を辺境の農村部に送り込むという形で実行された。案の定、そんなものがうまくいくはずがないどころか悲惨な結果となった。
日本でも江戸時代人返し令とか帰農令とか出されたけど全く効果ない。当たり前で仕事がないから江戸や大阪に出てきてるのであってね。

現代の日本の話に戻るが、地方にまったく仕事がないわけてはないが、魅力的で所得の得られる仕事が少ないことも確か。地方から大都会に出て行きたい若者には、それなりの挑戦精神もあるわけだから、とにかく頑張ってこいと気持ちよく送り出せばいいんですよ。なのに裏切り者みたいな目で見るような地方だから見放されるんだよ。

そもそも一旦出たからといって二度と戻ってこないわけではない。20代で出て行くことだけをとりあげて一生戻ってこないみたいな誤解を招くような報道はやめてほしい。

何度も言うが地方がやるべきは、大都会で挑戦したい若者を閉じ込めることではない。出て行きたい若者は何を言っても出て行くのだからいいではないか。
向き合うべきはそこではなく、今だって大多数は地元を愛し、残る若者がいるわけで、そうした地元に残る若者に雇用や所得が十分かを考え、地域経済を活性化させることがまず先。これをちゃんとやらないと、今まで残ってきた若者ですら出て行くようになるんだよ。

繰り返すが、仕事や所得が足りなければ、たとえ地元を愛していたとしても人は移動していくからね。対策としてはこの雇用と経済活性化に尽きる。

列島改造とかいうんなら、八潮の道路陥没でも露呈したように、老朽化したインフラの再構築を公共事業として活性化させればいいのに。まさにそれこそ今やること。その際、同時にぽつんと高齢者が一軒家に住んでいるような集落も統廃合して、真ん中に集中居住させて、小売りやサービス業もそこに集積させるとかいろいろやりようはある。
そうやってまず地方に仕事を作り、地方は地方の中での人口集積地を作ることこそが対策なんじゃないの?

やるべきは地方創生ではなく地方再構築だよ。

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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。