商談の成功確率を上げる「WHYの掘り下げ」
Potage代表 コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。コミュニティづくりのノウハウを活かして、企業や個人の問題を解決する伴走支援を提供しています。
コミュニティの専門家で、人のつながりを日々大事にしている影響なのかもしれませんが、私のところには「あずさんに紹介したい人がいるんです」という話から商談につながったり、直接、困りごとを抱えているご本人から「あずさん、助けて下さい!」と連絡があり、それが案件につながることが多いです。
このようなふわっとしたお悩み相談や、困っている人の紹介が入ると、「まずはオンラインでお話ししましょう」と提案して、どういうことを私に求めているか話をします。
そこで、たいてい、真っ先にコンタクトがあった見込み顧客からでてくるのは「イベントをやりたい」「こういう場所をつくりたい」「こういうコミュニティを盛り上げたい」などという、具体的な「手段」に関する要望です。
しかし、10年以上このような仕事をしてきて気がついた、意外な事実があります。このように「ふわっとした相談」がきて「こういうことをやりたい」という手段に関する要望を受けた案件が形になるころには、最初に提示された要望とは違うかたちをしたプロジェクトに変化する確率がかなり高い、ということです。
どういうことかというと、例えば「イベントをやりたいんです!」というよくある相談を入り口にしてヒアリングを進めると、話を進めるうちに「あれ、本当にイベントがベストの解決策なのか?」という疑問が高い確率で浮かび上がってくるのです。その疑問を率直に「○○さん、最初はイベントを開きたいとおっしゃっていましたが、御社の目的を整理してみると、単発のイベントで終わらせるにはもったいないお話だと思うんです」とぶつけて、そこから議論を進めるうちに、単発の案件ではなく、年間契約の案件や、イベントとは異なる形態の案件(例えばコンサルテーションや研修や組織づくり案件)へと変化していくのです。
そして、起こるべくして変化が起きたプロジェクトは、かなり手ごたえある案件へと進化することが多いです。
「あずさん、どんな魔法を使っているのですか?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、何も特別なことをしていないのです。ただ、たった1つ、私が心がけて実践していることが、この進化を事前と引き寄せているのだと考えています。
何を実践しているかというと「商談の最初に要件を聞く際に、お客様から、深く話を掘り下げて聴く」ことを徹底しているのです。
真のニーズをとらえる「なぜやるのか」の問い
普通のビジネスシーンでは、「こうしたいんです」という要望を問合せで受けた際は、すぐに見積もりを提出し「いくらいくらでこうやって実現できますよ」と提案する流れが一般的です。しかし、私の場合は、提案書をすぐに作成することはほとんどありません。では、まず始めに何をするかというと「ひたすら話を聴く」のです。
例えば、「こんなイベントをやりたい」というリクエストを受けたとき、まずはお客様の意図を理解するために、その背景を探ります。具体的には「○○さん、イベントを開催するというお話を伺いましたが、ぜひ背景についてお話伺わせてください!」と声をかけ、オンラインでのミーティングを設定することが多いです。
そこで1時間のアポイントメントを取ったとすると、私はその大半、約30分から40分間を使って、お客様の話を聴き続けてひたすら深ぼりをします。大事なのは、お客様が達成したいゴールを理解することです。なぜそれをやりたいのかを、徹底的に引き出して、解像度高く言語化していくのです。
イベントを開催するのは結局のところ手段にしか過ぎません。ただイベントをやりたいだけであれば、近所でお祭りをやったり、子どもの運動会でも手伝えばいい話です。しかし、それでは本当の目的は達成できないから、私のような専門家に連絡をくださるわけです。その意図をくみながら「イベントをやりたい」と言う言葉に反射的に飛びつくのではなく、なぜやりたいのかを理解し、課題に対する解決策を吟味していくことがとても大事になるのです。
しかし、不思議なことに、多くのお客様は「イベントをやりたいんです」と口に出した瞬間に、「なぜイベントをやりたいと思ったのか」のゴールへの意識が希薄になるのです。イベントをやるありきの話から入ってきて「どうやったら面白くなりますかね?」と、手法ばかりについて話をしたがる傾向があります。そのため、「なぜやるんですか?」という質問をいきなり投げても、的確な答えが返ってくることは、意外と少ないのです。
「なぜやるんですか?」と聞いたときにお客様からかえってくる、典型的な回答例はこのようなものです。
「この新製品を売らなければならないからです。それで、上司から「イベントをやれ」と言われて、年間3回のイベントを開催すると面談で回答してしまったんです」
これでは「なぜやるのか」の本質が見えてきません。お客様のビジネスが現在どのような状況にあり、なぜイベントが必要なのかをしっかりと理解することが大切なのに、その肝心の部分が言語化されていないのです。
このような回答が返ってくる際には、相手の心の中に眠っている、まだ自覚が薄い、本質的なニーズを掘りあてて、引き出していく必要があります。この「本質的なニーズ」をまずは理解しないことには、良い企画にならないからです。
なので、まずは「そうですか、3回も大変ですね」と共感しながらも「その新製品の販売予定ルートはどのようになっていますか?」「ターゲットは誰ですか?」といった具体的な質問を投げかけ、発散気味に話を広げていきます。
話が発散していくことで、徐々にお客様の本音がにじみ出てきます。この「本音の発露」を促進するのに役立つのが、問いかけと共感を通じて、相手との対等なつながりを産み出す「ファシリテーションスキル」です。少しずつ場の雰囲気をやわらげて、相手が話しやすい状態を作り出し、相手が心の中に持っている思いを言葉にすることができるようにガイドしていきます。
もう本音で語れているな、という雰囲気を察知したら、相手方の本音を引き出すトリガーにするために、このような率直な問いかけをするのも効果的です。
「○○さん、イベントをやるのはいいんですが、本来の目的を考えたときに、それって意味がありますか?やることがゴールになっていませんか?」
ここでお客様がハッとした表情になり「実は、こんなことがあって...」と自己開示が進むと、商談は一気に具体化していきます。「なぜやるのか」に議論の焦点がうつり、課題を軸とした解決策についての具体的な話に移行するからです。
そこまで来ると、企画を具体化する作業はスムーズに進みます。目標から逆算して、言語化された課題のひとつひとつに解決策を提示していけばいいので、きわめてやるべきことがシンプルになります。
大抵の場合、解決のための手段は複数浮かんできます。最初はイベントの相談だったのが、SNSキャンペーンという手段が浮かんだり、ブランディングという手段が浮かんだり、研修という手段が浮かんだりします。そのいくつかの選択肢をお客様に提示すると「ああ、それならイベントではなくて、Bの選択肢のほうがよさそうですね」という、真のニーズに即した反応を得ることができるのです。
商談で真のパートナーシップを築く「ファシリテーション」の力
一般的な企業の営業活動をみてみると、基本的には、お客様の要望に応じて見積もりを提出し、価格交渉をして契約を結ぶ、といったステップを踏むことが多いです。
しかし私の場合、そのようなかたちで商談が成立することはほとんどやったことがありません。大事なのは「なぜやりたいのか」「どうやってゴールに到達するのか」、そして「結果としてどのように会社としての評価につなげたいのか」という、まだ言語化されていない本質的なニーズを知ることなのです。
本質的なニーズは、大抵の場合、外からは見えづらいものです。そして、相手の心の中に存在することが多いです。本質的なニーズをきちんととらえるには、お客様の心の中の声を表に引っ張り出して、一緒に感情を共有しながら、言語化するプロセスが欠かせないのです。
お客様と一緒に言語化のプロセスを通じて企画を作り上げると、結果的にプロジェクトの成功確率は上がります。かつ、プロジェクトの単価が上がるケースもあります。
言語化を精度高く行うには、お客様が本音を話せる環境をどう作るのか、そしてコミュニケーションをどんなプロセスで設計するのかがとても重要です。
商談は、ただ相手の言うことを聞くだけ、または、自分の提案をぶつけるだけの場ではないと、私は考えています。商談とはむしろ、お客様と共に正しいゴールに向かうための対話の場です。そして、商談での対話をより円滑に進めるためには、お客様の本音を引きだして対話を組み立てながら合意形成する力=ファシリテーション力が不可欠なのです。
本質的なニーズ=相手が本当に欲しているもの・本当に解決したい問題・本当に達成したい目標を知るためには、ただ質問を重ねるだけでは不十分です。対話の場において心理的に安全な関係を築き、オープンで、かつ対等なコミュニケーションを構築する必要があります。
この場合において、ファシリテーションとは、本質的なニーズをお客様と一緒に探究するプロセスです。お客様からの話をただ受け入れるのではなく、適切な問いを投げかけることで、お客様自身も自分の中にある本音や、より本質的な背景にスポットをあてることができ、自分でもまだ意識できていなかった「本質的なニーズ」に気づくことができるのです。
そのニーズが明確になるからこそ、お客様に対する最善の提案を行うことができます。結果として、お客様との関係はただのビジネス関係だけでなく、共に考え、共に成長するパートナーシップへと進化するのです。ぜひ読者のみなさんも、ファシリテーションの力を活用しつつ、お客様の本質的なニーズに即した提案に挑戦してみてください。
※編集協力 横田真弓(THE MODERATORS & FACILITATORS受講生)
※この文章は、原文作成にChatGPT(GPT-4)を活用して執筆されています。
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